第2章 決 算 2
1.材料(商品)の棚卸評価
 営業年度末には,年間の純利益または損失を計算するため,前にも述べたとおり資産負債を調査し適正価格で貸借対照表を作成しなければならない。例えば在庫の材料についても変質,数量 の有無,価格の変動など,その他の資産,負債の内容についても,その正しい価値を評価する。すなわち固定資産等については減価償却を計算し,また未払いの経費や未収の利益,未経過の経費などを明細に調査し評価決定してまとめるものが,棚卸明細表である。
 まず,これらの科目,種類,品目別に期末の数量,評価した単価,金額を記入し,評価方法については,減価償却資産の償却の場合は,定額法や定率法の方法があるので,その一つをあらかじめ指定し所管の税務署に届出ておき,毎年同じ方法で償却額を算定する。
 商品,材料の評価方法は,最終仕入原価法,総平均法,低価法などの方法があるが,このうち,どの方法を採用するかは,前記の減価償却と同じである。以下その方法を例記してみると,
@ 最終仕入原価法
 この方法は,営業年度の最後に仕入れた単価で評価する方法で,棚卸資産は時価を示すという長所がある。
年末棚卸高 = (年末に一番近い仕入単価) × 棚卸数量
A 売価還元法
 小売店で一般に行われている方法で,売価(小売値)で棚卸をして,それから仕入価格を逆算する方法である。
年末棚卸高 = (売価による棚卸) × 原価率
この原価率の求め方は
B総平均法
この方法は,今年の仕入総金額を仕入総数量で割ってだした単価で計算する方法で,次の算式による。
C 仕入先出法
 この方法は,仕入れた順に払い出す方法で,したがって,期末商品につけられる単価は期末近くに仕入れられたものとなり,一番よく実情を示すことになる。
D 後入先出法
 この方法は上記の方法の逆のやり方で,後に仕入れたものから,先に取出し販売する方法で,期末商品の金額は古い仕入価格で示されるので,実情に則しないという欠点はあるが,物価値上りに向う時は,この方法が所得計算上は有利といえよう。
E 低価法
 低価法とは前記の個別法のうち,あらかじめ選んで税務署に届け出た方法で評価して,『年末の棚卸高』と『その棚卸資産の価格を年末に取得するとした場合の価格(時価)』とを比べて低い方の価格を棚卸資産の価格とする方法である。
 棚卸明細書の様式は次のとおり。

棚卸明細書 (評価方法○○法)

2.固定資産の減価償却
 固定資産のうち,土地のように営業の使用について,その購入価格を減額しないものもあるが,大部分の固定資産や什器備品などは営業に使用することにより,また時の経過によってその値が減少する。その減少額を計算して記帳整理するのを減価償却といい,その減少額を償却費いう。これは毎営業年度ごとに損失として計上していく。減価償却費の計算方法は,次の定額法と定率法の二通 りがある。
@ 定額法
 固定資産を購入したとき,その資産が何年間使用に耐えるか,これを耐用年数といい,その年数経過後の売却価格,これを残存価格という。
 上記の耐用年数は個々の設備,備品について定められており,残存価格も原則として購入価格の10%となっている。また,耐用年数に応ずる償却率も定められている。(209頁参照)
毎年度の減価償却費 = (取得価額−残存価額) × 耐用年数に応ずる定額法による償却率
購入価格¥100,000の備品を耐用年数10年(償却率0.100),残存価格¥10,000として減価償却費を計算すれば
(100,000 - 10,000) × 0.100 = 9,000となり,毎期定額が償却されることになる。図示してみると,
A 定率法
 毎期の償却は,取得初年度を多額にして,使用年数が経過するにしたがって償却額がしだいに少額となるよう行うもので,期末の帳簿価格に対して一定の償却率を乗じて算出する方法で算出方法は次のとおりである。
 なお定額法,定率法の償却率は省令でこれを定めている。しかし定額法による償却率は,取得価格の10%を差し引いた残高90%に対して償却率を用い,また,無形固定資産は定額法の償却方法に限ることになるが,有形固定資産は定額法,定率法いずれを採用してもよい。しかしあらかじめ所属の税務署に届出が必要である。なお,両法の比較表209頁を参照されたい。

主な減価償却資産の耐用年数表

建 物

建物附属設備

 

車両・運搬具

機械・装置

器 具

備 品

主な減価償却資産の償却率


定額法と定率法の計算比較表

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