a. |
フィルター貼付法では、菌を補足した面を上にしてフィルターを選択培地表面
に貼り付ける。このときフィルターと培地の間に空気が入らぬよう、両者を密着させる。いわゆる「直径9cmシャーレ」の身の内径は87mm前後なので、90mmのフィルターを用いると周囲に襞を作らなければならない。
前処理した100倍濃縮検水100μlを選択培地平板にとりコンラージ棒で塗布する。平板培地を、10枚使用し出現集落数を合計すれば検水100倍濃縮検水1mlすなわちもとの水100ml当たりの生菌数の実数が得らる。この方法では信頼度は上がるが、費用も嵩む。最初に100μ
l塗布し一旦乾燥させた後再度100μl塗布すれば検水量を2倍にすることができる。 |
b. |
37℃で5〜7日間(10日まで)培養する。培養期間が長いので、平らな容器に水を張って孵卵器に入れるか、または培養物を密封出きるプラスチックなどの平らな容器に収納して乾燥を防ぐ。 |
c. |
培養24〜48時間後に出現した集落はレジオネラ属菌ではない。レジオネラ属菌の独立集落は培養4〜5日目から出現しはじめ、6〜7日前後で集落性状が判定できるまでに生育する。培養3日目までは培養物を観察しなくてもよいという意見もあるが、レジオネラ属菌によく似た他の菌の集落が培養早期から出現する場合があるので、それを確認しておくためにも、培養物は毎日観察する。培養早期に出現した集落には培地の裏から印を付けておくとよい。 |
d. |
各種レジオネラ培地に出現する灰白色、僅かに透明感があり湿潤した大小不同の集落で、辺縁はやや不正、特有の酸臭があればレジオネラ属菌を疑う。レジオネラ属菌は純培養であっても集落の大きさが不揃いである。逆に集落が同じ様にみえても菌種や血清群の異なる集落が混じっていることが少なくない。
培地に貼付したフィルター上ではレジオネラ培地上と異なり集落は小さく淡い黄色を帯びる。 集落性状が異なるので、最初から実際の検体を調べるのでなく、まず信頼出来る純培養菌を用いフィルター上での発育状況に慣れる必要がある。
集落数が多い場合は、培地上と同じ淡い酸臭を発する。(図5) |
e. |
独立集落数個をそれぞれBCYEα−Cys(又は5%血液寒天)とBCYEa寒天平板に植継ぐ。この時1枚の平板培地を6〜8区画し、各区画に1集落を植継ぐ。集落を植継ぐときは必ずL‐システイン不含培地に先に接種しBCYEa寒天は後にする。これは微量
のBCYEa寒天が白金耳に付いて持ち込まれると、レジオネラ属菌がL−システイン不含培地でも発育し判定を誤らせるからである。 |
f. |
継代培養についで、発育菌をスライドグラスに塗抹しグラム染色する。 |
g. |
BCYEa寒天に発育してBCYE−Cys(または血液寒天)に発育しないグラム陰性桿菌と考え、集落数を数える。1個の集落は1個の親細菌から出発した子孫の集まりという前提のもとに、一定量
の検水を塗抹培養した時に現われる集落数を算定すると、もとの水の単位
量当たりの生菌数を算出することが出来る。 この方法では死菌は数えられない。100倍濃縮検水100mlを平板培地に塗布しレジオネラ属菌の集落が1個出現したとき、もとの水100ml当たりのレジオネラ属菌の生菌数10CFUで、これがこの方法での検出限界である。最初の検水量
を1literにするとか、塗抹培養する平板培地の枚数を多くすると、検出感度を上げることが出来る。実際に温泉旅行後にレジオネラ肺炎にかかった人があった場合、通
常の検査法でその温泉浴槽水から菌が検出されなかった時は、感度を上げて再検査する必要がある。
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