スナック・バー-1996年
1.概況
1996年
(1) 減少に転じた事業所数 〜引続き小規模が中心〜

スナック・バー」が主に含まれていると思われる「バー・キャバレー・ナイト クラブ」の平成6年4月現在の事業所数は、222,975件となっている。 時系

列的にみると、「ゆとり・豊かさ」の増大に伴い昭和56年から平成6年 の間に46.4%と大幅な増加となっているが、前回(平成3年)調査からは 2,485件(1.1%)の減少となっている。ちなみに、この減少率は、飲食 店全体の減少率(0.8%)を上回っている。また、「スナック・バー」が大 半を占めると思われる「深夜飲食店営業」のうち「深夜酒類提供飲食店」は、 平成6年末で274,266件(「警察白書」平成7年版)となっており、前 述の「バーキャバレー・ナイトクラブ」と同様の推移となっている。

次に、従業者規模別の事業所数を概観すると、平成6年現在で、従業者数「4 人以下」の層が82.8%を占め、「9人以下」までの層でみると96.6%に 達し、小規模の事業所がほとんどを占めている。
(2) 市場規模は縮小傾向 「レジャー白書」((財)余暇開発センター発行)によると、平成7年の市場規模 は推定で3兆4,672億円である。平成3年をピークに減少傾向にあり、約10年前の昭和62年並みの水準となっている。
バー・キャバレー・ナイトクラブの事業所数の推移
(単位:件,%) 
 
調査年
従業者規模別
合 計
1〜4人
5〜9人
10人以上
昭和56年
〈80.8〉
123,071
〈13.7〉
20,798
〈 5.5〉
8,437
〈100.0〉
152,306
昭和61年
〈83.7〉
159,000
〈12.7〉
24,137
〈 3.6〉
6,886
〈100.0〉
190,023
平成3年
〈80.5〉
181,595
〈15.1〉
34,096
〈 4.3〉
9,769
〈100.0〉
225,460
平成6年
〈82.8〉
184,598
〈13.8〉
30,674
〈 3.4〉
7,703
〈100.0〉
222,975
深夜酒類
提供飲食店

188,589

241,675

274,424

274,266
資料:総務庁「事業所統計調査」(平成6年は名簿整備調査)及び警察庁「警察白書」
(注) 〈 〉内は構成比である。
2.最近の動向
(1) 若者の「スナック」離れ
 

  スナック・バーは夜の社交場として長年世代を超えた支持をうけてきたが、近年、 カラオケボックスの急増、余暇の活用・レジャーの多様化、さらに、俗に言われる新 人類の登場による「会社重視」から「自分重視」への価値観の変化により、若者・青 年層で「スナック」離れが進む傾向にある。

 「レジャー白書96」によると、平成7年の「バー・スナック・パブ・飲み屋」へ の参加率(注)は41.6%、参加者の年間平均費用は、78,800円となっており いずれも平成4年以降減少(参加率▲2.2%、年間平均費用▲10.7千円)を続け ている。参加率を性別でみると、男性は減少しているが、女性は社会進出の進展もあ り横這いとなっている。ホステスサービス、カラオケ施設等だけに依存した経営を脱 皮し、顧客ニーズに合致した経営形態の変更や「スナック」の新たな魅力づくりに取 組んでいくことが必要となってきている。 (注)参加率=ある余暇活動を1年間に1回以上参加したと回答した人数 ×100÷回答総数

(2)

カラオケボックスの台頭
 

  「レジャー白書」でも平成2年から余暇活動の一部として「カラオケ」が把握され るようになったが、近年、「カラオケボックス」に対する社会的認知が進み、「スナ ック・バー」の経営に大きな脅威となってきている。


  平成7年現在の「カラオケボックス」の総数は、151000件(「カラオケビジ ネス誌」推計)と、ここ5年間で約3倍に増加している。「カラオケ」(「カラオケ ボックス」、飲食店・ホテル等のカラオケ施設の利用を含む)への参加率は、老若男 女を問わず広がりをみせており(男女とも20才台がトップで70%台、60才台で も男33.5%、女24.2%)、全体の参加率は55.4%(参加人口5,850 万人)と近年伸び率は横這いながら平成2年からは約10ポイント、1,200万人 の増加となっている。


 「カラオケ」への年間平均消費支出は18,500円で、価格競争の激化から近年 は減少傾向にあるが、市場規模は、1兆円あまり(このうち、カラオケボックスは約 6,500億円)に達している。なお「カラオケボックス」の飲食売上の割合を「カ ラオケビジネス」編集部のアンケート調査(レジャー産業資料96年3月)から見る と、売上に占める飲食売上の割合が30〜40%となっている店舗がもっとも多く、 41.2%を占めている。また、飲食売上の割合が40%以上の店舗も26.6%あ り、飲食の提供を重視している傾向がうかがわれる。

3.経営上のポイント
 バブル崩壊以降経営環境が急変するなかにあって、接客業の今日的ニーズを踏まえ つつより個性的な店づくりが求められている。

 特に顧客ニーズが変化する中にあり、原点である顧客第一主義に立ち戻り(a)新 たな顧客層の確保(b)顧客ニーズの変化を的確に捉えた価格・サービスの見直し、 さらに(c)従業員教育に力を注ぐ経営などが必要となってきている。

(1) 新たな顧客層の確保
 

  前述したように、「スナック・バー」がこれから生き残っていくためには、女性層 を中心とした新たな顧客の確保も重要であり、そのためには女性のニーズを的確に把 握していくことが必要である。

 「平成6年度環衛業に係る消費生活調査報告書」((財)東京都環境衛生営業指導 センター)によると、「どういう時に利用するのか」の質問に対し、「くつろぎたい (話す、歌う)とき」(62.3%)と答えたものが最も多く、次いで「飲みながら 食べたいとき」(35.6%)、「飲みたいとき」(21.0%)の順であった。ま た男女別に特徴的な項目をみると、女性は男性に比べて、「飲みたいとき」という動 機が少なくなっている(男性33.9%、女性15.5%)。「なじみの店」の有無 については、「有」と回答した割合(全体では34.1%)が、女性22.0%)は 男性(60.0%)の約3分の1に過ぎないという結果であった。さらに「なじみの 店」の条件としては、「明朗会計である」(51.5%)、「客層や全体の雰囲気がよ い」(45.8%)、「従業員の接客マナーがよい」(28.1%)などが上位 を占め たが、これを同様に男女別で見ると、女性客は男性客に比べて、「従業員の接客マナ ー」(男性24.1%、女性30.3%)や「雰囲気」(男性35.5%、女性50 .5%)にこだわりを持つものが多い点が特徴である。個人的に利用する場合の手頃 な予算については、「5,000円以下」と答えたものが男性61.6%に対し、女 性は73.4%と10ポイント以上多くなっている。

(2) 顧客ニーズの変化を的確にとらえた価格・サービスの提供
    バブル崩壊以降、社用族依存の経営から脱皮を図る店が多い。会社の接待客から中 年サラリーマンへの客層の転換を図るため、ボトルキープ制から飲み放題・時間制へ変更するなど平均的サラリーマンが簡単に気安く利用できる料金システムを導入し、 低料金・明朗会計でリピート顧客の開拓を図っているケースが見受けられる。また、 「ゆとりとくつろぎ」の空間創出に力を注ぎ、定期的な店舗の改装による清潔感の保 持、ゆったりとした客席と室内照明の色調の工夫による「安らぎの得られる店舗づく り」を通した顧客サービスの向上に努めることも大切な要素となってきている。

(3)

従業員教育の充実
    「スナック・バー」の経営は、ホステスの「質」いかんで売上が左右されると言わ れるように、良質な人材の確保が経営にとって大きなウエイトを占めている。 また、「成熟化」しつつある市場を考慮に入れると、人材の効率的活用によるサー ビスの提供に目を向ける必要もあり、とりわけ従業員教育は重要な要素となってきて いる。 具体的には、(a)学生バイトを中心に調理・接客両面の教育を行い少数精鋭で効 率的な接客サービスを行っていく(b)女性の特質を考慮した従業員教育の工夫(マ ンツーマンミーティング、よい点を誉めさりげなく悪い点のアドバイス、力量 に応じ たノルマの設定)など創意工夫をした取組みが求められている。
4.繁盛店の事例
(1) 珍酒・珍味で顧客ニーズに応える
    店周にビジネスホテルが増加し、A店は出張等の利用客が多くなった。 夫婦を中心にした小じんまりとした店であるが、スナックの定番化した飲食メニュ ーにこだわらず、地元のお酒やオーナーのバーテンダーとしてのキャリアを活かした 珍しいカクテルを提供し、チャームにも地元でとれる山海の珍味をおりまぜながら店 の第一印象を大切にした経営を行っている。 また、カラオケを置かず、静かに会話を楽しめる雰囲気の店舗としたことから、口 コミで女性のフリー客も増加傾向にあり、見知らぬ顧客同士の会話も弾むアットホー ムな店としてファンの根強い支持を受け発展を遂げている。
(2) 「頑固」を売り物にし経営の差別化を図る
    通常スナックは、定期改装・リニューアルという宿命を背負っているものだが、B 店の経営戦略には、常識の裏側をいく奇抜な発想がある。 店内の内装は18年間一度も変えず、顧客の郷愁を誘う店づくりにより他店との差 別化を図っている。顧客サービスも「ニコッと笑ってしっかりいただく」ではなく、 「カラオケ」をサービスの目玉商品にし、一点豪華の重点投資を行い、顧客自身が十 分に歌うことの楽しさを満喫できる店にするとともに、「歌わないお客は帰って下さ い。」をキャッチフレーズに顧客の印象に残る店づくりを心がけている。
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