飲食業/西洋料理店-2005年
1 概況
2005年
(1)
西洋料理店とは何か

 西洋料理店は、総務省の日本標準産業分類によると、「主として欧米諸国の料理を、その場所で飲食させる事業所をいう」と定義されている。ここで具体的に掲げている業態は、フランス料理店、ロシア料理店、イタリア料理店、メキシコ料理店などである。レストランと呼ぶにはこれらの欧米諸国の料理を提供する場所は、一般 にレストランと呼ばれるが、形態としてはホテル系のディナーレストラン、グリル、ビストロ、カフェテリア、洋食店などがある。実際には、一般 大衆に家族的な雰囲気で経営され、食べる方もいちいちどこの国籍の料理家などを問わず、日本人向けにアレンジされたメニューが定着し、気軽に食べられる「洋食屋」が多く存在している。なお、各種の料理を提供するファミリーレストランは、日本標準産業分類では「一般 食堂」の部に含まれ、西洋式大衆食堂に位置づけされており、西洋料理店とは区別 されている。
 西洋料理店はメニュー内容、中心価格帯など供給側の経営形態や、需要側である顧客の利用動機などにより「一般 西洋料理店」と「専門西洋料理店」に大別される。近年では、ハンバーグ、ビーフシチュウー、ステーキ、スパゲッテイなど単品専門型の専門西洋料理店が目立って多くなり、消費者の個食化に対応している。
(2)
特定料理から大衆料理に変化
  われわれの日常生活においては、西洋料理店は「洋食屋」と「専門西洋料理店」とに大別 されているとの認識が強いであろう。「洋食屋」とは洋食を出す定食屋であり、「専門西洋料理店」とはステーキなどに特化した単品専門店とフランス料理など特定国の料理に分かれる。
(3)
洋食事始めは明治時代、洋食普及の銀座「煉瓦亭」が多大の貢献
  もともと、洋食は明治時代に、西洋料理を食生活に取り入れる際に、日本人本来の主食である米飯に合う惣菜としてアレンジしたものが、はじまりといわれている。日本における洋食の歴史は、明治28年創業の東京・銀座の「煉瓦亭」に始まるという。煉瓦亭は、ビーフコートレットを応用したポークカツレツを日本で初めて考案した。このことは、現在のメニューにも書きこまれている。これが大当たりして、エビフライ、白身魚のフライ、カキフライなど、次々の揚げ物のメニューを開発したハヤシライスやオムライスも煉瓦亭で生まれたメニューといわれ、平成16年現在で111も経過している。作家で食通 の池波所太郎が通ったレストランとして知られている。現在でも午前11時過ぎから若い人を中心に行列が出来る店として知られている。
(4)
デパートの大衆食堂の「お子様ランチ」も普及に一役
  明治から大正にかけてとんかつ、コロッケ、カレーライス、チキンライス、オムライスなどの大衆洋食屋が全国に普及し、洋食は庶民の食事といて急速に広まって行った。洋食の普及に大きな役割を果 たしたのはデパートの大食堂の「お子様ランチ」であった。チキンライス、ハンバーグなどの洋食の定番メニューは子供たちの憧れの食事であった。今日でもデパートの大食堂の「お子様ランチは」子供にとっては定番の食事として人気が衰えていない。
(5)
戦後、本格的な専門西洋料理店の輸入で食生活の洋風化が急速に進む
  わが国に西洋風の本格的な専門西洋料理店が輸入されたのは主に戦後である。わが国の目覚しい経済成長により所得水準が向上、生活様式も洋風化の進捗により、食文化の改善が進み、グルメ志向が高揚の要因などが重なり、急速に本格的な専門西洋料理店が増えて行った。高級ホテルのダイニングレストランでは、高額なフランス料理をメインメニューに取り上げたが、バブル崩壊後、中華料理に変更するなど、路線変更を余儀なくされているホテルが少なくない。
 ただし、近年は、多種多様の外食産業の進出で、業体間の競争が激しくなるにつれ、西洋料理の需要が伸び悩んでいる傾向が、統計面 に現れている。1世帯当たりの洋食に対する年間支出額を「家計調査年報」(総務省)で見ると、平成13年以降、毎年減少している。
 また、西洋料理店の店舗数は、3年ごとに行う「事業所・企業統計調査」(総務省)で見ると、平成11年は1,652店増加したが、13年は1,116店減少、16年は1,511店減少と、減少幅が拡大している。そのうち、常用雇用者なしの事業所数は4,067店と全体に占める割合は14.1%と生活衛生関係営業の業種の中で少ないが、13年調査に比べ、わずかに31店のみしか減少していない。
2 食品衛生法で見る西洋料理店の法的規制
(1)
食品衛生法の目的
 飲食食品関係の業種については、営業施設の衛生水準を維持・向上させるため、食品衛生法が適用される。もちろん、西洋料理店は、食品衛生法の適用業種である。食品衛生法は、昭和22年12月施行であり、戦後いち早く、食品の安全性確保のための公衆衛生の見地から、清潔で衛生的に営業を行うために、必要な規制、その他の措置を講ずることを目的に策定された。また、飲食に起因する衛生上の衛生上の危害の発生を防止し、それによって国民の健康の保護を図ることも、その目的に含まれている。
(2)
営業許可
 西洋料理店を開業するのには、都道府県知事(保健所設置市または特別 区にあっては、市長または区長)に開業の届出をし、許可を得なければならない。その場合、営業施設は、都道府県が定めた施設基準に合致していなければならない。営業許可の有効期限は5年であり、営業を継続する場合は、営業許可の更新をしなければならない。また、都道府県知事が定める基準により、食品衛生責任者を置くことが義務付けられている。
(3)
提供する商品に対する規制
  食品保健行政の一貫として、食品、添加物、器具および容器包装とについて規制が設けられている。西洋料理店に関係のある規制については以下のとおりである
規格基準の設定
添加物、残留農薬、遺伝子組換え食品や器具、容器包装等については、規格基準に違反した食品等の販売などは禁止されている。
表示基準の設定
アレルギー食品材料、遺伝子組換え食品など、表示基準に違反した食品等の販売等が禁止されている。
添加物の指定
成分規格、保存基準、製造基準、使用基準に適応していない添加物の使用等の禁止
(4)
監視指導
  都道府県等の保健所には、食品衛生に関する専門知識を有する食品衛生監視員が配置されており営業施設に対し監視、指導を行っている。
3 西洋料理店の特性
(1)
欧米の特定国の料理や多種多様なメニュー、味を提供
  西洋料理店で提供する料理は大別すると2種類に分けられる。ひとつには外食料理として一般 化して家庭料理として普及しているハンバーグ、カレーライス、スパゲッテイなどを主に扱う店舗である。もう一つは、家庭で調理をするのに材料の確保、調理技術面 において困難を伴う料理を提供する本格的な西洋料理店である。具体的にはフランス、ドイツ、ロシアなどのレストランである。
(2)
独特の雰囲気を商品化、高級感で顧客の満足度を高揚
  本格的な西洋料理を扱うレストランでは、自国の風俗、生活様式などを取り入れた内外装で独自性を打ち出し、料理自体が醸し出す異国の感性、料理に使われる民族的な色彩 の濃い食器などで、独特の雰囲気を演出している。顧客のマナー重視、ウェイターやウェイトレスの最高のおもてなし(hospitality)、あるいは、ディナー時におけるピアノの生演奏など、高級感がホール全体に漲っている。単に主食として空腹感を満たすだけでなく、レストランの演出による雰囲気を楽しみながら料理を食べることに、顧客は満足感を味わう。つまり、レストラン側では顧客に「雰囲気、味、サービス」の三位 一体を提供しているといえる。
(3)
独自の料理は、調理師への依存度が高い
  西洋料理は国によって調理方法が異なり、もちろん材料、味付けなどが独特のものとなる。これは、国別 の調理師の技術の違いにより生み出されるもので、日本料理と同様に調理師への依存度が極めて大きい。顧客に提供する料理の品質、味、盛り付けなどは調理師の腕次第であり、調理師主導型になりがちである。
(4)
高い料理単価
  料理単価は他の外食料理と比較して、メニュー全般に高い。使用する素材が高級品のほか、高級感の雰囲気を醸し出すための設備投資負担、調理人への高給支払い、従業員研修費など、目に見えない経費を多く要し、これらが結果 的にはメニューの価格に反映されている。また、低単価よりは高単価にした方が、高級なレストランに見える傾向がある。顧客側にとってみれば、単価による錯覚である。
4 従業者規模別に見る事業所数など
(1)
拡大する事業所数の減少率
  表の「西洋料理店の事業所数の推移」を見ると、平成16年の西洋料理の事業所数は28,896店で、比較可能な生活衛生関係営業15業種の中で12位 である。13年に比べ1,511店減少(5.0%減)している。13年の11年比の3.5%減が16年には拡大している。
(2)
安定した推移の1〜4人規模の事業所数
  従業者規模別で見ると、1〜4人規模は12,002店で、全体の41.5%(13年41.5%)を占めている。13年に比べ176店減少(1.4%減)しているが、減少数は、13年が11年に比べ187店減少だったので大きな変動はない。
(3)
全体の減少は5人以上の大幅減少が原因〜4人規模は16年にわずかに減少
  5人以上を見ると16年は16,894人で全体の58.5%を占めている。増減状況を見ると、11年は729店増加したが、13年は1,303店減少、引き続き16年も1,335店と大幅に減少している。西洋料理店全体の1,511店の減少は、5人以上の減少が足を引いている。
 5人規模以上の事業所数のうち20〜29人規模2,301店(構成比8.0%)は、事業所数が11年以降、唯一増え続けている。ただし、3年ごとの調査では、11年138店増、13年59店増、16年24店増と増加幅は縮小している。
(4)
従業者数は大幅減少
  従業者数は290,657人で、13年調査に比べ32,013人減少(9.9%減)している。事業所数の減少率5.0%を上回る減少である。1事業所当たりの従業者数は10.1人(13年10.6人)であり、日本料理店の12.6人よりも少ない。

西洋料理店の事業所数の推移    (参考)一般飲食店全体
(単位:店、%) (単位:店、%)
調査年 従業者規模別 合計 従業者 合計
1〜4人 5人以上 1〜4人
平成8年 (35.4)
11,068
(64.6)
18,803
(100.0)
29,871
(65.7)
299,963
(100.0)
456,420
  11年 (38.0)
11,991
(62.0)
19,532
(100.0)
31,523
(65.1)
288,426
(100.0)
443,216
  13年 (40.0)
12,178
(60.0)
18,229
(100.0)
30,407
(62.7)
277,694
(100.0)
442,883
  16年 (41.5)
12,002
(58.5)
16,894
(100.0)
28,896
(61.9)
259,706
(100.0)
419,663
(注) ( )内は構成比である。
資料:総務省「事業所・企業統計調査」

 

5 西洋料理(外食)への支出状況
(1)
15年以降増加基調の西洋料理への支出
  「家計調査年報」(総務省)で、1世帯当たり1年間の洋食への支出状況を見ると、平成17年は15,900円で、外食の各品目の中で、日本料理の22,169円に次いで2番目に多い。前年に比べると597円増加(3.9%増)している。日本料理が12年以降、一進一退をたどっているのに比べ、15年以降の支出金額は増加基調にある。
 (注)家計調査年報では西洋料理は「洋食」、日本料理は「和食」の呼称になっている。
(2)
年齢構成別では、最高支出は30〜39歳
  年齢別に1世帯当たりの支出状況を見ると、最多支出は30〜39歳で24,011円である。次いで40〜49歳で22,368円である。大半の外食品目の中で、年齢別 支出において最小支出の29歳以下は、洋食支出では20,875で3位 に食い込んでいる。
 少ないのは70歳以上で6,520円、次いで60〜69歳11,205円、50〜59歳16,600円の順となっている。洋食の嗜好は若中年層と高年齢で完全に2分されている。最多支出の30〜39歳24,011円は、全世帯平均の1.5倍である。
(3)
豊かな食生活の川崎市、岐阜市
  都市別では1世帯当たりの支出状況を見ると、年間支出が3万円以上は、さいたま市37,600円、宮崎市31,163円、川崎市30,220円の3都市のみである。次いで、2万5千円以上の都市を見ると3都市で、横浜市29,390円、熊本市28,901円、岐阜市28,510円である。さいたま市37,600円は全国平均の2.4倍である。川崎市は洋食、和食とも上位 3位を占め、岐阜市は洋食6位、和食1位であり、また喫茶代(外食)は断トツの1位 であり、両都市とも食生活の水準が高いことを示唆している。
6 洋食アンケートで見る洋食店のイメージなど
(1)
"洋食"と聞いてイメージをする店(1つだけの回答)
  1位 「銀座や下町などに昔からある洋食店」60.2% 2位 「フレンチレストラン」、「イタリアレストラン」29.5%、3位 「ファミリーレストラン」8.2%であり、昔ながらの洋食屋が1位 である。これは、輸入された西洋料理が長い間に、世代や外国の食事という種類を超え、西洋料理を日本的にアレンジしてきたことが、大衆の食事として定着したものといる。
(2)
一番好きな"洋食"
  1位「オムライス」26.7%、2位「ハンバーグ」14%、3位 「エビフライ」9.3%、4位「ステーキ」9.2%、「グラタン」5.4%の順となっている。
 最近はカレーライスのチェーン店やオムライス専門店、インド料理店が増えているが、かつてはレストランの人気メニューであったハンバーグに代わり「オムライス」が人気をあつめている。ただし、昔のようなチキンライスを焼いた卵で包むだけのシンプルなオムレツは姿を消し、デミグラスソースをかけたものなど、付加価値をつけ、単価を底上げしているもが主流になっている。それが、人気を集める要因になっていると思われる。予想外は、日本人の誰もが好きなカレーライスが8位 で、構成比は微々たる数字であったことである。
 資料:「洋食特集」HP 2006.7.8
7 西洋料理店の経営は複雑
(1)
画一に論ぜられない西洋料理店、片や高級店、一方では庶民派の店舗
  西洋料理店の種類が多いことは、消費者側の西洋料理店利用の動機が、食事を一人で済ますにしても、あるいは食事を共にする相手があるにしても、多彩 な種類の店舗があるため、食べる時間帯、食べる場所までの所要時間、自分自身や相手の嗜好などにより、その時の状況によって選択の幅が広くならざるをえない。それだけに、食べる側も西洋料理店の選択に苦労する。
(2)
場所、時間帯、顧客層によって異なる西洋料理店の経営
  西洋料理店は立地、使用する需要側のその時のニーズ、ターゲットする所得階級、地域などによって、経営形態が異なってくる。
 例えば、フランスの三ツ星レストランの日本店とか、著名なシェフの経営するレストランは、西麻布など限定された場所で祝い事、接待用、高額所得者の食事等の顧客に支持されている。
 ビジネス街では、サラリーマンの昼食時間帯に人気のある「洋食屋」や「単品店」に行列が目に付く。東京・大手町のあるビルの地下のスパゲッテイ専門店は、客席わずか16席と少ないこともあるが、午前11時半から2時くらいまでは、ウイークディは常時サラリーマン主体に行列が出来ている。ボリュームがあり、味もよく、酢漬け刻みキャベツが付き、しかも値段が1コイン強であることが人気の的になっている。また、東京・神田でも立地は余りよくないものの、客席数は20程度の「洋食屋」に昼食時には長い行列が出来る。日替わりランチのほか、豊富なメニュー、生野菜の盛り付け、調理時間が短いことなどが人気を呼んでいる。浅草辺りの下町では昔から続いているその地域一帯で著名な「洋食屋」が、庶民階級に支持されている。
 地域でいえば、京都である。京都といえば、直ちに雅な京料理を思い出しがちであるが、実は隠れた洋食の街でもある。総務省の「家計調査年報」で1世帯あたり年間平均支出は、毎年全国平均を上回り、調査年によっては調査対象49都市の2位 に浮上するほどの洋食好みの街である。特に西洋料理店は「煮込み料理」が得意であると、巷間いわれている。京都駅から地下鉄で行ったビーフシチュウー専門店は、未だに煮込みに石炭ストーブを使っている。ビーフの煮込みには、石炭ストーブが最も適しているらしい。最上ともいえるビーフシチューであるだけに、値段は通 常のビーフシチューの約3倍である。
(3)
フランス料理に変り、急速に増えだしたイタリア料理店
  西洋料理店が急速に普及し出したのは、昭和30年以降であるが、所得水準の向上など者気的な環境の変化に伴って、西洋料理店は業態の変化が加速している。これまで最高級の料理として庶民にとって無縁だった高級なフランス料理店が、バブル崩壊後に衰退をたどりだしたら、変わってイタリア料理店が急速に増えるなど、国別 料理店の新陳代謝が激しくなっている。
 バブルが始まる直前の財テク時代は、フランス料理のフランス料理は憧れの的だった。これに飛びついたのが、若いカップルである。男性は父親が3〜4万円スーツで我慢しているのに、5万円台のデザイナーブランドの高級ジャケットを着用。クリスマスイブには、彼女には、当時流行のティフアニーのペンダントトップの「オープンハート」を買わされ、その後は高級フランス料理店で1人3万円のコース料理を食べ、赤プリに流れ込む。男性の負担は占めて15万円と新聞紙上に掲載され、当時話題を呼んだ。しかし、1人3万円のフランス料理などは、今の若者にとっては夢の夢である。これを経験した40歳台の人たちにとっては、いまとなってははかなく消えた「うたかた(泡沫)の夢」であったに違いない。
 しかし、イタリア料理店は、フルコース店があるが、どちらか言うとスパゲッテイ専門店が圧倒的に多い。本場イタリアではスパゲッテイは前菜の部類に入るが、日本ではメインディシュになっており、本場イタリアで食べる値段に比べ、べらぼうに高価格の店が多い。
(4)
消費者の利用動機は多彩
  西洋料理店の経営は、他の外食店に比べ消費者の利用動機が画一的でなく、その時の事情によって、全く異なるため一筋縄ではいかない。そこで、小規模層の多い「洋食店」について、消費者の利用動機を基準にして、顧客のニーズを見てみよう。
 まずこれを利用動機別に見ると、以下のようになる。
利用動機、食事をする相手で異なる顧客のニーズ

 

【利用動機】 【外食の相手】 【顧客のニーズ】
・空腹を満たしたい 昼食時、1人か少人数 低価格、量、迅速性
・くつろぎたい 友人と団欒 雰囲気、味、適度な価格
・会話を楽しみながらの食事 家族との団欒 雰囲気、味、サービス、価格
・おいしい食事 特定の人 雰囲気・味・サービスの三位一体
・雰囲気、味を楽しむ 接待、特定の間柄 雰囲気・味・サービスの三位一体

 

(5)
多彩な消費者の利用動機に合わせた経営
  次に、顧客の利用動機別に、必要とされる立地、設備状況などについて外観してみよう。
「空腹を満たしたい」とのニーズの顧客に主に対応した洋食店
  立地 ビジネス街、学生街、繁華街
設備 面積10坪程度、テーブル・椅子は質素で軽装備
経営陣 経営者=調理人、ウェイトレスは家族
経営の特徴 経営者個人の過去の経験した調理技術に依存。家族的な雰囲気
客層 固定的愛用者層主体で流れ客は少ない。単身者の夕食の場、営業エリアは限定的
メニュー・単価 なじみの深い揚げ物、ハンバーグ、ランチ定食など20品目。単価は600円前後
経営形態 生業的で儲けの大半は生活費に充当
「くつろぎたい」とのニーズの顧客に対応した経営
  立地 ビジネス街、繁華街
設備 店舗面積15〜30坪程度、設備は中装備
経営陣 調理人は経営者と雇用調理人、パートのウェイトレスを雇用
経営の特徴 外部の調理人が入り、経営者の俗人的な手法が後退。
客層 ビジネス街の単価を少し踏ん張ったランチ、あるいは夕食
メニュー 肉料理、魚料理、サラダなど中心に20〜50品目程度、単価は1,000円前後
経営形態 生業からの脱出が可能
「会話を楽しみながらの食事」のニーズの顧客に対応した経営
  立地 繁華街、郊外の住宅地
設備 店舗面積40坪程度、設備は重装備
経営陣 経営者、調理人は2人以上、ウェイトレス2名以上。経営者は経営・販売管理専業。経営者の調理部門、コスト管理が重要になる
経営の特徴 大手チェーン店な規模大店との競争力強化。機微大見氏との外部の調理人が入り、経営者の俗人的な手法が後退。
客層 ビジネス街の単価を少し踏ん張ったランチ、あるいは夕食
メニュー オードブル、スープ、肉料理、魚料理、サラダ、デザートなど50品目以上、コース料理も2種類の金額別 に提供
経営形態 利益追求で資本蓄積し再投資に活用、家族の満足度よりも顧客の満足度、従業員の満足度を追及
【トピックス】
・受動喫煙防止措置とは何か
  健康増進法が平成15年5月1日に施行され、それに伴い集客施設などの管理者は受動喫煙(他人のたばこの煙を吸和させられること)の防止が義務付けられている。健康増進法第25条の対象となる施設は「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他多数の者が利用する施設を管理するものは、これらを利用する者について、受動禁煙を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めている。この法律の施行により、ほとんどの生活衛生関係営業者は、受動喫煙防止措置を講ずる必要性が生じている。
・受動喫煙とは何か
  健康増進法によると、受動喫煙とは「室内またはこれに順ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義している。他人のたばこの煙は「副流煙」といわれ、喫煙者が吸う「主流煙」に比べ、有害物質が何倍もの濃度で含まれていることが報告されています。非喫煙者が副流煙を吸わされることは、さまざまな病気を発症させる一つの要因となっています。特に発ガン物質ジメチルニトロソアミンが副流煙には多量 に含まれている。そこで、非喫煙者を副流煙から守るため受動喫煙防止措置を講ずる必要があるわけである。
・受動喫煙防止措置の具体的方法
  受動喫煙防止措置には、大別して@施設内を全面 禁煙にする方法、A施設内を分煙する方法とがある。
@
全面禁煙
  受動喫煙防止対策の上では、最も望ましい方法である。灰皿の処理コスト、壁紙・エアコンのフィルターの汚れの清掃など費用が不要でコスト削減になる。また、宴会場の畳や床、テーブルクロスなどの焼け焦げの防止につながる。特に、妊婦や幼児、子供連れの顧客に安心感を与え、安心して飲食が出来るなどのメリットがある。
A
完全な分煙
  禁煙エリアにたばこの煙が流れないように、喫煙席(別の部屋)を設置する。特に禁煙エリアや非喫煙者の動線上、例えばトイレに行く通 路、バイキングやフリードリンクコーナー周辺やそこへ行く通路、レジ周辺、禁煙エリアとレジや出入り口との間の通 路などに、たばこの煙が漏れたり、流れたりしないように配慮する必要がある。
・不完全な分煙は違法
 分煙が次のような場合は違法となる。
@
禁煙エリアが指定されていても、禁煙エリアにたばこの煙が流れてくる場合(喫煙席周囲に間仕切りがないなどによる場合)
A
非喫煙者の動線上にたばこの煙が流れてくる場合
  特に注意しなければならないのは空気清浄機や分煙機が設置されていれば、受動喫煙防止対策が実施との誤解である。これらが設置されていても、たばこの煙の中の有害物質は、大半が素通 りしてしまうからである
・北海道庁の「空気もおいしいお店」の推進事業
  喫煙率が男女とも全国平均を上回る北海道では、平成14年度から飲食店に対する受動喫煙防止推進事業として「空気もおいしいお店」の推進事業を始めている。対象は政令都市である札幌市の俗北海道内にある飲食店が対象であり、認証店は平成18年6月末現在で421店に増えている。
  飲食店に対する同様の認証制度の取り組みは、全国の地方自治体でも行われ出しており、受動喫煙防止策を飲食店の経営者のみに任せるのではなく、行政の仕組みとして整備することで、小規模飲食店への浸透を促進することを狙いとしている。
  資料:国民生活金融公庫「生活衛生だより」No.135 2004年10月

 

資料

  1. 総務省「事業所・企業統計調査」
  2. 総務省「家計調査年報」
  3. 国民金融公庫調査部編「日本の中小飲食業(上)」中小リサーチセンター 1986年
  4. 全国生活衛生営業指導センター「成功事例調査」
  5. 金融財政事情「企業審査事典」
  6. 中小企業リサーチセンター「日本の飲食業」
  7. フリー百科辞典「ウイキディア」
  8. 「生活衛生関係営業ハンドブック2005」中央法規
  9. 「懐かしの洋食屋」HP 2006.7.29
  10. 「洋食特集」HP 2006.7.8
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