第3章 簿記の基本原理 2

 取引例をもとにした記入方法として,前期からの資産,負債,資本額の繰越記帳から年間の営業取引を取り上げてみよう。業種は一応小売店として,商品名はA,B,Cとする。サービス業の店舗は商品仕入の勘定科目を,材料費などと置き替えられたい。金額は通 常取引の標準額ではなく,少額事例としている。まず記帳始めは,1月1日となるが,前期よりの繰越貸借対照表の資産,負債,資本の計上を最初としよう。

〔1月1日の取引〕

(1)図表3-2の前期の貸借対照表の財産内容を記帳始めの取引とする。

〔4月1日の取引〕

(2)品川商店よりC品80個 @1,000現金で仕入れる。
¥80,000

(3)チラシ広告を印刷し,チラシ屋に現金¥10,000支払う。
(4)2月分電気料¥8,600を電力会社西営業所に現金で支払う。

(5)本日の売上げ次のとおり。全額現金売り。
A品100個 @1,200 ¥120,000
B品 20 個 @1,800 ¥ 36,000
         合 計¥156,000

〔4月2日の取引〕
(6)事業税¥15,000を税務事務所に納めた。
(7)家賃¥50,000を現金で支払う。
(8)経営図書2冊¥3,000を購入した。
(9)前期売掛金¥25,000を山田一郎より入金する。
(10)大井商店よりA品100個 @1,100を仕入れ,¥50,000を現金で支払い,残額¥60,000は掛とした。
(11)包装紙外消耗文具¥11,000を赤坂文具店に支払う。
(12)本日の売上げA品 200個 @1,300¥260,000うち20個分¥26,000は上田四郎に売掛となった。
(13)普通預金¥50,000中央銀行預入れ。

〔5月10日の取引〕
(14)店主より¥300,000一時借り受ける。
(15)中央銀行に当座預金を開設し¥300,000預け入れる。
(16)切手50円20枚を郵便局より購入する。
(17)得意先下園様への贈物用として菓子代¥2,000山本菓子店に支払う。

(18)次の商品を大井商店より仕入れた。
A品 200個 @1,200 ¥240,000の代金は支払手形(手形番号1,期日6月10日)
¥200,000。残額¥40,000は現金で支払う。

(19)車両用ガソリン代吉村石油へ。代価¥18,000当店振出しの小切手にて支払う(小切手番号1)。
(20)従業員林田六郎を経営講習会に出席させるため,旅費概算として¥30,000仮払いする。

(21)当月分給料支払う。
店主報酬 ¥120,000
林田六郎 ¥100,000   給与源泉¥4,500を預かる。
川上秋子 ¥ 63,000
   合 計 ¥283,000
(22)本日の商品売上げ次のとおり。
A品 200個 @1,500 ¥300,000
B品 240個 @2,000 ¥480,000
          合 計¥780,000
うち桂田様分¥112,000は先方振出しの約束手形(手形番号101,期日6月10日付)を受け取り,他は現金売りとする。

(23)4月2日大井商店の買掛金¥60,000を支払う。

〔6月10日の取引〕
(24)家賃2カ月分¥100,000家主へ支払う。
(25)商品¥1,500,000および設備,備品¥1,000,000に対する火災保険料¥20,000を東部代理店に支払う。また,福利厚生費¥20,000を支払う。

(26)5月10日旅費概算として林田六郎に¥30,000仮払いしていたが,次のとおり精算し,残額は会計に納入した。
日  当 ¥ 6,000(1日当¥2,000×3日分)
宿泊料 ¥12,000(1泊当¥6,000×2泊分)
交通費 ¥ 5,820(往復実費)
合  計 ¥23,820

(27)金融公庫借入残高のうち当月分返済元金¥50,000ならびに支払利息¥5,200を支払う。
(28)不用品古箱を山中様に売却し,その代金¥5,800を受領する。
(29)5月10日店主より借り入れた¥300,000を元入金追加として計上する。
(30)山崎商事会社より金銭登録機1台¥200,000を購入し,¥50,000を現金で支払い,残額¥150,000は支払手形を振り出した(手形番号2,期日翌年1月10日)。
(31)5月10日大井商店へ振り出した支払手形(手形番号1,期日6月10日)¥200,000を決済したと銀行より連絡があった。
(32)給与源泉所得税¥4,500を税務署へ振り込み納税した。

(33)大井商店より次のとおり商品を仕入れ,全額現金支払い。
A品 100個 @1,150 ¥115,000
(34)本日の売上げは次のとおり。全額現金売り。
A品 100個 @1,600 ¥160,000
B品 240個 @2,500 ¥600,000
合 計¥760,000
(35)次のとおり中央銀行へ預ける。
普通預金¥400,000 当座預金¥500,000

(36)5月10日桂田様より受領した約束手形(手形番号101,期日6月10日付)¥112,000の取り立てを依頼していたが,入帳したと中央銀行より連絡あり。

〔12月20日の取引〕

(37)大井商店より次の商品を仕入れ,うち¥600,000を小切手(小切手番号2)で支払い,残額は掛買とした。
B品 420個 @1,600 ¥672,000
(38)本日の売上げは次のとおり。全額現金売り。
B品 410個 @2,550 ¥1,045,000(値引き¥500)

(39)大井商店へ繰越買掛金¥231,000を支払う。
(40)中央銀行よりの借入金¥250,000を返済した。
(41)中央銀行へ普通預金¥150,000,当座預金¥300,000預け入れた。

 以上は本年度の営業取引の全部である。
 ここで,日記仕訳帳(図表3-4)より転記された総勘定元帳(図表3-6)を締め切り合計を計上して試算表を作成する。別 表決算精算表(図表3-9参照)の12月残高試算表を参照されたい。

(1)決算記帳の実例
 前項で一般的な営業の取引について記帳の事例を研究してきたが,ここで12月末日の決算取引の例題を設けて研究してみよう。

〔12月31日の取引〕

(42)未経過保険料の計上
火災保険を7月1日(営業取引)に年間契約して,保険料¥20,000を支払っているので,未経過分,すなわち次年度分としては


で¥10,000を計上する。

(43)未払い費用の計上
 家賃・地代12月分未払いにつき,¥50,000を計上する。
(44)家賃,事業主(店主)貸し計上
家賃地代総額¥200,000の4分の1(合理的な方法による分割)を事業主個人使用として振替計上する。¥50,000
(45)商品(材料)たな卸の計上
次の在庫商品を最終仕入原価で計上する。
B品 10個 @1,600 ¥16,000
C品 80個 @1,000 ¥80,000
         合 計¥96,000
(46)設備,備品等の減価償却費の計上
図表3-3のとおり,定額法を採用し計上する。
総額¥287,400

図表 3-3減価償却の計算法(46の取引)

(47)前期の繰越商品を商品仕入に計上
前期からの繰越商品を当期の商品仕入勘定へ振替計上する。
A品 200個 @1,000 ¥200,000
B品 500個 @1,500 ¥750,000
         合 計 ¥950,000

【2】決算取引の仕訳事例
 12月末日の決算についての決算取引,すなわち修正事項の前記取引の内容を仕訳整理してみよう。
 もちろん,決算事項であるから現金の出入りはない。

 

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