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企業概要 |
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・ 立 地 :北九州市
・ 経営者 :女性
・ 従業者 :1名 |
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自作の校歌のカラオケで差別化、ロケ、編集、制作すべて一人で |
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スナックは、典型的な横並びの経営が多い業種である。提供する商品、サービスの内容により、他店との差別
化を図ることは至難の技である。それだけに、経営者自身が人生経験の中で培った趣味、特技、キャラクターを生かし、固定客づくりが要求される。この事例で取り上げる女性経営者は写
真撮影、ビデオ撮影に加え映像の編集で自作のカラオケ制作の高度な技術を持っている。しかし、それだけではスナック経営にほとんど役立たない。せめて、撮影した写
真を4つ切りか半切に引き伸ばし、店内に飾り、顧客との会話の材料にするのが席の山である。
ところが、この女性経営者の目の付け所が素晴らしい。カラオケ用に自分の映像制作技術を使い「校歌」のカラオケを自分自身で編集し、自店で顧客に提供していることである。自分が卒業した効果
ほど懐かしく、昔の学生時代の思い出を甦らせてくれるものはない。
まだある。懐メロ曲のレーザーカラオケの収集家でもある。自作の校歌のカラオケと懐メロ曲のラオケへの特化により、スナックにありがちな横並び経営から脱却し、これが、他店との差別
化に効果を発揮している。経営は「気力・体力・知力」が必要といわれるが、この事例は「知力」の重要性を教えてくれる。 |
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校歌のカラオケは女性経営者の手作り |
ア |
校歌作成の動機 |
校歌作成の動機は、開店した翌年、かれこれ10年前のことになるが、同窓会帰りの顧客が生き生きした表情で校歌を歌うのを見て、手作りの校歌のカラオケを作ることを思い立ち、技術的に専門化の世界に挑戦する決心をした。 |
イ |
趣味のビデオ撮影を活用 |
これをヒントに旅先でのビデオ撮影という趣味を生かして、校歌のカラオケ制作に乗り出した。もし、ビデオ撮影の趣味がなければ、「出身校の校歌はいくつになっても感動して歌うのだなー」程度で終わっていたかもしれない。 |
ウ |
独学でカラオケ制作の専門分野に挑戦、ノウハウ構築 |
カラオケ制作は、高度な技術を必要とする。また、校歌の歌詞に合わせた映像編集とメロディーとの調整など、豊かな感性が必要とされる。制作に時間もかかる。分厚い写
真集からの接写や現地ロケの映像などと、歌詞の流れにあったメロディーとの編集など複雑な作業工程が多いからだ。しかし、手作りの校歌のカラオケ制作に取り込んで10年のキャリアを積んでいる。いまでは、店の経営の合間に1局を1週間で完成してしまうまでに、制作技術が向上している。挑戦心と根強い忍耐心で「独自の技」、つまり、長い経験の中で、顧客の満足度を高め、また第3者が容易に真似出来ない独自のノウハウを築き上げている。 |
エ |
校歌のカラオケはすべて手作り、この店でなければ歌えない独自性発揮 |
校歌のカラオケは、すべて手作りであり、経営者のオリジナル作品である。素材は、顧客が持ち込む校歌のカセットテープ、卒業アルバム、スナップ写
真などである。場合によっては、ビデオカメラや三脚など、重い器材を背負って現地に撮影に出かける。収録した地元の風景の映像は、校歌の歌詞に合わせ、カラオケに取り組む。現地ロケは重労働で大変だが、カラオケの映像に"ふるさと"を盛り込むことで、顧客の感動は倍増する。顧客に少しでも喜んでもらいたいという気持ちの現れである。歌詞のテロップは高年者が見やすいように、文字は大きめのゴシックにしてある。自作だからこそ、高齢者への温かい思いやりが発揮できる。顧客にとっては「青春回帰」への誘いである。 |
オ |
自作の校歌のカラオケは、すでに100曲余り |
校歌の選定に無駄がない。道楽と言うが趣味の世界だけで終わるのでなく、顧客に楽しんでもらわなければ、苦労も水の泡である。まず、来店する顧客に合わせ地元優先に制作している。地元客のリクエストの頻度が高いからである。福岡県下の大学と高校のほか、地元の北九州市については、小中学校の校歌や、幼稚園歌までも作成してある。すでには廃校になってしまった高校の校歌もこの店では歌うことが出来る。卒業生にとっては、最高のプレゼントかもしれない。次いで、東京、大阪の大学卒業者や転勤者のこと考え、東京6大学、関西の主な大学の校歌のカラオケも作成してある。「カラオケ校歌の宝庫」である。校歌カラオケ・カセットは、現在、映像と音声に優れているDVDに切り替え中である。
カラオケ制作は、相応のコストがかかる。「わたしの道楽」、だからカラオケ代は無料と代金は一切とらない。キップのよさがさわやかで心地よい。 |
カ |
まだある「別世界」、懐メロ曲のレーザーカラオケの収集家 |
この店の売り物は、別にもう一つある。懐メロ曲のレーザーカラオケは「日本映画・心の歌」511曲を始め、1000曲を越す収集を行っていることである。「知力」はこの分野でもはっきされている。並みのカラオケではないという店作りへの執念が見え隠れする。
この分野でも、持ち前の行動力を発揮する。懐メロ愛好会の仲間や顧客から、古い全集を見た言う情報を入手すると、東京や神戸など、遠隔地の都市であっても足を運んで資料を収集し、著作権に抵触しない範囲内で編集して、新たな懐メロカラオケの追加に余念がない。売り物商品の特化により、当スナックで定期的に「なつめろ愛好会」が開かれ、同好の士が集まるようになり、平成16年秋から「童謡唱歌を唄う会」と「歌手別
特集」などがスタートしている。 |
資料:全国生活衛生営業指導センター「生衛ジャーナル」2004年4月号 |