従業員の雇用 2

1 パートタイマーの意義と役割

  (1) パートタイマーの意義

 パートタイマーについて、労働省は「一日、一週間または一ヵ月の所定労働時間が当該事業場において、同種の業務に従事する通 常の労働者の所定労働時間に比し、相当程度短い労働者」と定義しています。ただし、実際には正社員とほとんど変わらない労働に従事するものも多く、区別 は必ずしもはっきりしていないのが実態のようです。

  (2) パートタイマーの果たす役割

 企業は従来パートタイマーを雇用調整の安全弁として、あるいは低コストの労働力としてみてきましたが、バブル期の人手不足を経てパートタイマーの役割を見直す動きが広まりました。またパートタイマーの側も単に生活費の補助という目的だけでなく、自分の生活や時間を大事にしながら自分の能力や経験を活かすという積極的な目的意識を持って就労する人達が増えてきました。このようにしてパートタイマーはさまざまな分野に進出し、急激に増加してきたわけです。今後はこういった事情も踏まえ、使用する企業もパートタイマーを積極的に戦力化しようとする意識改革が必要となるでしょう。

2 雇用上の留意点

  (1) パートタイマーに対する労働法の適用

 労働基準法上でいう労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用されるもので賃金を支払われるもの」をいいます。したがってパートタイマーも、労働提供の対価として賃金を受けているわけですから、当然この労働者の範疇に入ります。つまりパートタイマーに対しても、一般 の従業員と同様に労働基準法や労働安全衛生法等の法律の適用があるのです。現実にはこういったことをほとんど意識していない経営者が多いと思いますが、パートタイマーを採用するにあたってこの点はまず知っておかなければなりません。

  (2) パートタイマーに対する保護

 労働省は、パートタイム労働を一つの雇用形態として社会的に確立させることを目的として「パートタイム労働者の処遇及び労働条件等について考慮すべき事項に関する指針」(一般 に「パートタイム労働指針」といわれています。)を制定しています。以下このパートタイム労働指針の主な内容について紹介しておきます。
   ア.雇入通知書の交付
 パートタイマーにとってもどのような労働条件で採用されるかは重要な関心事です。先程述べたように、労働基準法では、雇用契約の際労働条件を明示することを義務付けていました。特に賃金に関する事項については書面 により明示することとされていましたが、パートタイム労働指針では賃金以外の仕事の内容や休暇等の条件も記載した雇入通 知書(指針のなかに様式が記載されています。)の交付を努力義務として使用者に課しています。
 ただし、労働契約の締結を書面で行なったり、労働条件が記載された就業規則を交付するような場合には、この通 知書の交付は必要ありません。
   イ.就業規則の作成
 労働基準法では常時10人以上の労働者を使用する場合には就業規則を作成するものとしており、この労働者にはパートタイマーも含まれています。
 したがって正社員とパートタイマー双方を使用している場合、労働条件の等の記載上不都合ですから、別 途パートタイマー等就業規則を作成したほうが良いでしょう。指針でもこのようなパートタイマーに適用される就業規則の整備を求めており、この作成変更にあたっては、適当な方法でパートタイマーの意見を聴くことを求めています。
   ウ.労働時間への配慮
 パートタイマーの労働時間等を定め、または変更する場合にはそのパートタイマーの事情を十分考慮するように求めています。
   エ.有給休暇の比例付与
 労働基準法では昭和63年の改正により、継続勤務しているパートタイマーにも、一週間の所定労働日数や年間の所定労働日数に応じて有給休暇を付与する旨を定めました。指針でもこれを確認しています。
   オ.賃金・賞与等
 就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮して定めるよう求めています。
   カ.正社員への応募機会の付与
 正社員の募集の際には、現に雇用している同種の業務に従事しているパートタイマーであって、正社員としての雇用を希望しているものに対しては、 応募機会を優先的に与えるように求めています。

  (3) 雇用契約上の留意点

   ア.契約期間の制限
 従業員を採用する際には、契約期間を定めないで雇用契約を結ぶのが一般 的です(期間の定めのない契約)。これに対し、パートやアルバイト等の場合には期間を定めて契約を結ぶのが一般 的であるようです。この場合その契約期間について労働基準法では、期間の定めのないものを除き1年を超える期間について締結してはならないとされています。これはあまりに長期間労働者を拘束する事がないようにという趣旨で設けられたものです。したがってパートタイマーを採用する場合でも1年を超える期間を定めて雇用契約を結ぶことはできないので注意が必要です。
   イ.契約の更新
 契約期間が終了し更に継続して雇用したい場合には、改めて雇用契約を締結し直す必要があります。この際パートタイム労働指針では、1年を超えて引き続き雇用するに至ったパートタイマーについて契約更新をする際は、1年を超えない範囲でなるべく長い契約期間にするように指導しています。また、この場合契約期間の定めを設ける必要がない場合には、期間の定めのない雇用契約をすることが望ましいとされています。継続雇用を希望するパートタイマーに対し雇用面 での不安を少しでも解消させ、労働条件を一般の労働者に極力近付けようとする趣旨のものです。
   ウ.更新拒否の予告
 また、1年を超えて引き続き雇用するに至った場合に、契約更新をしないときは、少なくとも30日前に更新しない旨を予告するよう指導されています。

  (4) 社会保険の適用

   ア.労災保険
 労災保険は、農林水産業の一部を除くすべての事業所において強制適用されます。また適用を受ける 労働者は、労働基準法上の労働者で雇用形態を問わないことから、パートタイマーについても対象とな ります。
   イ.雇用保険
 雇用保険も農林水産業の一部を除き、法人個人にかかわらず労働者を一人でも雇用していれば、原則的に強制加入となります。パートタイマーについては「短時間労働被保険者」として次の条件を満たせば雇用保険の適用範囲に入ります。
週所定労働時間 22時間以上33時間未満
年収 90万円以上の見込み
雇用期間 1年以上の雇用見込み
     ウ.健康保険・厚生年金保険
 パートタイマーは、雇用形態や労働時間の違い等により適用関係はやや複雑になりますが、次の基準を満たしていれば原則として被保険者に該当します。
   a 所定労働時間が一般社員の概ね四分の三以上
   b その事業所で同種の仕事をしている社員の所定労働日数の概ね四分の三以上勤務していること
 
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