1 厚生年金保険の目的
厚生年金保険は、被保険者が年をとって働けなくなったり、病気やけがで障害が残ったり、不幸にして亡くなり、
遺族が困窮した場合に保険給付を行い、被保険者とその遺族の生活を救済することを目的としています。
2 わが国の公的年金の歴史
わが国に公的年金制度がスタートしたのは、船員保険が初めてで、次いで昭和17年に現業で働く男子労働者に
労働者年金保険が実施され、2年後に厚生年金保険と改称されて、事務職や女性にもその範囲を広げ、現在に至っています。
その後、昭和36年に、雇用されている労働者以外の全ての人を対象に国民年金が発足し、これにより全国民が
年金に加入する国民皆年金体制ができました。
次いで、昭和61年4月に法律が改正され、国民年金の適用範囲が全国民(20歳以上60歳未満)に拡大され、
厚生年金保険や共済年金の被保険者やその配偶者も国民年金の被保険者とすることになりました。
そこで、厚生年金保険や共済年金の被保険者は、同時に二つの年金に加入することとなり、全国民共通の基礎年金を
支給する国民年金と、加入期間とその間の収入の平均に応じて計算し支給する厚生年金保険の2階建て年金制度となりました。
3 保険者とは
厚生年金保険の保険者は政府(社会保険庁)です。そして、地方社会保険事務局や社会保険事務所が窓口となり、
事務処理を行っています。
また、厚生年金保険には、国が運営している厚生年金保険の事業の一部を代行する、事業主と被保険者で組織され、
厚生労働大臣の認可を受けて厚生年金保険の上乗せ給付を行う、厚生年金基金という制度があります。
4 厚生年金保険の給付
厚生年金保険は、昭和61年4月の法律改正による基礎年金制の導入により、国民年金から支給される基礎年金(1階部分)の
上乗せ給付(2階部分)を受け持つことになりました。
例えば、老齢年金については、国民年金から老齢基礎年金を、厚生年金保険からはその上乗せ給付として老齢厚生年金を支給します。
(1) |
老齢になったとき |
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特別支給の老齢厚生年金(60歳〜64歳) |
厚生年金保険に1年以上加入していた人が、国民年金の老齢基礎年金を受けられる受給資格期間があるときに、
生年月日等に応じて定められている支給開始年齢から(60歳から64歳)、65歳になるまで支給されます。
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A |
在職老齢年金(60歳〜) |
国民年金の老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、在職中で厚生年金の被保険者であっても
老齢厚生年金を受給できる場合があります。
しかし、給与等と年金月額の合計金額によっては、年金が一部または全部支給停止されます。
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B |
老齢基礎年金(65歳〜) |
保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせて25年以上ある人が65歳になると、国民年金から支給されます。
保険料を納めた期間が長ければ長いほど(上限480月)年金額は多くなります。
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C |
老齢厚生年金(65歳〜) |
厚生年金保険に加入していた人が、65歳になって国民年金の老齢基礎年金を受けられる受給資格期間を
満たしているときに、老齢基礎年金に上乗せして支給されます。
年金額は、加入期間の長さや給料の額に応じて決まります。
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(2) |
障害が残ったとき |
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障害基礎年金 |
国民年金に加入中などの病気やけがで障害が残り、初診日の前日において、初診日の前々月までに
保険料を納めた期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上ある(初診日が平成28年3月までの場合は、
直近1年間に保険料の滞納がない)ときに支給されます。
障害基礎年金は1級と2級のみです。
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A |
障害厚生年金・障害手当金 |
厚生年金保険に加入中の病気やけがで障害が残り、初診日の前日において、初診日の前々月までに
保険料を納めた期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上ある(初診日が平成28年3月までの場合は、
直近1年間に保険料の滞納がない)ときに支給されます。
障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せして受けられる1級、2級以外に障害等級3級があります。
また、障害の程度が軽いときは、障害手当金(一時金)が支給されます。
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(3) |
死亡したとき |
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遺族基礎年金 |
国民年金加入中などに亡くなり、死亡日の前日において死亡日の前々月までに保険料を納めた期間
(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上ある(初診日が平成28年3月までの場合は、直近1年間に保険料の
滞納がない)ときに、生計を維持されていた子のある妻または子に支給されます。
遺族基礎年金が支給される子とは、18歳未満(到達年度の末日まで)、または一定の障害のある20歳未満の子を言います。
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A |
遺族厚生年金 |
厚生年金保険に加入中などの人が亡くなり、死亡日の前日において死亡日の前々月までに保険料を納めた期間
(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上ある(初診日が平成28年3月までの場合は、直近1年間に保険料の滞納がない)
ときに、生計を維持されていた妻、子、夫、父母、孫、祖父母に支給されます。
妻以外は、一定の年齢に該当する者、または障害の状態にある者のみが対象となります。
子のある妻または子の場合は、国民年金の遺族基礎年金に上乗せして支給されます。
なお、平成19年4月からは、子のいない30歳未満の妻の場合は、死亡時から5年の有期年金となりました。
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