一般 公衆浴場業-1996年
1.概況
1996年
(1) 事業所数は減少一途 〜すすむ「銭湯離れ」〜
平成6年の全国の一般公衆浴場の事業所数は9, 193件で、平成3年と比べると、1, 036件、10. 1%と年々減少している。これは、住宅環境の改善による自家風呂の普及、風呂付きアパートの増加に伴って、利用者が減少したことによる営業不振から転廃業が進んだためである。また、利用者が減少したことにより、それをカバーするための入浴料金値上げが、利用者の減少に一層拍車をかけているといわれている。
一方、ヘルスセンター、サウナ風呂の施設数は、同期の比較でそれぞれ18.8%、0. 2%と増加が見られる。これは「体をきれいにする」、「温まる」といった生活習慣のために一般 公衆浴場を利用していた者が、「気分転換」、「リフレッシュ」といった付加価値をヘルスセンター、サウナ風呂に求めているためと考えられる。
(2) 家族労働を主体とした小規模店が中心

 事業所数を従業者規模別でみると、従業者4人以下の事業所が全体の8割以上を占め、家族労働中心の小零細企業が主である。

事業所数の推移  (参考)ヘルスセンター、
    サウナ風呂の施設数
(単位:件,%)
(単位:件)
調査年
従業者規模別
合 計
1〜4人
5人以上
昭和61年

〈83.4〉
10,335

〈16.6〉
2,056
〈100.0〉
12,391
平成3年
〈81.7〉
8,355
〈18.3〉
1,874
〈100.0〉
10,229
平成6年
〈83.2 〉
7,644
〈16.8〉
1,549
〈100.0〉
9,193
ヘルス
センター
サウナ
風呂

862

2.701

1.246

2.942

1.480

2.947
資料:総務庁「事業所統計調査」(平成6年は名簿整備調査)
ヘルスセンター、サウナ風呂…厚生省「衛生行政業務報告」
(注) 〈 〉内は構成比である。
2.最近の動向
(1) 自家風呂保有者をひきつける銭湯づくり
   総務庁「住宅統計調査報告」によると、住宅総数に占める浴室保有住宅の割合は、  平成5年度で93. 5%と、ほとんどの住宅が浴室を備えているなかで、自家風呂を持たない人々に対して入浴を提供するだけでなく、自家風呂保有者に積極的に利用した銭湯づくりが注目されている。いままでは、「体をきれいにする」、「温まる」などが一般 公衆浴場を利用する主な動機であったが、最近では「疲れをとる」、「くつ  ろぐ」といった「リラクゼーション」の観点による動機も大きなウェートを占めるようになっており、これらを念頭においた経営が自家風呂保有者を引き付けるうえで重要となっている。泡風呂やハーブ湯、薬湯といった多機能的な浴槽を用意して利用者を楽しませたり、個人のプライバシー保護を考慮し、入り口を番台方式からホテルのフロント方式にしたり、BGMを流して明るい雰囲気づくりをするなどの試みが進んでいる。
(2) 高齢者への配慮
   高齢者世帯の増加により、今後一層の利用が見込まれる高齢者が安全かつ容易に入浴できるよう、段差の解消のためのスロ−プの設置、浴槽、トイレ等への手すりの設置、滑りにくい床への改良等、設備改善が見られる。
(3) コミュニティ施設としての公衆浴場
   一般公衆浴場は、ただ入浴するだけの施設ではなく、地域住民相互の対話の場であるといわれている。そのため、浴場施設内に集会場、休憩室をもうけ、ふれあい の場、情報交換の場として提供し、利用者の増加を図っている。
3.経営上のポイント
(1) 清潔第一
   地域住民の公衆衛生をになう施設として、「清潔さ」はもっとも重要視すべき点   である。全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会が行った一般公衆浴場未利用者に対するアンケートによると、一般 公衆浴場へ行かない理由として「お湯の清潔さに不安」という回答が25%と第1位 であった。未利用者には「家庭風呂の方が清潔で安全」という考えが根強く、こうした人々に利用してもらうには、常に衛生面 への配慮を行うとともに、「清潔さ」をアピールするための説明書を作成したり、照明を工夫し雰囲気を明るくしたりと努力が必要である。
(2) 広告・宣伝活動への取り組み
   利用者のニーズに応える設備の拡充と並んで、広告・宣伝活動により自家風呂保有者をターゲットとした利用者の開拓が重要である。営業時間や菖蒲湯、柚子湯等のサービス内容についてチラシ、パンフレットを作成したり、近隣の同業者と協力しあい利用者向け浴場マップ(「東京銭湯マップ '94」)や情報誌の作成、タウン紙への掲載、また、マスメディアの活用(テレビやラジオで番組を特集)等、創意工夫した広告宣伝を行い需要の拡大に努める必要がある。
(3) 駐車場の確保
   最近では、自動車の保有率が増え、ちょっと離れたスーパーへも車でといった傾向が見られるように、車での利用客のため、駐車場の確保が必要である。このことは、周辺客を確保するのみならず、商圏を広げるためにも重要なことであり、自家風呂所有者を引き寄せるためには、必要不可欠である。ただし、敷地に余裕がない浴場が多く、対応が容易に進まないケースが多い。
4.繁盛店の事例
(1) 近代的な設備で豪華な雰囲気
    A店では、老朽化した従来の店舗を取壊し300坪の大型店舗を建築。その中に浴場、軽食コーナー、ゲームコーナー、子供の遊び場、休憩室を設置、全体的に空間部分が大きく豪華な雰囲気が利用者の増加につながっている。浴室には大・中・小の浴槽や、マッサージバス、うたせ風呂、すわり風呂、寝風呂のほか、サウナも備えており、家族連れに好評である。また、料金の支払には、プリペイドカードを導入し利用者の利便性を図っている。
(2) チラシや看板広告でPR
   B店は、商店街の電柱に看板広告をするとともに、月1回は周辺部にチラシを入れ薬湯の種類やサービスデーの周知を行い、利用者の確保に成功している。入口はフロント方式で全体的に明るい雰囲気の造りになっており、清潔さが感じられる。目玉 は休憩室と変わり湯である。休憩室は、地域住民のコミュニケーションの場となっており、マッサージ機3台を設置、平日は常連の老人たちで、週末は、家族連れでにぎわっている。変わり湯は、菖蒲湯、柚子湯等入浴剤では味わえない、本物の変わり湯として好評である。
【業界豆知識】

 ●スーパー銭湯

 スーパー銭湯とは、規模が大きく、広い駐車場とロビーを持ち、露天風呂、ジェットバス、薬草湯等10種類以上の浴槽、サウナ、と健康ランド並みの設備をそなえた浴場施設である。料金は、愛知県のある施設の場合、平日で大人350円(休日400円)、県内の銭湯(340円)とあまり変わらず、週末ともなると家族連れ、若い女性のグループで駐車場は満車状態が続く。平成2年に愛知県のボウリング場経営者によってオープンされたものが元祖といわれており、最近2〜3年でサウナ業からの模様替えをはじめ、パチンコ店や繊維会社といった異業種からの新規参入が相次ぎ、早くも過当競争が指摘されるほどである。

 公衆浴場として許可を受けているものは、物価統制令の適用を受ける「一般 公衆浴場(銭湯)」と健康ランド、サウナ風呂などの「その他の公衆浴場」に区分されている。スーパー銭湯は、そのうち「その他の公衆浴場」に属する。環衛公庫の貸付対象者は、物価統制令の適用を受ける「一般 公衆浴場業」と、都道府県環境衛生営業指導センターから意見書の交付を受けた「サウナ営業」を営む者に限られるため、スーパー銭湯は、現在のところ貸付の対象とはならない。

 

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