第1章 簿記の基本原理 4
(1)帳簿組織
 取引を記録計算するための帳簿として,取引の全体を記録する帳簿と必要に応じ,その内容を具体的に記録する帳簿とを分けることができるが,前者の帳簿を主要帳といい,後者の帳簿を補助帳という。
 このような帳簿は経営の規模,業種によって異なるのが普通とされているが,そのしくみとして,次表を参照されたい。
 最近は合理的に簡易化をすすめているのが現状である。

帳 簿 組 織

(2)伝 票(日報)
 伝票の取引の内容を帳簿に記録整理する前に各担当係に伝えたり,整理について正確を期するための役割を果 たすとともに,帳簿の代用としての利用価値がある。
 伝票の種類や内容については,各企業が常に工夫し事務の能率を上げるべく改善しているが標準として次の三種類に分けられる。
@ 入金伝票
 入金取引を処理する伝票で,入金取引はつねに借方が現金と仕訳されているから,伝票の科目(勘定科目)欄は相手勘定である貸方勘定科目を記入する。入金伝票は取り扱いに便利なように赤色で印刷しているのが普通 とされている。
A 出金伝票
 出金取引を処理する伝票で入金伝票と反対に出金取引は貸方が現金と仕訳されるので,勘定科目欄には相手勘定である借方勘定科目を記入する。印刷の色は青色とされている。
B 振替伝票
 振替伝票とは,入金,出金伝票と異なり,現金の収入,支出をともなわない取引を記録する伝票で,この伝票は普通 の仕訳にしたがって借方勘定科目と金額,貸方勘定科目と金額を記入する。
 この伝票の印刷は一般には黒色となっている。振替伝票を使用する場合,一つの取引について,まったく現金の収入,支出をともなわない取引を全部振替取引といい,一部に現金の入金または,出金をともなう取引を一部振替取引という。
 以上の三種類の伝票に一つ一つの取引を記録するについて小規模店においては,非常に繁雑である場合には,次項に述べる日報として一日の取引を一葉にまとめて整理することも理想といえよう。
(3)主要帳簿と補助帳簿
 取引を記録計算するための基本的な帳簿は仕訳帳と総勘定元帳の二つが一般 的である。
 この仕訳帳は取引の発生順に伝票より転記され,総勘定元帳への記入のためのものであり,総勘定元帳は普通 は単に元帳とも呼んでいるが,すべての取引について勘定科目別に口座を設けて記録整理する帳簿をいう。
 この元帳は決算書作成の基礎となり複式簿記の原理の基本となすもので,母帳ともいう。
 以上の二つの帳簿を主要帳簿と総称している。この主要帳簿に対して補助帳簿と呼ばれているものは例えば現金出納の内容,商品の仕入や売上についての明細,仕入先,貸借関係など具体的に記録整理する帳簿で内訳帳というのが正しい。
 そこで一般的な商業経営における,標準となる主要簿と補助簿の名称とその様式をあげてみよう。

帳簿様式
@主要帳
  仕訳帳 毎日の取引を借方(支払),貸方(入金)に仕訳する帳簿で後項を参照されたい。
仕 訳 帳
 総勘定元帳 取引を勘定別に記録整理する帳簿で,期末における決算額をまとめる帳簿。
A 補助帳
  補助帳簿すなわち各種の内訳帳で様式については後項を参照されたい。なお,別 図の主要帳簿のしくみ図を併せ参照されたい。

主要帳簿のしくみ図

帳簿様式と記帳事例(補助帳は一部例)(1P)

試 算 表(残高)


備考:◎☆印の数量,金額合計は関係各帳それぞれ一致する。

(4)伝票会計
 伝票会計とは,取引が伝票に起票されたならば,できるだけ総勘定元帳または,補助元帳に転記することなしに,その伝票を総勘定元帳および補助元帳に使用するもので,同一伝票が数票必要となることになる。また一葉一科目ということになる。
 伝票は基本的には,記帳式会計で用いられる振替伝票を二枚に分けた型で借方伝票と貸方伝票という型式のものを用いることになる。
 伝票会計は従来の記帳会計における,転記というムダを省き,また転記による誤謬あるいは,不正の発生を防ぐなど,合理的な会計事務といえるが複雑な面 もあるので事務体制が整備されている企業体でないと利用はむずかしい。

 

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