改定・レジオネラ属菌防止に関する防除指針 (2)
1) 原因菌とその感染経路
 レジオネラ症(legionellosis)はレジオネラ属菌(Legionella species)による感染症である。レジオネラ属菌は自然界の淡水や土壌および人工水環境中で自由に生活しているグラム陰性の細菌であり、ヒトの皮膚・粘膜に常在したり感染したりする必要がない。しかし自然界や人工水環境中では細菌捕食性(細菌を餌とする)アメーバなどの原生動物に貪食されてもその食胞内で消化されずに生残・増殖し、遂には宿主細胞を破壊して外界に放出され、再び新しい宿主に貪食されて増殖する。レジオネラ属菌を生息させる可能性があるのは、水冷式冷却塔の冷却水、循環式浴槽の湯、超音波加湿器の水など、水温が20℃以上で配管系内を循環し、ある部位 では停滞し、また配管系内壁に生物膜が形成され細菌捕食性原生動物が生息している人工水環境である。
 ヒトは主としてこの菌を含む水のエアロゾルや土埃を吸入し、または汚染水に溺れてこれを呼吸器内に吸い込み、呼吸器感染症を起こす。しかし感染後のレジオネラ属菌は血液中に入って増殖することが知られており、創傷感染や経口感染の可能性も示唆されている。
 感染が成立するのは、宿主(ヒト)の身体条件、寄生体(レジオネラ属菌)の病原性と菌数、気象その他の外的要因などが複雑に錯綜している上に、更に未だ解明されていない条件が揃った時と言わねばならない。このため、宿主側または寄生体側の単純な要因から発病の危険性を肯定も否定も出来ない。しかし一旦レジオネラ属菌に感染し発病すれば、不幸な場合には劇症肺炎を起こし週日で死亡することを考えると、感染の機会を出来るだけ減らす、即ち人工環境水中のレジオネラ属菌をできるだけ減少させることが肝要である。
 レジオネラ症患者の集団発生では共通の感染源から複数の人が感染して発病する。人から人への伝播は報告されていない。モルモットにレジオネラ生菌を実験的に注射または吸入させると発病させることが出来る。このような感染実験は別 として、人以外の哺乳動物の自然感染はこれまで知られていなかった。しかしFabbiらは重症肺炎で斃死した生後20日のコウシの肺と肝組織からL.pneumophila血清群1を検出し、その病理所見もヒトのレジオネラ症に酷似していたことを報告した(1)。報告は幼獣1例に過ぎないが、これまでの推測に反して、ヒト以外のほ乳動物のレジオネラ自然感染症の実在を示すものとして注目される。
2) 旅行関連レジオネラ肺炎集団発生の最初の報告例とレジオネラ属菌の発見・命名
 米国疾病予防センターの癩・リケッチア部門の研究室でマクデイド(McDade)が、それまで知られていなかった細菌を顕微鏡下に発見したのは1976年12月27日のことであった(2)。 発見されたのは、その年の7月5日から8月16日までにペンシルベニア州の各地で231人の肺炎患者を発生させ、そのうち29人を死亡させた原因菌であった。肺炎患者231人の内訳は、7月21日から24日までフィラデルフィアのベルビューストラトフォード・ホテルで開催された米国在郷(退役)軍人会の200年祭の参加者が178人、この催しとは無関係の同ホテル宿泊者が73人、 同ホテル周辺の通行者が39人であった。患者の大多数が在郷軍人関係者であったことから、この疾患は原因菌が特定されるまでは、在郷軍人病(Legionnaires' disease)(3)と呼ばれていたが、その後日本(4)はもとより多くの海外論文でレジオネラ肺炎Legionella pneumoniaと呼ばれている。この1976年のフィラデルフィアでの事例は、患者の77%(178/231)がペンシルベニア州内の各地からフィラデルフィアに参集した在郷軍人会総会関係者で、大会終了後帰郷して発病している(図1)ことから、旅行に関連した(travel-associated)レジオネラ集団発生の最初の報告例となった。

図1.1976年夏のアメリカ合衆国での在郷軍人病発生状況の概要

表1. レジオネラ属41菌種の基準株とその由来
No. 菌 種 命名者 年度 ATCC 由 来
 1 L.pneumophila Brenner et al. 1979 33152T 剖検肺、フィラデルフィア
 2 L.bozemanii Brenner et al. 1980 33217 剖検肺、ノースカロライナ
 3 L.micdadei Hebert et al. 1980 33218 患者血液、フォート・ブラグ
 4 L.longbeachae McKinney et al. 1982 33462 剖検肺、ロングビーチ
 5 L.wadswarthii Edelstein et al. 1983 33877 喀痰、ワズワース、カリフォルニア
 6 L.hackeriae Brenner et al. 1985 35230 気管支生検、ランシング、ミシガン
 7 L.birmingahamensis Wilkinson et al. 1988 43702 生検肺、アラバマ
 8 L.cincinatiensis Thacker et al. 1989 42753 部検肺、シンシナチ
 9 L.tucsonensis Thacker et al. 1990 49180 賢移植患者胸水タクソン、アリゾナ
10 L.lansingensis Thacker et al. 1994 49751 気管支洗浄液、ミシガン
11 *L.dumoffii Brenner et al. 1990 33279 冷却塔水、ニューヨーク
12 *L.gormanii Morris et al. 1980 33297 小川の土手の土、アトランタ
13 *L.jordanis Cherry et al. 1982 33623 ヨルダン川の水、アトランタ
14 *L.oakridgensis Orrison et al. 1982 66461 冷却塔水、ペンシルベニア
15 *L.feeleii Herwaldt et al. 1985 35072 切削油、オンタリオ
16 *L.parisiensis Brenner et al. 1985 35299 冷却塔水、パリ
17 *L.maceachernii Brenner et al. 1985 35300 家庭用蒸発型冷房機水、アリゾナ
18 *L.anisa Gorman et al. 1985 35292 水道水、ロサンゼルス
19 *L.santicrucis Brenner et al. 1985 35301 水道水、バージン島、サン・クロワ
20 *L.sainthelensis Campbell et al. 1985 35248 泉の水、セントヘレン山
21 L.erytha Brenner et al. 1980 35303 冷却塔水、シアトル
22 L.rubrilucens Brenner et al. 1985 35304 水道水、ロサンゼルス
23 L.steigerwaltii Brenner et al. 1985 35302 水道水バージン島、サン・クロワ
24 L.cherii Brenner et al. 1985 35252 水、ミネソタ
25 L.spiritensis Brenner et al. 1985 35249 スピリット湖の水、ワシントン
26 L.jamestowniensis Brenner et al. 1985 35298 湿土、ジェームスタウン、ニューヨーク
27 L.israelensis Bercovier et al. 1985 43119 池の水、ガーシュ、イスラエル
28 L.moravica Wilkinson et al. 1986 43877 冷却塔水、チェコスロバキア
29 L.brunensis Wilkinson et al. 1989 42878 冷却塔水、チェコスロバキア
30 L.quinlivanni Benson et al. 1990 43830 バス空調器の水、オーストラリア
31 L.fairfieldensis Thacker et al. 1991 49588 冷却塔水、アデレイド
32 L.gratiana Bornstein et al. 1991 49413 フレンチ・スパの水、リヨン
33 L.adelaidensis Benson et al. 1991 49625 冷却塔水、アデレイド
34 L.shakespearei Verma et al. 1992 49655 冷却塔水、イングランド
35 L.geestiana Dennis et al. 1993 49504 給湯機、ロンドン
36 L.londiniensis Dennis et al. 1993 49505 冷却塔水、ロンドン
37 L.nautarum Dennis et al. 1993 49506 病院給湯水、ロンドン
38 L.quateirensis Dennis et al. 1993 49507 ホテルの浴室シャワー、ポルトガル
39 L.worsleiensis Dennis et al. 1993 49508 冷却塔水、ワースレー
40 L.lytica Hookey et al. 1996  ─ アメーバ
41 L.waltersii Benson et al. 1996 51914 飲料水系、南オーストラリア
*基準株は環境由来だが、その後に患者を発生させた菌種
 マクデイドの発見後、Feeleyら(5)はこの菌の培養に成功し、Brenner等(4)はこれまで知られていなかった新属Legionellaの新種としてレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)と命名した(6)。培養法と分類が確立されたことにより、砺究は急速に進み、現在レジオネラ属には41菌種が正式に命名され(表1)、この属の基準種L.pneumophilaの菌種には15の血清群が知られている(表2)。更に普通 の細菌用培地では増殖しないためこれまで知られていなかったこの菌による感染症が、米国では40年以上も前から実在していたことも証明された(7-11)。
表2.L.pneumophilaの15血清群別 のパイロット株とその由来
SG 菌種 菌株表示 年度 ATCC 由来 場所
1 L.pneumophila* Knoxville-1 1979 33153 剖検肺 ノックスビル、テネシー アメリカ
2 L.pneumophila* Togus-1 1979 33154 剖検肺 トガス、メイン アメリカ
3 L.pneumophila* Bloomington-2 1979 33155 小川の水 ブルーミントン、インディアナ アメリカ
4 L.pneumophila
subsp.fraseri
Los Angels-1 1979 33156 剖検肺 ロサンゼルス、カリフォルニア アメリカ
5 L.pneumophila
subsp.fraseri
Dallas 1E 1979 33216 冷却塔水 ダラス、テキサス アメリカ
6 L.pneumophila* Chicago-2 1980 33215 肺生検 シカゴ、イリノイ アメリカ
7 L.pneumophila* Chicago-8 1983 33823 シャワーヘッド シカゴ、イリノイ アメリカ
8 L.pneumophila* Concord-3 1983 35096 剖検肺 バークレイ、カリフォルニア アメリカ
9 L.pneumophila* In-23-G1-c2 1984 35289 水道水 ライデン オランダ
10 L.pneumophila* Leiden-1 1980 43283 気道分泌物 ライデン オランダ
11 L.pneumophila* 797-PA-H 1986 43130 気管内チューブ ピッツバーグ、ペンシルベニア アメリカ
12 L.pneumophila* 570-CO-H 1987 43290 肺組織 コロラド アメリカ
13 L.pneumophila* 82A3105 1988 43736 肺吸引物 カリフォルニア アメリカ
14 L.pneumophila* 1169-MN-H 1988 43703 気管支吸引物 ミネアポリス、ミネソタ アメリカ
15 L.pneumophila
subsp.fraseri
Lansing-3 1988 35251 ヒト肺組織 ロイヤルオーク、ミシガン アメリカ
 
3) レジオネラ症の病型
 レジオネラ症にはレジオネラ肺炎と肺炎にならないポンティアック熱(Pontiac fever)(10)の2つの病型がある。レジオネラ肺炎には、多臓器不全を起こして発病後1週間以 内に死亡する劇症型から適正抗生物質治療で治癒するものまで種々の移行型がある。福永らは呼吸器感染症状を示さない各種の呼吸器疾患、例えば肺気腫や気管支拡張症などで肺炎を起こしていない患者の喀痰からレジオネラ属菌が検出されることを報告した(12)。  通常レジオネラ属菌は患者の呼吸器系材料から検出されるが、血液培養でL.pneumophilaSG1を証明したことがEdelstein(13)とChester(14)によって報告されている。このことはL.pneumophilaによる病変は主として肺に現われるが、この菌は血液中に入って、種々の臓器に異常を起こし得ることを示唆している。実際に重症膠原病患者でL.pneumophilaの全身感染が見られ(15)、バーモントでのレジオネラ肺炎致死例では肺以外に脾、肝、腎、リンパ節組織の直接蛍光抗体染色でL.pneumophilaが証明されたが、その局所には炎症所見がなかったという(16)。重度の小脳失調(17)、脳脊髄炎症状と髄液異常(18)、基礎疾患からは説明出来ない中枢神経症状を示した患者(19,20)、大脳・小脳および脳幹の機能異常を認めたが、中枢神経の細菌感染を証明できなかった症例も報告されている(21)。これに対し、心膜炎や心内膜炎患者からL.pneumophilaが培養によって証明されている(22-24)。これらのことから、レジオネラ肺炎の重症例で成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome,ARDS)や多臓器不全がどのような機作でおこるのか、今後解明しなければならない問題の1つである。

 

1] レジオネラ肺炎(3)
 発熱(37〜40℃またはそれ以上)、全身倦怠、疲れ易い、頭痛、筋肉痛、咳などで始まるが、咽頭痛や鼻炎などの上気道の炎症症状は通 常みられない。咳は早期からあるが痰は少ない(乾性咳漱)。悪寒、下痢、呼吸困難もあり、高熱のわりに脈拍が少ない比較的徐脈のほか、意識障害、傾眠、幻覚、歩行障害などの精神神経学的症候も早期からみられる。  胸部レントゲン写真では多くは一般の細菌性肺炎と同様の肺胞性陰影像を示すが、間質性陰影やまれに粟粒陰影を認めることもある。浸潤陰影が一側肺の一部ではじまっても時間とともに急速に進展する傾向がある。強い呼吸困難と低酸素血症を起こす。胸水がたまることが多く、まれには空洞形成を認める(図2-1)(25)。播種性血管内血液凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrom,DIC)やARDSを起こし(26)、適切で強力な治療が行なわれなければ発病後数日以内に死亡する(27)。治療が遅れると致命率が上昇し(28)、新生児で入院翌日に死亡した例もある(図2-2)(29)。  患者の日齢と年齢は生後6日目から81歳まであるが、50〜60歳代が最も多い。糖尿病や肝機能障害のある人、大酒家、悪性腫瘍患者、臓器移植患者、エイズ患者などは罹り易いと言われるが、30〜40歳代で元気に働いている人も罹患する。旅行後に発病する人が少なくないことは、旅行による疲労や体調の変化が関係しているのかも知れない。男性と女性の患者数の割合は約3:1である(26)。性別 によって患者数に差がある理由は解っていない。

 

[1] レジオネラ肺炎を疑うのは次の場合である。

a, 発病前10日以内にエアロゾル暴露または1泊以上の旅行歴がある
b, 臨床症状、理学的所見、一般検査所見および胸部X線像から急性細菌性肺炎が疑われ、屡々下痢や意識障害を伴う。
c, 肺の浸潤陰影は急速に進展するが、浸潤陰影の程度に比して低酸素血症が強い。
d, 通常の細菌培養で肺炎の起炎菌と見做される菌種が検出されない。
e, β−ラクタム剤やアミノ配糖体剤が奏効しない。

図2. 温泉旅行後に発病・死亡したレジオネラ肺炎症例(59歳男性)の胸部X線写 真と剖検肺割面(25)
入院時。右肺に協会不鮮明な肺炎像を認める。
入院第3日目。右肺はほぼ全体に滲出物で満たされ、左肺上葉にも陰影を認める。
入院第16日目。全肺野の繊維化像が著明となる。右上葉の陰影は消失せず。
ホルマリン固定した右剖検肺の割面。生前のX線写真に一致して、上葉に9×5×7cmの膿瘍を認めた。肺膿瘍の内容が喀出されると空洞になる。
 
図3、 入院翌日に死亡した新生児レジオネラ肺炎の胸部X線写 真(29)
両肺全野に粟粒陰影が撒布されている
[2] レジオネラ肺炎を確定診断できるのは下記のいずれかが陽性の場合である

a. 患者の呼吸器由来材料をBCYEα寒天培地またはこの培地に抗菌剤や抗真菌剤を加えた選択培地で培養し、レジオネラ属菌を検出し菌種および血清群を決定する。

b. 特異性の高い抗体を用いて患者尿中のレジオネラ特異抗原を検出する(30-32)。

c. レジオネラ属菌に共通の特定プライマーを用いて、患者の呼吸器由来材料からpolymerase chain reaction(PCR)法によってレジオネラ属菌に特異的な塩基配列を証明する(33,34)。

d. マイクロプレート定量凝集法または間接蛍光抗体法によって、レジオネラ属の特定菌種および血清群に対応する患者血清抗体価の有意上昇を証明する(35-37)。

[3] レジオジオネラ肺炎の治療

 レジオネラ属菌は通常の細菌学用培地に発育せず、特定の培地を用いても発育が遅いため、確定診断が遅れることが多い。そのため患者の既往歴と臨床所見からレジオネラ肺炎が疑われるとき、主治医は迅速に検査材料を採取してレジオネラ検査を指示すると共に即刻治療を開始しなければならない。しかしこの時点で患者の病像は既に中等度または重症になっていることが多い。重傷の場合DICやARDSを合併していて致命率が極めて高いので、集中治療室(intensive care unit,ICU)に収容して酸素療法、呼吸補助療法を行なうと共に有効な化学療法剤を強力に投与しなければならない(4)。  レジオネラ属菌は食細胞(好中球やマクロファージ)によく貪食されるが,ファゴソームとリソソームの融合を阻止したり、その他に生体の防衛反応に打ち勝つ特異な能力を有するため食細胞内で殺菌されずに増殖し、食細胞を破壊する。このことは環境の水や土壌中のアメーバとレジオネラ属菌との開係と同様である。  一般の細菌性肺炎の治療に常用されるβ-ラクタム剤やアミノ配糖体剤は動物細胞の細胞膜を通 過し難いので、細胞内で増殖しているレジオネラ属菌には治療効果 がない。明かな治療効果が得られる化学療法剤はマクロライド(ML)系、リファンピシン(RFP)、ニューキノロン(NQS)系、テトラサイクリン(TC)系である。ML系ではクラリスロマイシン(CAM)は内服後の組織内濃度とくに肺での濃度が高く、レジオネラ肺炎にすぐれた効果 がある。しかし注射剤がないので内服できない患者では投与し難い。エリスロマイシン(EM)も有効であり、特にこの薬剤は内服用と注射用の両方があって便利である。ML系ほどではないが、TC系ではミノサイクリン(MINO)が有効である(4)。近年レジオネラ肺炎に対するロキシスロマイシンの治療効果 も報告されている(38)。

2] ポンティアック熱(Pontiac fever)(11)

 インフルエンザに似た熱性疾患で肺炎にならず、特別な治療をしなくても治癒する場合が多い。しかし中には倦怠感や呼吸困難感などが残る者もある。  1968年7月1日から17日迄と、その後8月3日と4日に米国ミシガン州ポンティアックの衛生局の建物内で発熱患者の集団発生があり、職員100人中95人と訪問者170人中49人の計144人が発病した。潜伏期間は平均36時間で、患者数に男女差はなく、肺炎にならず、多くは化学療法なしでも治癒した。当初は原因不明であったが、1976年のフィラデルフィアの事例でレジオネラ・ニューモフィラが発見・命名された後の再調査で、この菌に対するポンティアック熱患者の血清抗体価が有意に上昇していたことが判明し、非肺炎型のレジオネラ症と診断された。ポンティアック熱の集団発生では感染発病する人が多い、性別 ・年齢に差がない、自然治癒型であるなどの点で、レジオネラ肺炎と非常に異なっている。原因菌が同じなのに何故このように病型が違うのかは解かっていない。症状がインフルエンザに似ており、レジオネラ属菌に対する血清抗体価を調べないと診断がつかないので、集団発生しなければ診断されない。  1968年以降、世界では日本を含めて5ヶ国からポンティアック熱の集団発生9事例が報告されている[表4]。

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