生活衛生営業の経営診断 3

 経営内容を分析するには,よく利益率や回転率などの言葉を聞くことが多いと思う。
高い,低い,良好だ,不良だ,などそれぞれ対比して,その比率をみることになり,その方法としてまず次の二つに大別 することができる。

(1)実 数 法
 これは損益計算書や貸借対照表の各項目(勘定科目等)の金額を,そのまま採用して比較分析する方法で次の三つに分類することができる。
@ 控除法
 この方法は例えば店の支払能力を測定する場合などに用いる単純な方法で,流動資産から流動負債を差引して正味運転資金を算出する方法で,正味運転資金が多ければ多い程,支払能力があり銀行や買掛先などの信用も高いと判断される方法などである。
A 均衡法
 この方法は店の売上高と売上のために要した費用が等しくなる損益分岐点売上高を求めて,それよりどの程度上回ったところで営業をしているかなどを見る方法などで,店の損益の安定性があるかどうかの判定などに使われている。
B 増減法
 この方法は前期または,過去の数年度の損益計算書や貸借対照表を比較して,各項目がどのように増減しているかを実数でくらべてみて,店の内容を判断するために使われる方法である。
(2)比 率 法
 経営分析では普通この方法が最も使われており,損益計算書や貸借対照表から関係のある数字を取り上げ,その割合やバランスを比率をもって示すものである。
 前項の実数法では一見してわかりにくい割合や良し悪しの判定に,この比率という共通 の物差しが非常に有効な役割を果たしているので,良く普及されている。なお分類してみると次のとおりである。
@ 関係比率
 決算書の一つの項目(勘定科目等)と他の項目との関係を示す比率である。
例えば流動資産(現金化しやすいもの)と流動負債(すぐ返済しなければならない借入金や買掛金など)の関係を表す比率を流動比率といい,流動負債に対して流動資産はどのくらいの割合になっているかを見ることができる。
 すなわち別表の数字を例題としてみると,
 このような比率を求めるものを関係比率という。
A 構成比率
 決算書の一つの項目とその項目が含まれている全体との関係を示す比率をいう。
 例えば総負債額(元入金もふくめて)の内,いそいで支払いを要する買掛金,短期借入金はどの程度であるかを見る比率で構成上の割合をいうのである。
 別表の数字例題をとってみると
 このような比率を構成比率といい,また営業利益は売上高の何%かという営業利益率なども重要な項目である。
B 指 数
 ある年度を基準年度と定めて,その年度の決算書の各項目の実数をそれぞれ100として比較検討するもので過去からの傾向を見るためのもので,このような方法を趨勢法とも呼んでいる。
 以上実数法と比率法のあらましを述べたが,それぞれ長短もあり,実数法より比率法の方が内容の掘り下げが多角的に行えるので,進んでいるといわれる。しかし実数法の長所も利用して,よりよい分析をしてみることをお奨めしたい。
(3)回 転 率
@ 回転とは
 経営分析には,回転率がよく利用されている。例えば資本の回転,商品の回転,売掛金の回転などと呼ばれている。元来,回転というのは現在の商品が新しいものと入れ替わるという意味で,元入金が商品を仕入れ,現金となり再び仕入資金となることなどををいい,この場合,一回りだから一回転ということになる。
 このように元入金の資金は絶えず循環しながら利益を生んでいく。商売はこうした資金の動きであり回転である。その回転のなかから儲けが生まれてくるわけである。
 5百万円の元手で1千万円の売上高があったとすれば,資本に対して売上高は2回転したということになる。また料飲店ではカウンターの客席椅子が20席ある店で本日の来客者が40名だとすると,客の回転数は2回転ということである。
 こうした回転率は元の基本数に対しての,はたらきの積ということになり回転率が多い程この場合は店の繁栄が約束されることになる。この方法を経営分析の回転率という。

貸 借 対 照 表

平成 年 月 日現在
(単位万円)


損 益 計 算 書

自平成 年 月 日
至平成 年 月 日
(単位万円)

A 資本回転率の計算
 建物,諸設備,什器備品などの固定資産に対する投資については,出来るだけおさえてその利用度を高めていくことが経営をよくするため重要なことで,そうすればそれだけ維持費,修繕費,減価償却費,取り替えの費用なども少なくすることができる。
 飲食店などは特に店舗の内装,客席,備品などのムードを必要とするもので,設備投資が高額となるが,売上高と釣り合わなければ運転資金を圧迫することにもなる。
 次にわかりやすく列記してみると,
次に資本に関する簡易な回転率の計算様式を示してみると
経営資本とは企業経営に関する資本の総額で自己資本と他人資本の合計額である。

 

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