社会保険の基礎知識 5

1 健康保険の目的

 健康保険は、仕事中や通勤途中以外で、病気、けが、出産、死亡した時に、保険給付を行います。
 本人だけでなく、その者に扶養されている家族も、保険給付を受けることができます。

2 保険者

 健康保険の保険料を徴収したり、保険給付を行ったりする運営主体のことを「保険者」といいます。
 健康保険の保険者には、政府と健康保険組合の2種類があります。

(1) 政府管掌健康保険(政管健保)
 政府は、健康保険組合に加入している組合員以外の被保険者の健康保険を管理しています。 これを政府管掌健康保険といい、社会保険庁(窓口は社会保険事務所)が事業の運営をしています。

(2) 組合管掌健康保険(組合健保)
 健康保険組合は、その組合員である被保険者の健康保険を管理しています。
 これを組合管掌健康保険といい、一つの企業で設立する組合、いくつかの会社が合同で設立する組合などが あります。
 組合は、法律で定められた保険給付(法定給付)を行うほかに、一定の範囲で附加給付を行うことができるなど、 自主的な運営を行うことができます。

3 健康保険の給付

 健康保険では、被保険者同様、被扶養者も保険給付を受けることができます。
 ただし、被扶養者は収入がないので、休業中の給与を補償する傷病手当金と出産手当金については給付がありません。

(1) 病気やけがをしたとき
@ 療養の給付(家族療法費)
 健康保険証を病院の窓口に提示すれば、必要な医療を受けることができます。70歳未満までは医療費の7割が 給付され、残りの3割が自己負担となります。
 被扶養者についても、「家族療養費」として同様の給付が受けられます。
 なお、平成20年4月からは、少子化対策のため、今まで3歳未満であった2割負担の範囲が小学校入学前までに 拡大されました。

A 療養費(家族療法費)
 国外で医療を受けた等、やむを得ない事情で療養の給付を受けることができなかった場合は、一旦全額を 自費で支払ったあとで、一部負担金額を除いた一定額について療養費の支給を受けることができます。

B 高額療養費
 重い病気などで長期の入院をした等、医療費の自己負担額が高額となった場合、家計の負担を軽減するために、 一定の金額を越えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
 所得に応じて、一月ごと・同一医療機関ごとの自己負担額が、一定の限度額を超えたとき、その超えた額が 高額療養費として支給されます。
 なお、同一世帯で一月に自己負担が21,000円以上の人が複数いた場合は、合算した額で高額療養費が支給される、 世帯合算の制度もあります。
 また、12ヵ月の間に高額療養費の支給を3回受けたときは、4回目からは、44,400円(上位所得者は83,000円、 低所得者は24,600円)を超えた額が高額療養費として支給されます。

C 傷病手当金
 傷病手当金は、被保険者が病気やけがのため働くことができず、連続して3日以上仕事を休んでいるとき、 4日目から支給されます。
 支給額は、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2の額となります。
 支給期間は、支給を開始した日から1年6ヵ月の期間で、その間に傷病手当金を受けなかった期間があっても、 1年6ヵ月を過ぎたら同じ病気では傷病手当金は受けられません。

(2) 出産したとき
@ 出産育児一時金(家族出産育児一時金)
 被保険者が妊娠4ヵ月(85日以降)で出産(早産・死産を含む)したときは、一児について35万円の 出産育児一時金が支給されます。
 平成18年10月からは、被保険者の負担軽減を目的として、事前に申請をすれば、医療機関が被保険者に代わって、 支給申請の代理を行うことができるようになりました。
 家族出産育児一時金は、被保険者が死亡したり、離職後の家族の出産では支給されません。

A 出産手当金
 被保険者が出産で仕事を休み、報酬を受けられないときは、出産の日以前42日から、出産の日の翌日以後56日目まで、 休んだ期間について出産手当金が支給されます。
 支給額は、1日につき標準報酬日額の3分の2の額となります。

(3) 死亡したとき
@ 埋葬料(家族埋葬料)
 被保険者が死亡したときは、埋葬を行う家族に一律5万円の埋葬料が支給されます。
 被扶養者が死亡した場合は、一律5万円が家族埋葬料として支給されます。

A 埋葬費
 家族以外の人が埋葬を行った場合は、5万円の範囲内で実費が、埋葬を行った人に埋葬費として支給されます。

(4) 退職したあとの給付
 退職などで被保険者でなくなった後でも、退職前の被保険者期間、退職後の月数等一定の条件が整えば、 傷病手当金・出産手当金の継続給付、埋葬料・出産育児一時金の受給等が可能となります。

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