社会保険の基礎知識 3

1 雇用保険の目的

 雇用保険は、労働者が失業した場合に、その生活を守り、早く再就職できるように援助したり、定年後の再雇用、 育児・介護による休業などで賃金が低くなってしまった人を援助することを目的とした、国が運営する保険です。
 その他、失業の予防・雇用機会の増大、労働者の能力の開発向上のための助成金などの事業も行っています。

2 適用事業

 雇用保険は、労働者を雇用するすべての事業に適用されます。ただし、農林水産業の一部については、 当分の間は、常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の事業は任意適用とされています。

3 被保険者となる人

 雇用保険の適用事業で働く労働者は、原則、その意思にかかわらず強制的に被保険者となります。
 ただし、65歳に達した日以後新たに雇用されている人、4ヶ月以内の期間を予定して行われる季節的事業に 雇用される人などは雇用保険の適用除外となるなど、雇用形態等により被保険者とならない場合もあります。

4 被保険者の種類・範囲

(1) 被保険者の種類
被保険者には次の4つの種類があります。
@ 一般被保険者
適用事業に雇用される者
A 高年齢継続被保険者
同一の事業主の適用事業に65歳に達する以前から引続いて雇用されている者
B 短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される者または短期の雇用に就くことを常態とする者
C 日雇労働被保険者
被保険者である日雇労働者のことで、日々雇用される者または、30日以内の期間を決めて雇用される者
(2) パートタイマーの場合
 パートタイマーとは、一週間の所定労働期間が、その会社の一般の労働者より短かく、かつ40時間未満で ある者をいいます。
 次のいずれにも当てはまる場合に限り、被保険者となります。
@ 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
A 1年以上引続き雇用される見込みがあること
B 労働時間、賃金、その他の労働条件が就業規則や、雇用契約書、雇入通知書等に明確に定められていること

5 会社で行う各種事務

(1) 従業員を雇用したとき
 従業員を雇用したときは、事業所を管轄する公共職業安定所に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
 提出期限は入社した日(資格取得日)の属する月の翌月10日までです。
 被保険者になったことを確認するために、労働者名簿、タイムカード等の添付書類が必要となります。

雇用保険被保険者証
 はじめて雇用保険の被保険者となったときに被保険者番号が決められて、その番号が書かれた雇用保険被保険者証が 交付されます。
 それ以後は、転職しても、諸届けの作成には必ず同じ番号を使用します。

(2) 被保険者が退職したとき
 被保険者が退職して被保険者でなくなったときは、退職した日の翌日から10日以内に、会社を管轄する公共職業安定所に 「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。
 資格喪失届を提出するときは、退職する被保険者に「離職証明書」が必要かどうかを確認してください。
 離職証明書は、雇用保険から失業給付を受けるときに必ず必要となりますので、原則的には資格喪失届といっしょに 提出します。

(3) 被保険者の氏名が変わったとき
 氏名を変更した都度、その事実を確認できる書類を添付して、「氏名変更届」を提出します。

(4) 事業所の名称、所在地等を変更したとき
 「雇用保険事業主事業所各種変更届」に変更後の登記簿謄本等、その事実を証明する書類をつけて、新所在地の 公共職業安定所に提出します。

6 雇用保険の給付

(1) 退職し失業状態になったとき → 求職者給付
 求職者給付は、被保険者が離職し失業状態にある場合に、失業者の生活を安定させ求職活動を容易にするために 支給されるものです。
 求職者給付を受けるには、次の被保険者期間が必要です。
一般被保険者(特定受給資格者以外)
 賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヵ月以上かつ被保険者期間満12ヵ月以上
一般被保険者(特定受給資格者)・高年齢継続被保険者
 賃金支払基礎日数が11日以上の月が6ヵ月以上かつ被保険者期間満6ヵ月以上
短期雇用特例被保険者
 賃金支払基礎日数が11日以上の月が6ヵ月以上

特定受給資格者とは
 特定受給資格者とは、倒産や解雇などで、自分の意思にかかわらず退職を余儀なくされた人です。
 上司・同僚から故意の排斥、嫌がらせを受けたこと、事業所の移転により通勤が困難となったこと、労働条件が 採用時の条件と著しく違っていたこと等で退職した場合も該当します。

@ 基本手当
 一般被保険者が失業し、一定の受給要件を満たした場合は、失業している日について基本手当を受給できます。
 基本手当を受けられる期間は、原則として離職の日の翌日から1年間となっていますが、その間に出産、病気などで 30日以上働くことができないときは、申請により、その日数だけ(最大3年)受給期間を延長することができます。
 基本手当の日額は、離職前の賃金日額のおよそ50%〜80%で、年齢別に上限額が設定されています。
 給付日数は、離職理由や被保険者期間等に応じて、90日から360日の間で決まります。

A 技能習得手当
 公共職業安定所の指示により職業訓練を受けたときは、その期間支給されます。

B 寄宿舎手当
 職業訓練を受けるために、同居家族と別居して寄宿する場合に支給されます。

 その他、高年齢継続被保険者に「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者に「特例一時金」、日雇労働被保険者に 「日雇労働求職者給付金」が支給されます。

(2) 再就職が決まったとき → 就業促進手当
 離職後、公共職業安定所に失業と認定され求職の申込みをしているときに、再就職が決まり、一定の要件を満たした場合に、 支給を受けることができます。

@ 再就職手当
 受給資格者が常用として就職したとき

A 常用就職支度手当
 45歳以上の人や障害者その他の就職困難者に該当する受給資格者が常用として就職したとき

B 就業手当
 受給資格者が「再就職手当」に該当しない、常用以外の形で就職したとき

(3) 教育訓練を受講したとき → 教育訓練給付
 一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)、または被保険者であった者(離職後1年以内)が厚生労働大臣の 指定する教育訓練を受講し、修了した場合にはその受講料の一定の割合が支給されます。

(4) 高齢になり賃金が下がったとき → 高年齢雇用継続給付
 60歳以上65歳未満の一般被保険者で、被保険者期間が5年以上ある人が、60歳時点に比べて賃金額が75%未満になった場合、 新しい賃金の15%を上限に支給されます。
 高年齢雇用継続給付は、60歳以降被保険者として引き続き雇用されるときに支給される「高年齢雇用継続基本給付金」と、 基本手当等を受給後再就職して被保険者になったときに支給される「高年齢再就職給付金」があります。

(5) 育児で休んだとき → 育児休業給付
 育児休業給付は、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した被保険者に給付されます。
 育児休業開始前2年間に、賃金の支払いの基礎となった日が11日以上ある月が12ヵ月以上あることが必要となります。
 育児休業中に、休業前賃金日額の30%相当額が「育児休業基本給付金」として、職場復帰後に、休業前賃金日額の20%相当額が 「育児休業者職場復帰給付金」として、支給対象となった日数分支給されます。

(6) 介護で休んだとき → 介護休業給付
 介護休業給付は、対象家族を介護するために介護休業を取得した被保険者に給付されます。
 対象となる家族は、配偶者、父母、配偶者の父母、子供、被保険者と同居しかつ扶養関係にある祖父母、兄弟、孫などです。
 介護休業開始前2年間に、賃金の支払いの基礎となった日が11日以上ある月が12ヵ月以上あることが必要となります。
 休業前賃金日額の40%相当額が、支給対象となった日数分支給されます。

7 雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)

 雇用保険では、失業給付以外に失業の予防、労働者の能力の開発向上等のために、事業主に対して助成措置を行っています。
 おもな助成金には、特定求職者雇用開発助成金、試行雇用奨励金、キャリア形成促進助成金などがあります。

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