第4章 帳簿締切など 3
(1)簡易帳簿による青申経過措置について
 平成4年度の税制改正により所得税の青色申告特別控除が設けられたが,これは確定申告書に正規の簿記の原則により作成された貸借対照表の添付が必要となっている。
 そこで,正規の簿記による記帳移行が困難な場合には,現在の簡易帳簿により貸借対照表を作成することが,平成14年分まで適用緩和の経過措置として設けられている。
@ 確定申告書に添付する貸借対照表については『簡易帳簿』に基づき作成されたものであれば,45万円までの特別 控除が受けられる。
A 他の青色申告者については10万円までとなっている。
 ここでの『簡易帳簿』とは発生主義の記帳条件(様式次頁上段)である。
 いわゆる,現金主義簡易帳簿(様式次頁下段)の記帳は認められないことになる。
 まず,資産負債資本の繰越記帳
 貸借対照表を作成することは当然ながら財産勘定(資産・負債・資本)を計上しなければならない。そこで,資産・負債の調査が必要となるが,手順としては,本テキストの記帳開始,営業用財産の調査の手順と同じであるので参照されたい。
 簡易帳簿からの貸借対照表作成の手順
 ここでの簡易帳簿(様式次頁上段)は,現金出納帳式5冊の帳簿組織に,あらたに,前記の資産・負債・資本勘定を記帳する『資産負債帳』が必要となる。別 表『新簡易簿記の仕組図』を参照されたい。
 現在,売掛金,買掛金,現金,固定資産台帳に計上されている以外の資産・負債・資本勘定の記帳整理する『資産負債帳』を採用することになろう。また,収支日計表式の帳簿も同様の手順である。
 貸借対照表作成のためのまとめについて
 同表のとおり,精算表(試算表様式P226)でまとめることが理想である。

新簡易簿記の仕組み図

簡易帳簿様式

現金主義簡易帳簿様式

(注)現金残高は「現金以外」欄の金額はのぞきます。


(2)所得税(青申特別控除)改正に伴う記帳方法調査状況について


 青色申告特別控除改正に伴う記帳方法の状況をみるため,次の『所得税(青色申告特別 控除)改正に関し帳簿状況調査表』のとおり全国的に8業種(466名)の経営者によるアンケート調査をまとめてみたので参照されたい。

所得税(青色申告特別控除)改正に関する帳簿状況調査結果

(単位:店・名)

備考:5は未記入者あり。


(3)平成10年を目ざして正規簿記を実施したい

 生衛業店経営において計数管理は重要な役割であろう。今回の税制改正により青色申告特別 控除の適用を受けるについては,『正規の簿記の原則』によって『貸借対照表』の作成が必要である。
 ただ,45万円の控除による節税のためのみでなく,これからの企業経営の基盤確立について,重要な経営要素であろう。要は経営実態を診るには,当然ながら資本の投下ならびに資金の運用すなわち資産の計上を明確に把握し,それによって収益性と資金安全性の二面 こそ事の両輪として円滑なる運営ができることになろう。
 経営の羅針盤として進むべき方向も示される。過去の経営数字を未来の良き経営数字とするため,計数管理の確立が重要であろう。  

 

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