氷雪販売業-2008年
1 概況
2008年
(1) 施設(店舗)数等の推移
   厚生労働省「衛生行政報告例」により氷雪販売業の施設数、営業許可と廃止取消件数の推移を見ると引続き減少が続いており、新規参入(許可)の3〜4倍の割合で廃業(廃止取消)が進展している。
氷雪販売業の施設数の推移表
 
氷雪販売業の施設数の推移グラフ
 

・直近の施設数、営業許可、廃止取消件数の推移

年  次

施 設 数

営業許可件数

廃止取消件数

平成17年度

2,762

51

127

18年度

2,622

37

177

19年度

2,507

48

163

資料:厚生労働省「衛生行政報告例」

(2) 最近の動向
「純氷」に根強い需要
   製氷業者が製造し袋詰めで販売される「純氷(じゅんぴょう)」は、一般家庭でもパーティー等の催事に購入することがある。日常生活で常時購入することは稀であるが、冷蔵庫の自家製氷では満足できない場合や来客等の接待に、ジュースや洋酒等の水割りには不可欠といえる。氷雪販売業店舗が近隣にないこともあり、スーパーやコンビニで購買されることが多く、業界での一般店売りは僅少である。根強い需要があるにしても、一般家庭の需要頻度が少ないことが痛い。
主たる販売先の廃業で需要減少
 氷雪販売業の主たる販売先は「バー・クラブ」である。業務用の小型製氷機が普及したとはいえ、バー・クラブで客に提供する氷は「純氷」を使用するのが一般的である。しかしながら、バー・クラブの廃業や転業、事業規模の縮小等から、氷雪販売業の納入する「純氷」の需要が減少してきている。

2 氷雪販売業の特性と現状

 厚生労働省の委託により全国生活衛生営業指導センターが実施した「平成19年度生活衛生関係営業経営実態調査(氷雪販売業)」から、業界の現状を探ってみたい。
(1) 7割超が兼業
 専業・兼業の別を見ると「兼業」が71.0%を占め、専業での経営存続の困難さが伺える。兼業の内容をみると、「燃料業」38.6%、「ドライアイス」25.6%、「食品販売業」13.6%が続き、従前からの営業との兼業が継続している。
(2) 高齢化する経営者
 経営者を年齢階層別に見ると「60歳台」が35.8%で最も多く、次いで「70歳以上」33.0%、「50歳台」18.2%となり、60歳以上で68.8%を占め高齢化が顕著である。
後継者の有無については、「あり」が36.4%となっているものの、「なし」が60%を超えており後継者難が大きな課題となっている。
(3) 固定客主体の配達営業
 販売方法では「配達」が89.8%を占め、「一般店売り」が6.6%に過ぎない。扱う商品が冷凍保存を要すること、一般家庭での購買減少から、固定客に対する配達営業が主体といえる。
主な販売先(複数回答)は「バー・クラブ」が75.8%で最も多く、次いで「一般飲食店」72.7%、「喫茶店」66.5%、「料亭・割烹」42.0%の順となっている。
(4) 氷室の面積は小規模
 主たる設備である「氷室」の面積は「10u未満」48.3%、「10〜20u」25.6%となっており、20u以下が70%を超える。設置する「氷室」は小規模で、冷凍保存する営業形態は少ないといえる。
(5) 経営上の問題点、8割近くが「客数の減少」
 経営上の問題点(複数回答)をみると「客数の減少」が73.9%を占め、次いで「燃料費の上昇」27.8%、「コンビニでの販売」26.1%と続く。燃料など経費の上昇やコンビニによる氷販売が常態化して競合店などの経営環境の問題が浮上しており、従前から課題としていた「後継者難」などの内部要因から変化がみられる。

3 「食品衛生法」による規制

 食品、飲食に関する営業については、営業施設及び用材の衛生水準の維持・向上を図るため、「食品衛生法」が昭和22年12月法律施行されている。
(1) 「食品衛生法」の目的
 「食品の安全性の確保のために、公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ること」を目的としている。
主な食品営業の他、食品、添加物、器具、容器包装等を対象に、飲食に関する衛生について規定している。
(2) 営業許可
   氷雪販売業を営業するためには、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)に届出し、許可を受ける必要がある。また、その営業施設は、都道府県条例に定める設置基準に合致していなければならない。
営業許可の有効期限は5年以内であり、継続して営業するためには更新が必要である。なお、都道府県等の条例により、施設の堅牢性、耐久性が優れている場合や食品衛生上良好と判断される施設については、条件によって更に長期の有効期限となっている。名古屋市の場合、実地審査により5〜8年の有効期限が決定される。
(3) 食品衛生責任者の設置
 氷雪販売業の営業にあっては、都道府県知事が定める設置基準に準拠して「食品衛生責任者」を置かなければならない。
(4) 提供する食品に対する規制
 食品保健行政の見地から、提供する食品等について規格基準等が設けられ、違反する食品等の販売などは禁止されている。
規格基準の設定
 添加物、残留農薬、遺伝子組換え食品や器具、容器包装等については、夫々規格基準が定められており、適応していない食品の販売は禁止されている。
表示基準の設定
 アレルギー食品材料、遺伝子組換え食品等については、夫々表示基準が定められており、適応していない食品の販売は禁止されている。
添加物の指定
 食品添加物については、成分規格、保存基準、製造基準、使用基準が指定されており、適応しない添加物の使用等は禁止されている。
(5) 食品衛生監視員による監視指導
 都道府県等の保健所には、食品衛生の専門知識を有する「食品衛生監視員」が配置されており、営業施設に対する監視、指導を行っている。

4 氷雪販売業の業界よもやま

(1) 「純氷(じゅんぴょう)」
   氷雪販売業で取り扱う氷は「純氷」といわれ、大きく分けて「角氷」と「砕氷」がある。「角氷」は1本135kg氷を32又は36個程度に切断したものであり、「砕氷」は小立方体のダイヤアイス、細かく砕いたクラッシュアイスがある。その他特注品として、中に生花を閉じ込めた「花氷」、氷彫刻に使用する「彫刻氷」などがある。「純氷」の特性は、「透明感があって、固く、溶けにくい」点にあり、製氷には専用の施設が必要である。
(2) 東京都における陸上氷の販売本数
 東京都氷雪販売業生活衛生同業組合「陸上氷の販売本数」の推移を見ると、生産総量自体の大幅な減少を示している。市民生活や家電機器、事業体の構造的な変化が、急激に進展してきたことを物語っている。(「仲買」は氷雪販売業者に相当する。陸上氷とは飲食用・食品冷却用のいわゆる純氷のことで、鮮魚類冷却用の水産氷と区別される。)

・東京都陸上氷の販売本数の推移(1本当たり135kg)

年  次

生産者総販売本数

仲買向総販売本数

昭和36年

5,110,650

3,947,416

40年

2,594,153

1,644,591

50年

1,433,378

914,255

60年

1,098,068

467,579

平成元年

915,917

362,009

10年度

 

 

15年度

 

 

16年度

 

 

17年度

 

 

18年度

 

 

資料:東京都氷雪販売業生活衛生同業組合

(3) 経営のポイント
 一般家庭への冷蔵庫の普及、飲食店等の自動製氷機導入によって自家製氷が進み、氷雪販売業への需要は大きく減少している。実態調査における経営上の問題点でも「客数の減少」が突出して多い。生活様式の変化や事業所施設の整備向上などで経営環境は様変わりしている。厚生労働省「氷雪販売業の実態と経営改善の方策」平成15年10月から、経営のポイントを探ってみたい。
取扱商品の再認識
   主たる商品の「純氷」に対する消費者のニーズや需要動向がどうなっているか、販売する側で今一度認識し直すことが必要であろう。取扱商品の何たるかを知らずして販売促進はできない。
経営者としての意識改革
 需要が減少していると委縮していないだろうか。過去の成功体験は最早、経営環境の構造的変化によって消えたものとし、この環境の下で自己を問い直す意識改革が必要である。
広告宣伝、周知活動の推進
 販売先が固定客中心のため、新たな顧客開拓の取り組みが閉ざされていないか。一般消費者は販売店の所在はもとより、氷雪販売業を知らないのではないか。商品を知ってもらい、販売店の存在を知ってもらうことによって、地域社会に存在意義を取り戻すことが求められる。個々の営業店で取り組むには限界もあることから、同業者や同業組合で組織的に取り組むことも検討したい。
「食の安全・安心」への適正な対応
 近年、食品業界を揺るがす事件が噴出している。食品の残留農薬問題、表示偽装問題、捏造や隠蔽などで消費者の視線は厳しさを増している。本来、消費者の視線で左右されるべき課題ではなく、食品を扱う事業者として規律の問題である。心ない一部の事業者の軽挙は、業界を震撼させ、生活衛生関係営業の根幹を揺るがすことになる。



資料

    1 総務省「事業所・企業統計調査」

    2 総務省「家計調査年報」

    3 厚生労働省「衛生行政報告例」

    4 厚生労働省「氷雪販売業の実態と経営改善の方策」平成21年1月

    5 厚生労働省「平成19年度生活衛生関係営業経営実態調査(氷雪販売業)」

    6 全国生活衛生営業指導センター「生活衛生関係営業ハンドブック2008」

    7 東京都氷雪販売業生活衛生同業組合「陸上氷の販売数」

     

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