共済制度の活用法 1

1 福利厚生制度の充実の必要性

 従業員が安心して日々の業務につけるような職場環境をつくることは経営者である企業の責務であると同時に、雇用の確保あるいは従業員の定着化を図るうえでも有効です。これらのためには福利厚生面 を充実させることが最も重要な要件の一つになりますが、施設・設備面に関して言えば、かなりの資金負担を要することになり、大企業に比べて資金力に劣る中小企業にとっては一朝一夕にできることではなく、どうしても格差が生じてしまいます。また、制度面 においても特に退職金制度などは中小企業が単独でもつことは同様に困難なことで、さらに実際に退職金を支払う段階になると一時に多額の資金負担が発生するため十分な退職金が出せないというようなことが起こります。そこで、主として福利厚生面 で中小企業を支援していくために公的な共済制度が種々整備されています。

2 主な共済制度

 企業の業況が活発なときはどうしても営業活動に目が向き、内部の制度の整備は忘れられがちですが、この様なときにこそ着実に社内制度の整備強化を図るべきです。企業業績は常に順風満帆とは限りません。この様な整備強化は企業が苦境に立ったときに一層効果 を発揮することになるのです。
 さてここで主として中小企業を対象にした共済制度ですが、まず従業員の福祉を目的とするものには次のようなものがあります。

  ア.中小企業退職金共済制度
  イ.特定退職金共済制度

 また事業主や企業の役員を対象にするものとしては次のようなものがあります。

  ウ.小規模企業共済制度
  エ.中小企業経営者災害補償制度

 このほかに中小企業の経営基盤を強化するものとして中小企業倒産防止共済制度などもあります。
 これらの共済制度は法律に基づくもの、国の承認によるもの、その他団体が企業と連携して行うものなどですが、このほか一般 の保険会社が行う企業向けの退職年金制度などもあります。企業の共済制度は以上のように種々設けられていますが、これらの選定にあたっては、その目的を明らかにし、税務上の取り扱いが最も有利なものを見極めることが大切です。また各共済制度には、それを基礎にした融資制度が併せて整備されているものもあり、それらを上手に活用することも大切です。ここでは以上のような共済制度について、特に中小企業にとって馴染みの深いもの を採り上げ、それらの持つ融資制度と併せてその内容を御紹介することにします。

 
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