生活衛生営業の経営診断 17
(1)利益金とは
 利益金とは,改めて述べるまでもなく,一定期間(通常は1年間の営業期間をいう)の総売上高から,それに対応する仕入商品,材料費その他の営業費用の総額を差し引いた額で,売上高が多いか,総費用が少ないかによって,その利益金の大小が決まることになる。
 この利益金がなければ,企業は当然ながら発展しないし,継続はできない。
 すべての企業は,この収益性(利益性)にすべてを期待し,経営をつづけていこうとしているのである。
 企業が社会的に果たす責任の重大さはいうまでもない。これとてもこの収益性が低くてはなし得ないことである。
 この収益性が高いか低いかは,経営活動の原因となるものではなく,利益こそが企業の経営活動の結果 であり,また,その利益こそ経営活動の成果判定の尺度ともなるものである。
 企業経営の最高の目標は,なんといっても,その経営に投下された資金量 についてより大きい利益金をあげることであり,できるだけ少額な資本で,より多くの利益金を得ようとして経営活動はすすめられるのである。
(2)利益金の中身
 そこで,この利益金の中身は,次の企業努力に対する報酬という意味を含めて検討することになる。
@ 出資者の努力
 経営資本の出資者に対する配当などのことで,個人企業の場合は,当然ながら事業主の元入金について考えなくてはならない。
A 経営者の努力
経営の責任者に対する報酬で,法人の場合はもちろん,賞与としての項目となる。
個人企業の場合も,もちろん,事業主報酬(みなし法人選択の場合は必要経費となる)もこの利益金のなかにはいる。
B 国家社会の努力
 私企業としての商店・飲食店に対して国家社会のいろいろな面における指導,支援があることを忘れてはならない。そこで,法人税,所得税,住民税等は必要経費とならず,利益金のなかから支出することになる。また,一般 社会に還元する費用や分担金,寄付金も幅広く考えたい。
C 企業の将来の発展に対する準備金
 企業経営の将来の発展計画については,積極的な内部積立金となる。
D 将来の危険に対する準備金
 万が一の場合を考えて,消極的ではあろうが,日ごろからの準備もまた必要である。
以上,いくつかの項目にわけられるが,煎じつめれば,利益金は将来の出費に備えるためのものといえる。
(3)利益金の目標は必要とする額である
 利益金の目標額はどの程度が妥当なのか,数字的には何万円か。もちろん利益金は多いにこしたことはないが,この経済,環境状況下においては,そうたやすく上げさせてくれない。そこで,最小限必要とする額を検討してみよう。
 もちろん,その必要とする利益金は是が非でも確保しなければならない。強い決意で経営に当たることである。
 考え方として列記してみると次のようである。
@ 総資本額に対して10%以上ありたい。
 もちろん,税引後の純利益で,個人企業は元入金に繰り入れる額となる。
 たとえば,総資本額(自己資本500万円,他人資本500万円)1,000万円なら,100万円以上ということになる。
A 総資本額の3%を企業危険の準備とし,自己資本の10%を利子配当として,その合計額すなわち,3%は30万円,10%は50万円で,合計80万円となる。
B 総資本額の定期預金利子率の額
 もちろん,この額が最低の線になろう。銀行の定期預金の利率が5%であれば,50万円というわけである。
C 同業種,同規模店の標準利益率
 当然ながら,同業種店の利益率はかならずあげたいものである。
D 最終的に利益金はいくら必要かという,その必要額である。
 法人,個人企業で若干の計算内容の相違はあるが,必要とする利益金額である。
 たとえば,法人企業として,税率30%(事例),借入金返済額80万円,役員賞与を5%,配当金10%,法定利益準備金10%,繰越金50万円程度とすると,次の算式で計算することになる。個人企業はもちろん,店主自身の給与(みなし法人を除く)が必要となることは当然である。

目標利益金試算表

 
× 閉じる