従業員の雇用 3

1 雇用できる外国人労働者

  (1) 出入国管理及び難民認定法(入管法)の規定

 入管法では、外国人が、我が国に入国・在留して従事することができる社会活動、在留することができる身分・地位 を類型化して在留資格として定めており、そのいずれかに該当していなければ我が国への入国及び在留は認められていません。またそれぞれの在留資格ごとに在留期間が定められています。したがって、外国人が適法に日本国内に在留し、活動できるのは、入国審査の際にパスポートに記載された在留資格」と「在留期間」の範囲内のみということになります。

  (2) 在留資格の種類

 入管法で定められている在留資格は28種類ですが、そのうち主なものを就労制限の有無で分類すると 次のとおりです。

 ア.就労が認められるもの
    外交、公用、芸術、医療、研究、教育、興業、技能など16種類
 イ.就労が認められないもの(就労について制限のあるもの)
    文化活動、短期滞在、留学、就学、研修など6種類
 ウ.個々の許可内容によるもの
    特定活動
 エ.就労等活動に制限のないもの
    永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など5種類

 このように国内で就労することができるのは、研究者、専門職、教育者、ビジネスマン等のいわゆるホワイトカラーか熟練技能労働者に限られ、いわゆる「単純労働者」の受け入れはできないことになっています。(ただしエ.については就労制限がありませんから単純労働も可能です。)

 これらの在留資格の内環衛業に関連のあるものの概要を示せば次の通 りです。

・興業 −−− 演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動またはその他の芸能活動
※ 歌手やダンサー、オーケストラ等の出演者の他演出家など興行の実施に欠かせないものも含まれます。
・技能 −−− 日本の公私の機関との契約に基づいて行なう産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する業務に従事する活動
※ 中国料理やフランス料理等のコック、あるいは外国特有の製品の製造等で実務経験が10年以上あるものが該当します。
(一般的な機械工や建築分野の労働者等は該当しません。)
・留学 −−− 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、専修学校の専門課程、外国において12年の学校教育を終了したものに対して本邦の大学に入学するための教育を行なう機関または高等専門学校において教育を受ける活動
・就学 −−− 本邦の高等学校若しくは盲学校、聾学校若しくは養護学校の高等部、専修学校の高等課程若しくは一般 課程または各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において教育を受ける活動
・研修 −−− 本邦の公私の機関により受け入れられて行なう技術・技能または知識の習得をする活動
※ 研修とは、企業など教育機関以外のものが外国人研修生を受け入れて技術・技能・知識を教えるもので、生衛業では理・美容業が外国人研修生を受け入れて実地習練をする場合などが該当する。
(注)上記のうち留学、就学については就労制限のある在留資格に該当するが、 次項で述べる資格外活動許可を取得すれば就労が可能となります。

  (3) 資格外活動

ア. 資格外活動の意義
外国人が日本に在留中に行なうことができる活動の範囲は、上記でみたようにそれぞれの在留資格ごとに定められています。したがって、それぞれ次の活動を行なうことは認められていません。
a. 就労が認められる在留資格−−− それぞれの在留資格で認められている活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動
b. 就労が認められない在留資格−− 収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動
イ. 資格外活動の許可
外国人がこういった資格外活動を、本来の在留資格に基づく活動を阻害しない範囲で行なおうとする場合には、地方入国管理局に「資格外活動許可申請書」を提出し「資格外活動許可書」を取得する必要があります。

2 外国人採用時の留意点

  (1) 就労の可否の確認

 外国人を雇い入れる際には、そのものが適法に在留し就労できるものであるかを 必ず書面で確認することが必要です。

ア. 入国要件を備えているか・・・ 有効な旅券(パスポート)を持っているか
入国査証(ビザ)を受けているか
イ. 就労資格を有しているか・・・ どの在留資格を得ているのか
就労が認められない在留資格の場合資格外活動許可を得ているか
ウ. 在留期間を超えていないか・・ 在留資格ごとに定められている在留期間を超えていないか
※確認資料  旅券(パスポート)、入国査証(ビザ)、外国人登録証明書、在留資格認定証明書、就労資格証明書、資格外活動許可書

<参考>外国人留学生等のアルバイトについて
留学生等の場合の在留資格は[留学]又は[就学]ですから、前述した様に就労は原則としてできないことになります。したがって資格外活動許可を取得する必要があります。許可を得ないで、若しくは許可された範囲を超えて就労した場合、後述する不法就労として処罰されることがありますので注意が必要です。なお許可の基準は次のとおりです。
1) 1日の就労時間は、概ね4時間以内です。(土、日曜日も同様) ただし夏休み期間中については1日8時間まで認められます。
2) 従事する仕事の内容は、留学生、就学生の身分にふさわしいものに限ります(法令や公序良俗に反しないもの)。

  (2) 労働法等の適用

合法的に就労活動が認められている外国人労働者については、労働基準法を始 めとした我が国の労働関係法規のほとんどが適用されます。我が国の労働諸法規は、国籍等に関係なく日本国内で労働するものを対象とする属地主義をとってい るからです。したがって労働基準法の「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別 的取扱をしてはなら ない」という規定に基づき次のようなことは禁止されています。

 〇外国人であることを理由に賃金形態、昇給基準等で差別的な取扱をする。
 〇外国人のみに適用される就業規則を作成し、日本人労働者と異なる労働条件を規定する。
 〇外国人労働者に就業規則を適用しない。

  (3) その他の留意点

 その他外国人を採用するに当たっては次のようなことに留意しておくと良いでしょう。

 〇自己の能力や適性について強く主張する傾向がありますから、その根拠をしっかり確認するようにしましょう。
 〇あいまいな指揮命令を避け、指示や伝達は具体的に明確に行う。
 〇合意内容は文書等に記録しておく。
 〇主張すべき点ははっきりと、[イエス]と[ノー]は明確にする。
 〇就業時間と時間外の区別を明確にする。その他宗教観の違いから生じるもの等がありますが、いずれにしても日本人の常識が外国人にとっても常識であるとは限らないことに十分留意しておきましょう。

3 不法就労に関する問題点等

  (1) 不法就労活動の定義

 不法就労活動とは次のものをいいます。

 ア.不法に入国して就労すること
 イ.在留資格ごとに認められている活動の範囲を超えて就労すること
 ウ.在留期間を超えて就労すること

  (2) 雇用者に対する罰則

 不法就労外国人は、原則として本人が帰国費用を負担して、本国に強制退去させられ、さらに裁判で有罪が確定したときは懲役や罰金が課せられます。
 また、このような外国人を不法就労と知りつつ雇用したものや斡旋したものに対しても[不法就労助長罪]が適用されることになります。具体的には次のようなものをいいます。

 ア.事業活動に関し、外国人に不法就労活動させた者
 イ.外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下においた者
 ウ.業として、外国人に不法就労活動をさせる行為。又はイ行為に関し斡旋した者

 罰則は3年以下の懲役又は200万円以下の罰金です。もちろん不法就労者であることを知らずに雇用した場合には処罰されることはありませんが、先ほど述べたように就労の可否について旅券等なにも見ないで決めたような場合は明らかに過失があり処罰の対象となりますから十分留意して下さい。

4 問い合わせ先・相談窓口等

  (1) 外国人の出入国要件、手続き等

 法務省入国管理局又は地方入国管理局(支局)

  (2) 外国人の労務・求人等

・都道府県労働基準局(外国人労働者相談コーナー) ・公共職業安定所(外国人労働者専門官)

 

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