社会保険の基礎知識 4

1 労働保険とは

 労災保険と雇用保険を総称して労働保険といい、厚生労働省が管理・運営をしています。
 実際の窓口は、労災保険は労働基準監督署、雇用保険は公共職業安定所がそれぞれ担当しています。
 保険給付などは、労働基準監督署、公共職業安定所で別々に行っていますが、原則として保険料の申告・納付は、 労働保険料として一括して行います。

2 労働保険の保険料率と負担割合

(1) 労災保険
 労災保険の保険料は、全額が事業主負担となっています。
 事業主が支払っている賃金総額により保険料を計算し、それぞれの労働者がもらっている賃金によって 保険給付の額が決まります。
 保険料率は、業種により異なり、災害の発生率を基準として1000分の4.5から1000分の118となっています。

(2) 雇用保険
 雇用保険の保険料率は、次の表のとおり、業種により三つに分かれています。
事業の種類 保険料率 事業主負担 (事業主負担のうち二事業分) 労働者負担
一般の事業 15/1000 9/1000 (3/1000) 6/1000
農林水産・清酒製造の事業 17/1000 10/1000 (3/1000) 7/1000
建設の事業 18/1000 11/1000 (4/1000) 7/1000
 事業主と被保険者の保険料負担は、失業等給付事業に当てられる保険料は2分の1ずつ、 雇用保険二事業に当てられる保険料は全額事業主負担となっています。

3 労働保険の申告・納付

(1) 年度更新の流れ
 労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年の3月31日までの1年単位で計算することになっています。
 計算方法は、その事業に使用されるすべての労働者に支払われる賃金の総額に、その事業の保険料率を かけて算定します。
 つまり、労働保険に加入すると、保険年度当初に一年度分を概算で申告・納付し、翌年度の当初に確定申告して、 その過不足を精算する「年度更新」の手続を毎年行うことになります。
 実施期間は、毎年4月1日から5月20日までの間で、「概算・確定保険料申告書」と「納付書」が、労働局から 送られてくるので、必要事項を記入して、保険料を添えて銀行、都道府県労働局または労働基準監督署に申告・納付します。
 概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合は、 これを3回に分けて納付する、「延納」の制度もあります。
 4月1日現在、満64歳以上の労働者については、雇用保険の保険料は免除されますが、労災保険料、一般拠出金の算定には 忘れずに含めます。
 なお、年度更新の実施期間は、平成21年度からは、6月1日から7月10日までに変更となります。

(2) 賃金総額の範囲
 労働保険料の計算で使う賃金とは、労働の対象として事業主が労働者に支払うもの全てです。
 労働の対象とは、@実費弁償的なもの(出張旅費、宿泊費等)でないこと、A恩恵的なもの (結婚祝い金、災害見舞金等)でないことで、つまり、就業規則などでその支給が事業主に義務付けられているものを言います。
 基本給以外に各種手当も対象となり、通勤定期券・回数券など現物で渡したものも含めます。

(3) 一般拠出金
 一般拠出金は、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用のため、平成19年度より申告・納付が始まりました。
 労働保険の確定保険料の申告に併せて、申告・納付を行い、料率は全業種一律1000分の0.05となっています。
 事業主が全額負担することになっていて、延納(分割納付)はできません。

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