(1) |
景気が回復しても再び繁盛時代がこない構造変化、新たな手を打つべき |
|
バブル崩壊以降、スナック需要の冷え込みによる同業者間との競争激化に加え、最近では居酒屋、カラオケボックスなどの異業態との競争も強まるなど、経営環境が急変している。このため、旧態依然とした経営から脱皮することが強く望まれる。ここ2〜3年、顧客数の減少から、休業や廃業に追い込まれる個別
事例が少なくなく、また新規開業もかつてのような勢いがみられない。特に産業構造の変化への対応が遅れ、地域の経済力が著しく後退している地方都市では、従来主力の顧客対象であった出先企業の従業員数が減少してきているので、スナック・バーへの影響が大きく、地域ぐるみで衰退を余儀なくされている事例が少なくない。
いまやスナック・バ−業界は構造的な変化に直面しており、景気が回復すれば顧客がまた戻ってくるという安直な見通
しや、「そのうち、なんとかなるだろう」という成り行き任せの考え方では、衰退から廃業に追い込まれざるをえない。業界の指導者はもちろん個別
の経営者においても、こぞって新しい方向性を視野に入れた対策を具体化すべき時代を迎えている。 |
(2) |
女性は「安心感」に傾斜 |
|
スナック・バ−の店舗は、どの店を見ても一枚ドア−で閉ざされ、窓ガラスもなく店舗内部が外部とまったく遮断されている密室形式であるため、なじみの店ならいざ知らず、知らない店には内部の雰囲気や料金などの不安が先立ち、気軽に入れないなどの見方が多い。
「スナック等のお店にどのような雰囲気を求めますか」のアンケ−トに対する回答(重複回答)をみると、次のようになっている。 |
|
|
男性 |
構成比 |
1位
|
手軽さ、気軽さ |
60% |
2位
|
明るい |
43% |
3位
|
落ち着いた雰囲気 |
26% |
4位
|
安心感 |
22% |
|
|
女性 |
構成比 |
1位
|
安心感 |
64% |
2位
|
手軽さ、気軽さ |
54% |
3位
|
明るい |
50% |
4位
|
おしゃれな雰囲気 |
27% |
|
(財)東京都環境衛生営業指導センター「環衛業に係わる消費生活調査報告書」平成11年度 |
|
|
男性、女性とも手軽に、かつ気軽に利用できる雰囲気の構成比は大差ないが、安心感は、女性は男性に比べ3倍弱もあり、女性だけでも安心して入れる雰囲気の店を強く求めている。近年、中高年女性の小グル−プによる行動が多くなっているだけに、女性専用の小部屋を設けるなどの対応策が必要視される。
|
(3) |
要望が多い低料金と明朗会計、おいしい料理も。急がれる対応策 |
|
「スナック」等のお店にどのようなサ−ビス・施設を望まれますか」の回答(重複回答)をみると、次のようになる。 |
|
|
全体 |
男性 |
女性 |
1位 低料金 |
68% |
70% |
66% |
2位 明朗会計 |
55% |
52% |
58% |
3位 おいしい料理 |
40% |
34% |
45% |
資料:(財)東京都環境衛生営業指導センター「環衛業に係わる消費生活調査報告書」平成11年度 |
|
|
3位までの順位は男女とも同じであり、特に1位「低料金」の要望は他の飲食店に比べて割高な状態では経営ができなくなるとの顧客からの警告であり、また2位
の明朗会計は"メニュ−のないのがスナック・バー"では、きちんとメニュ−を提示する大衆酒場に比べお客さんに安心感をもたれないことを物語っているといえよう。また、料理にしても、毎度おなじみの"乾き物"ばかりでは味気ない。このアンケ−トによる女性の回答の4位
は「料理だけでも楽しめる」、5位は「手作り料理」と料理への要望が強く、女性客の多い店では、経営者自身が自分の手による独自のこだわり料理の提供が生き残り策の一つとなる。
経営をめぐる環境は確実に変化しており、顧客ニーズに合致した特徴のある経営形態への変更や、スナック・バ−の新たな魅力づくりに取り組んでいくことが、生き残り策として極めて必要となってきている。
他の飲食店で内部が見える店舗形態の導入や、大衆飲食店ではメニュ−の価格表を明示し明朗会計に改善しているだけに、スナック・バ−の時代錯誤の経営が一層目に付くといえよう。今後生き残るためには、店舗形式をはじめ、経営全般
にわたる大改革を最優先すべき「厳冬の時代」にあることを、十二分に認識すべきである。
|
(4) |
多い要望、意見。改善はできるところから一つずつ実行を |
|
前記のアンケ−トに記入されたスナック利用者の要望、意見、不満をみると、料金、イメ−ジなどの雰囲気、メニュ−などの料理面
、応対・マナ−等のサ−ビス、カラオケ、衛生面などの設備等経営全般
にわたる要望、意見などが多く寄せられている。最近、進出が著しい大衆飲食チェ−ン店などに比べ、相当劣勢にあることがうかがわれ、飲食業界において競争力が後退していることが浮き彫りにされている。
とくに料金と料理に対して、次のような手厳しい指摘がなされているのが注目される。料金については「より安くして欲しい」「明朗会計を望む」「酒類の値段が高い」「店頭での価格がわかるようにして欲しい」など料金の基準が不明瞭の指摘が多い。また、料理面
では「おいしい料理を用意して欲しい」「オリジナル料理を用意して欲しい」「乾き物だけでなく、いろいろ揃えて欲しい」など、メニュ−に対して経営者が工夫の無さを指摘する声が多い。
特に、最近は新興勢力の新業態店がしのぎを削って猛烈な競争を展開しており、スナック・バ−は顧客獲得面
でこの競争の渦に巻き込まれているだけに、経営者がお客さんことを思い、いかに気分よく飲み、食べてもらうかの経営姿勢を強く打ち出すことが要求されている。
|
(5) |
従業員教育の充実 |
|
「スナック」の経営は、女性従業員の「質」いかんで売上が左右されるといわれているように、人当たりがよく話題が豊富で対話上手の人材の確保が経営にとって大きな影響力をもっている。
また、「成熟化」しつつある市場を考慮に入れると、人材の効率的活用によるサービスの提供に目を向ける必要もあり、とりわけ従業員教育は重要な要素となってきている。具体的には、(a)学生アルバイトを中心に調理・接客両面
の教育を行い少数精鋭で効率的な接客サービスを行っていく、(b)女性の特質を考慮した従業員教育の工夫を行う。たとえばマンツーマンによる指導の実施、よい点を誉め意欲をもたせる、さりげなく悪い点をアドバイスする、力量
に応じたノルマの設定など、創意工夫をした取り組みが求められている。
|