飲食業/西洋料理店-1998年
1 概況
1998年
(1) 多種類の料理と営業形態

 西洋料理店とは、総務庁の日本標準産業分類によると「主として西洋料理をその場所で飲食させる事業所をいう」となっている。営業形態別 には、ホテル系のディナ−レストラン、グリル、ビストロ、カフェテリア、レストラン、洋食店のほか、ファミリ−レストラン、ファストフ−ドレストラン、郊外型ドライブインレストラン、街道型ドライブインレストランなど消費者のニ−ズに応じた経営形態をもつレストランが定着している。このように、独特の雰囲気を売りものにしている高級でかつ格式の高い店から大衆店まで多段階になっている。また、料理内容は国別 にフランス、ロシア、イタリアなどの特定国料理店が存在して固有の料理を提供したり、また同じ国の料理であってもそれぞれが調理方法や味付けが異なるので、西洋料理には多種多様なメニュ−が存在する。一口に西洋料理といっても間口が広く、また奥行きも深い。
(2) 長期的に高い伸び率、盛り返す小規模店
  平成8年の全国の西洋料理店の事業所数は、29,871件で、平成3年と比べると5年間で3,459件増加、13.0%増(一般 飲食店3.8%減)と、他の飲食店が微増ないしは減少している中にあって、日本料理店の15.3%増に次いで高い伸び率を示している。昭和61年から平成3年までの5年間でも13.9%増とほぼ同じ伸び率で推移しているので、西洋料理店は長期的に増勢傾向にある。
 
事業所数の推移
(単位:件、%)
(参考) 一般飲食店全体

(単位:件、%)
調査年 従業者規模 合計
1〜4人 5人以上
昭和61年 (39.0)
9,032
(61.0)
14,154
(100.0)
23,186
平成3年 (35.4)
9,357
(4.6)
17,055
(100.0)
26,412
平成6年 (39.3)
10,612
(60.7)
16,401
(100.0)
27,013
平成8年 (37.1)
11,068
(62.9)
18,803
(100.0)
29,871
従業者
1〜4人
合計
(73.7)
370,515
(100.0)
503,037
(69.1)
327,643
(100.0)
474,389
(70.0)
326,819
(100.0)
466,835
(65.7)
299,963
(100.0)
456,420
資料: 総務庁「事業所統計調査」(平成6年は名簿整備調査)
(注) ( )内は構成比である。
  事業所数の推移を従業者規模別でみると、最近、小規模層の著しい増加が目立つ。平成8年は3年に比べて、従業者4人以下の事業所の伸び率は18.3%増と5人以上の10.2%増を上回り、その増加数1,711件は、全体の増加数の49.5%を占めるほどである。従業者4人以下の構成割合をみても、昭和61年の39.0%が平成3年には35.4%に落ち込んだものの、8年には37.1%に回復し、小規模店に盛り返しがみられる。これは「ビストロ」(フルコースレストランよりややカジュアルな業態で、フランス料理とワインとの組み合わせが主)やイタリア料理などの小規模店が消費者に支持されてきているためである。
(3) 不況のなか異常な伸び率の洋食支出

 総務庁「家計調査年報」によると、1世帯あたり洋食の支出金額は、平成元年以降伸び悩み傾向で推移していたが、平成9年は7,298円と前年に比べて20.9%増と大幅に伸び、過去にない支出水準となっている。年齢階層別 では、25〜34歳が平均を上回る10,500円程度の支出となっている。都市別 では1位が浦和市で28,240円で全国平均の3.9倍であり、2位 が水戸市で22,875円、3位が京都市で21,060円となっている。逆に支出の少ない順位 では、宮崎市が1,652円、次いで意外にも神戸市で2,673円と少なく、さらに長崎市が3,223円で続く。これらの都市の支出は全国平均の半分にも満たない。
2 最近の動向
(1) 低価格化

 フランス料理に代表される西洋料理は、従来「ハレ」の場にふさわしい高級料理、特別 な料理というイメージが主流であった。景気の拡大局面においては、個人消費の高まりを反映して高価格帯のメニューであっても、比較的利用者に受け入れ易いムードが広がっていたが、景気低迷が長引く現在においては、消費者の低価格志向が一段と強まっている。こうしたなかで、高級レストランとしてのイメージにとらわれず、より利用しやすい価格でのメニュー設定を行い、手軽に料理を楽しんでもらおうとする店が増えてきている。このような店では、従来の料理の質を維持したうえで、ランチタイムに値ごろ感を持たせた特別 メニューを盛り込んだり、ランチタイムのみならずディナータイムにも特別 メニューを設定して低価格をアピールし、利用者層の拡大をはかるとともに、顧客が何度でも気軽に来店できるよう配慮している。
(2) 日本風西洋料理の商品化

 1980年代のグルメブームには、正統派フランス・イタリア料理等がもてはやされ、料理自体が持つステータスが重視されていたが、消費者の舌が肥えている現状では、正統な、しかも一本調子の味では、消費者に飽きられてしまう。そこで日本でとれる新鮮な食材を使って、日本人の口になじむよう独自のアレンジを加えた日本風の西洋料理を商品化することにより、客離れを防ぐ工夫が見受けられる。日本の食材を利用することにより無理な食材選びをする必要はなく、むしろ原材料費を抑えることができ、また季節感を重視する日本の慣習から、旬の素材を使って個性ある日本風メニューを提供することができる。味付けについても従来の西洋料理におけるスパイスに限らず、しょう油やもろみを利用し味付けに変化を持たせ、利用者の飽きを防ぐ工夫をしている店もある。
(3) ヘルシー志向

 主に、素材の味を生かしたイタリア料理において、最近のヘルシー志向の高まりから、新鮮な野菜をたっぷり使った、消化のよい、やわらかい料理を提供する店が増えてきている。料理に利用されるオリーブオイルは、欧米では健康に良いとされており「地中海式ダイエット」として注目されている。また香りもよいことからハーブ系野菜と組み合わせることにより、味だけでなく香りも盛り込んだメニューを設定することにより、女性・若者を中心に好評を得ている。
3 経営上のポイント
(1) 値段に見合ったメニュー設定

 消費者は舌が肥え価格に厳しくなっているため、今後は、従来の料理で値ごろ感、割安感を出すために一人前の量 を多くしたり、量は少ないが単価を低く設定する等の工夫を加える必要がある。また、多少高めの価格でも食材の時季を考慮した季節ごとの独自メニューの設定や自家製のパン、パスタの提供等で他店と差別 化をはかり、顧客に受け入れられる工夫が必要である。また、ワインへの関心が高まっているだけに、ソムリエの資格をもった従業員を配置することも考慮すべきであろう。
(2) 従来以上のサービスの提供

 消費者の低価格志向が一段と強まっているとはいえ、サービスの質、内容についての関心は、従来にも増して高くなっている。西洋料理店においては、フランス料理に代表されるように高級な雰囲気を楽しむためのサービスの充実が欠かせない。客としてもてなすこと、また客が楽しい時間が演出できるような工夫をすることなどを、従業員に徹底して教育することが必要である。
4 繁盛店の事例
(1) ヘルシーメニューで女性に人気

 A店では最近のヘルシー志向の高まりから、食材にオリーブオイル、新鮮な有機野菜をふんだんに利用することによりヘルシー感を持たせ、かつ、見た目も美しい料理を「新イタリア料理」として位 置付け女性客を中心に好評を得ている。以前から利用客の8割方は、女性客であったため、ターゲットを明確にした新メニューの創設が人気の一因となっている。価格設定は、ランチタイム1,000〜1,500円、ディナータイム3,500〜4,500円と比較的低価格である。また、昼2時〜4時にはレディースタイムを設定、また季節ごとにグルメフェアを設け、旬の素材を中心とした料理を提供することにより、最近では女性客のみでなく家族連れにも評判である。
(2) 日本風フランス料理が好評

 B店は、日本風フランス料理を提供する店として人気がある。こだわりは、食材と味付けである。野菜類は、かぼちゃ、じゃがいも、にんじん、トマト、ほうれん草などの有機野菜を知り合いの業者を通 じて安く購入しており、魚介類も三崎港や築地から仲買人を通さずに直接仕入れているので新鮮である。味付けは、しょう油、みそを使うなど日本風にアレンジしており、また、フランス料理が箸で食べられるので、若者からお年寄りまで、幅広い年齢層にわたり好評である。
(3) 自慢の自家製パスタで繁盛

 C店では自家製生パスタの特徴を生かし、さらに豊富な素材でスープやソースにも一工夫凝らし繁盛している。太さ1.3ミリの生パスタは、独自の配合で粉をこね、ていねいにパスタマシンにかけるといったこの店独特のもの。パスタメニューの価格帯は1,500〜2,500円、ディナーメニューは4,500〜5,500円と比較的高めだが、自家製パスタの味と、ランチタイムにはサラダバイキング方式を取り入れ、利用者の満足度を充足させることにより、リピート客を増加させている。
    資料

    1. 総務庁「事業所統計調査」
    2. 総務庁「家計調査年報」
    3. (財)全国環境衛生営業指導センター「成功事例調査」
    4. 金融財政事情「企業審査事典」
    5. 中小企業リサ−チセンタ−「日本の飲食業」
    6. 経営情報出版社「業種別業界情報」’98年版
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