飲食業/西洋料理店-1996年
1.概況
1996年
(1) 事業所数は微増傾向 〜健闘する小規模店〜
平成6年の全国の西洋料理店の事業所数は、27,013件で、平成3年と比 べると594件、2.2%の増加となっている。一方、一般飲食店全体では、 7千6百件の減少(1.6%の減少)となっている。個人消費の低迷から一般 飲食店全体が伸び悩んでいるなか、西洋料理店においては、微増傾向にある。
事業所数の推移を従業者規模別でみると、平成3年に比べて、従業者5人以上 の事業所が6百件の減少に対し、従業者4人以下の事業所では、1千2百件増加 している。最近「ビストロ」(フルコースレストランよりややカジュアルな業 態で、ワインと料理の組み合わせが主となっている。)などの小規模店が消費 者に支持されているといわれているが、従業者4人以下の構成割合をみても、 昭和61年の39.0%が、平成3年には35.4%に落ち込んだものの、平 成6年には39.3%に回復しており、小規模店に盛り返しがみられる。
(2) 年間販売額は増加 西洋料理店の平成4年の年間販売額は、1兆8,322億円で、平成元年調査との 比較では、17.7%増加しており一般飲食店全体の増加率と同率である。

事業所数の推移

(参考) 一般飲食店全体     
(単位:件,%)
(単位:件,%)
調査年
従業者規模別
合 計
1〜4人
5人以上
昭和61年
〈39.0〉
9,032
〈61.0〉
14,154
〈 100.0〉
23,186
平成3年

〈35.4〉
9,357

〈4.6〉
17,062
〈100.0〉
26,419
平成6年
〈39.3〉
10,612
〈60.7〉
16,401
〈100.0〉
27,013
合 計
従業者1〜4人
〈73.7〉
370,515
〈100.0〉
503,037
〈69.1〉
327,643
〈100.0〉
474,389
〈70.0〉
326,819
〈100.0〉
466,835

資料:総務庁「事業所統計調査」(平成6年は名簿整備調査)
    通産省「商業統計表(一般飲食店)」(平成4年版)
(注) 〈 〉内は構成比である。
2.最近の動向
(1)

 低価格化 フランス料理に代表される西洋料理は、従来「ハレ」の場にふさわしい高級料理、 特別な料理というイメージが主流であった。景気の拡大局面においては、個人消費の 高まりを反映して高価格帯のメニューであっても、比較的利用者に受け入れ易いムー ドが広がっていたが、景気低迷が長引く現在においては、消費者の低価格志向が一段 と強まっている。

 こうしたなかで、高級レストランとしてのイメージにとらわれず、 より利用しやすい価格でのメニュー設定を行い、手軽に料理を楽しんでもらおうとす る店が増えてきている。このような店では、従来の料理の質を維持したうえで、ラン チタイムに値ごろ感を持たせた特別メニューを盛り込んだり、ランチタイムのみなら ずディナータイムにも特別メニューを設定して低価格をアピールし、利用者層の拡大をはかるとともに、顧客が何度でも気軽に来店できるよう配慮している。

 総務庁「家 計調査年報」によると、平成7年における1世帯あたり一般 外食支出金額は、16万 2,491円、対前年比増加率では▲0.2%と、平成4年以降減少が続いている。 景気低迷、不況のなかでの消費減少も一つの要因であるが、一方では、低価格志向の 進展も要因として考えれる。

(2)

 日本風西洋料理の創造 1980年代のグルメブームには、正統派フランス・イタリア料理等がもてはやさ れ、料理自体が持つステータスが重視されていたが、消費者の舌が肥えている現状で は、正統な、しかも一本調子の味では、消費者に飽きられてしまう。そこで日本でと れる新鮮な食材を使って、日本人の口になじむようオリジナルアレンジを加えた料理 の提供により、客離れを防ぐ工夫が見受けられる。

 正統派料理を提供するために無理 のある食材選びをする必要はなく、むしろ日本の食材で、日本風の西洋料理を創造す るという動きである。日本の食材を利用することにより、原材料費を抑えることがで き、また季節感を重視する日本の慣習から、旬の素材を使って個性ある日本風メニュ ーを提供することができる。味付けについても従来の西洋料理におけるスパイスに限 らず、しょう油やもろみを利用し味付けに変化を持たせ利用者の飽きを防いでいる店もある。

(3)  ヘルシー志向 主に、素材の味を生かしたイタリア料理において、最近のヘルシー志向の高まりか ら、新鮮な野菜をたっぷり使った、消化のよい、やわらかい料理を提供する店が増え てきている。料理に利用されるオリーブオイルは、欧米では健康に良いとされており 「地中海式ダイエット」として注目されている。また香りもよいことからハーブ系野 菜と組み合わせることにより、味だけでなく香りも盛り込んだメニューを設定するこ とにより、女性・若者を中心に好評を得ている。
3.経営上のポイント
(1)

 値段に見合ったメニュー設定 消費者は舌が肥え価格に厳しくなっているため、今後は、従来の料理で値ごろ感、 割安感を出すために一人前の量を多くしたり、量は少ないが単価を低く設定する等の 工夫を加える必要がある。

 また、多少高目の価格でも食材の時季を考慮した季節ごと の独自メニューの設定や自家製のパン・パスタの提供等で他店と差別 化をはかり、顧 客に受け入れられる工夫が必要である。

(2)  従来以上のサービスの提供 消費者の低価格志向が一段と強まっているとはいえ、サービスの質、内容について の関心は、従来にも増して高くなっている。西洋料理店においては、フランス料理に 代表されるように高級な雰囲気を楽しむためのサービスの充実が欠かせない。客とし てもてなすこと、楽しい時間が演出できるよう工夫することすること等、従業員教育 をしっかり行う必要がある。
4.繁盛店の事例
(1) ヘルシーメニューで女性に人気
 

  A店では最近のヘルシー志向の高まりから、食材にオリーブオイル、新鮮な有機野 菜をふんだんに利用することによりヘルシー感を持たせ、かつ、見た目も美しい料理 を「新イタリア料理」として位置付け女性客を中心に好評を得ている。以前から利用 客の8割方は、女性客であったため、ターゲットを明確にした新メニューの創設が人 気となったもの。

 価格設定は、ランチタイム1,000円〜1,500円、ディナー タイム3,500円〜4,500円と比較的低価格である。また、昼2時〜4時には レディースタイムの設定、季節ごとにはグルメフェアを設け、旬の素材を中心とした 料理を提供することにより最近では、女性客のみでなく家族連れにも評判である。

(2) 自慢の自家製パスタで繁盛
 

  C店では自家製生パスタの特徴を生かし、さらに豊富な素材でスープやソースにも 一工夫凝らし繁盛している。太さ1.3ミリの生パスタは、独自の配合で粉をこね、 ていねいにパスタマシンにかけるといったこの店独特のもの。

 パスタメニューの価格 帯は1,500円〜2,500円、ディナーメニューは4,500円〜5,500円 と比較的高目だが、自家製パスタの味と、ランチタイムにはサラダバイキング方式を 取り入れ、利用者の満足度を充足させることにより、リピート客を増加させている。

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