改定・レジオネラ属菌防止に関する防除指針 (11)
1 施設及び機器の管理
1) 貯湯タンク
(1) 源泉を一定の区域で集中管理している場合
a 集中管理している貯湯タンクの湯温を60℃以上に設定すること。
b 集中管理している貯湯タンク及びそこから各施設への配湯管は高温水でも劣化せず、また温度を低下させない材質のものにすること。
(2) 自家泉源を貯湯タンクに貯めている施設
a 貯湯タンクの湯温を60℃以上に設定すること。
b 60℃以上に温度設定が出来ない場合は、源泉がレジオネラ属菌に汚染されている可能性があるので、源泉をそのまま使うのではなく一度加温して使用するか、あるいは60℃以上に温度設定が可能な装置に取り替えることを検討すること。
(3) タンクは外気と遮断されているか。また、破損箇所はないか定期的に調べる。 外気と通じていたり、 破損している場合等は、そこからレジオネラ属菌が混入する可能性がある。
(4) アメーバの生残または増殖防止のため、定期的に給湯管内の洗浄を行うこと。
2) 循環ろ過装置
(1)  循環ろ過装置を使用する場合は、できるだけ各浴槽毎に設置すること。
(2)  循環回路の途中にへアーキャッチャーを設けて毛髪その他の目に見える汚れを除去すること。
 なお、これにより肉眼的な濁りは除去されるが、細菌が除去されたわけではない。細菌の存在が濁りとして我々の目にみえるのは、菌数が10 7個/ml方又はそれ以上の時であり、たとえ、肉眼的に清浄に見えても、水1ml中に100万個(106個/ml)の細菌がいる場合もある。
(3)  循環ろ過装置は、機器の仕様に基づき保守点検を実施するとともに、毎日又は一定期間毎に逆洗して汚れを排出すること。
(4)  浴槽内部の湯の停滞(よどみ)が生じていないかを調べ、よどみが生じる場合は、生物膜(ぬ めり)や毛髪、垢等の汚れが貯留しやすいので、定期的に確認しこれらを除去すること。
(5)  浴構内部での湯のよどみを防ぐためには、浴槽の底部に近い部分で循環水が補給される構造が望ましい。浴槽の新設、改造の際はこの点に留意すること。
 温泉の利用基準(昭和50年7月12日環自企第424号環境庁自然保護局長通 知)の第一の2の(2)のイ「浴槽に温泉を入れる注入口は、浴槽湯面 より上部に設けること。」は、循環ろ過装置の循環水の注入口を意味するものではない。
(6) 循環ろ過装置による循環系統の配管に異常がないか定期釣に確認すること。配管が破損している場合は、そこからレジオネラ属菌が混入する可能性がある。
3) 気泡発生装置、ジェット噴射装置を使用している場合
(1) 土埃と共にレジオネラ属菌が侵入するのを防ぐため、空気取入口に硬質濾紙を素材とするフィルターを設置すること。
(2) 機器は、その仕様に基づき保守点検を実施すること。
(3) フィルターの交換は、その仕様に基づき行うこと。
4) 露天風呂を設けている場合
 露天風呂は常時レジオネラ属菌による汚染の機会にさらされているため、換水または消毒等については、内湯よりも厳しく管理しなければならない。
 また、内湯と露天風呂の間の配管を通こて、露天風呂の湯が内湯に混じることのないようにすること。
 なお、露天風呂には洗い場を設けないこととなっているが、利用者が浴槽水で身体を洗うとエアロゾルが発生しやすくなるため、露天風呂では身体等を洗わないよう利用者に対する注意喚起が必要である。
5) 機器の保守点検
 循環ろ過装置、気泡発生装置、ジェット噴射装置、その他の機器は、その仕様に基づき、定期的あるいは必要時に保守点検を行うとともに消耗品の交換等を行うこと。

2 浴槽及び浴槽水の衛生管理
1) 浴槽の管理
(1) 浴槽水を完全に排水し換水する際には、必ず浴槽を清掃すること。
(2) 1か月に1回以上消毒すること。
2) 浴槽水の管理
(1) 水質の確保
a 浴槽水の水質については、「公衆浴場における水質等に関する基準」昭和38年10月23日環発第477号厚生省環境衛生局長通 達)の第4の次の規定を満たすことのほか、レジオネラ属菌の細菌検査を定期的に行うこと。
濁度は、5度をこえてはならない。
過マンガン酸カルウム消費量は、25ppmをこえてはならない。
大腸菌群は、1mlにつき1個をこえてはならない。
b レジオネラ属菌が検出され、レジオネラ症の発生が懸念される場合は、速やかに浴槽水を換水するとともに、併せて浴槽の清掃及び消毒を行うこと。
c 上記(2)の措置後及び約2週間後に浴槽水の細菌検査を行うこと。
d 浴槽水を換水してもレジオネラ属菌が相当数検出される場合には、塩素系薬剤を用いて浴槽水を定期的に消毒すること、源泉から貯湯タンク及び貯湯タンクから浴槽への配管の洗浄及び消毒を行うこと等により、 清浄な浴槽水を供給するための適切な措置を講ずること。
(2) 消毒
a レジオネラ属菌の消毒には、塩素剤の効果が確認されており、浴槽水の消毒には塩素剤の使用が適している。
塩素剤には、次亜塩素酸ナトリウム(液剤)、ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム(顆粒、錠剤)、トリクロルイソシアヌル酸ナトリウム(顆粒、錠剤)、サラシ粉(散剤、顆粒剤、錠剤)及び次亜塩素酸カルシウム(顆粒、錠剤)などがあるが、これらを使用し、浴槽水中の残留遊離塩素濃度を1日に1〜2時間、0.2〜0.4mg/1(ppm)を目標値とし、なるべくこの間に保つように調節すること。
 なお、塩素濃度が低いと殺菌力が不十分となりまた、高すぎると塩素による刺激で不快感を起こすことがあるが、この残留遊離塩素濃度であれば臭気は全く感じられない。5〜10mg/1(ppm)の塩素濃度を推奨している報告もあるが、循環ろ過装置等を使用している場合、とくに濁りが観察されない状態であればこの濃度で十分である。
 浴槽水に濁りが観察される場合は、濁りの原因を除去するとともに、遊離残留塩素濃度を維持するため、塩素の使用量 を増やす必要がある。
 また、残留遊離塩素濃度の測定は、簡単に操作できるオルトトリジン法による測定機器が市販されている。
b 塩素自動注入装置(一定濃度の次亜塩素酸ナトリウムの溶液を自動的に注入する装置)を使用する場合 塩素自動注入装置を使用する場合は、機械の仕様に従った保守点検を行うこと。
 浴槽水中の遊離残留塩素濃度を1日に1〜2時間、0.2〜0.4mg/1(ppm)に保つように調節すること。24時間を通 じて塩素を注入し続ける必要はない。
塩素自動注入装置を設置していない場合
錠剤の使用が簡便である。
 使用説明書に従った量を投入すればよいが、投入量は浴槽水の量 (浴槽内の量+配管内の量)により換算すること。
 なお、この場合も残留遊離塩素濃度が目標値にあることを確認しなければならない。
投入場所
 浴槽内の循環水の排水口の近く、または循環ろ過装置の前の汚物捕捉器内がよい。(錠剤は2分前後で溶解する)。
 この方法でも浴槽水の遊離残留塩素濃度は0.2mg/1以上を1時間以上維持することができる。
 なお、浴槽水中のレジオネラ属菌は、塩素剤添加直後から約24時間後まで不検出を維持する。
d  入浴者が多い場合等は、浴槽水の汚濁によって、塩素の消費量 が増大するため、消毒の回数または塩素の使用量を増やさないと目標濃度を維持できないことがある。
e レジオネラ属菌の性状から、酸性(pH5.0以下〉やナトリウム濃度の高い浴槽水には棲息しないと推測される。このような場合は、4の(1)に示す方法にる細菌検査を行いレジオネラ属菌不検*であれば、塩素消毒の必要はない。
:4の(1)に示す検査方法により不検出(1cfu/100ml未満)ということであり、レジオネラ属菌が皆無ということを意味するものではない。
アルカリ性の温泉水中では塩素剤の消毒効果が減弱するおそれがあるため、細菌検査の結果 によっては、浴槽水の管理については、塩素消毒に依らず浴槽水の換水や浴槽の清掃及び消毒等の対応が必要である。

3 入浴者に対する注意喚起
 入浴者に対し、浴槽に入る前にあらかじめ身体の汚れを落とすよう、注意書き等で指示をすること。

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