ここで取り上げるのは一般公衆浴場のみとする。実際には、許可対象の公衆浴場業は、「一般
公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に大別される。地域に密着し、国民大衆の衛生面
の見地から地元住民に貢献しているのは、通称“銭湯”とか“ふろ屋”あるいは“ゆ屋”と呼ばれている一般
公衆浴場である。「その他の公衆浴場」には、健康ランド、サウナなどが含まれる。
一般公衆浴場業の現況をみると、経営環境は以下に示すように一段と厳しさを増していることが指摘できる。 |
(1) |
歯止めがかからない入浴者数の減少 |
|
まず、固定客の減少である。持ち家住宅の普及で自家風呂が増加、スーパー銭湯、健康ランドなど大型施設をもつ浴場など郊外型大型店の増加や、第三セクター方式による高齢者向け入浴施設の増加などにより、入浴客数の減少に歯止めがからない。 |
(2) |
増加する収益悪化の業者 |
|
次に、収益悪化業者の増加である。入浴料金は都道府県知事の指定で上限が定められ、業者が好き勝手にその上限を超えて料金設定をすることはできない。半面
、重油の暴騰、人件費負担の増加などで経費が年々増え、収益悪化の業者が増加している。多くの都道府県では毎年入浴料金の改定を行い、収益悪化を補っているのが現状である。 |
(3) |
重油高騰が経営難に追い打ち |
|
特に、重油高騰は新たな問題の噴出である。平成17年以降、原油高騰が続き一般
公衆浴場が使用する重油価格の上昇が続き、採算悪化に悩んでいる。製造業などでは、原油高騰分は、遅ればせながら販売価格に転嫁しているケースが多く見られるが、一般
公衆浴場の料金改定の仕組みからみて、ただちに入浴料金価格への自己裁量
的な転嫁は不可能である。また、自家風呂のない住民にとっては、銭湯は「生活必需品」であり、都道府県では大幅な値上げが困難であり、多少の値上げ、補助金などでは焼け石に水の状態である。 |
(4) |
1日1軒が廃業、危機感が募る銭湯経営 |
|
4番目は、廃業の増加である。経営難に加え重油高騰が追い打ちをかけているほか、長時間、過重労働などから後継者不足が加速しており、廃業が増え一般
公衆浴場数は年々減少の一途をたどっている。ちなみに、一般公衆浴場数の最も古い統計が現存する昭和52年16,385軒以降を見ると趨勢的に減少しており、平成16年度は6,629軒で、27年間で9,756件減少(減少率41.6%)と業者数は大幅に減少している。1年間平均では361件も減少、毎日1軒相当が廃業している勘定になる。(厚生労働主調べ)
常用雇用者がいない公衆浴場の事業所数(総務省調べ)は、平成16年1,575軒で他の生活衛生関係営業の業種に比べ少ない。ただし、13年に比べ439軒の減少で、減少率は21.4%と高い。 |
基本的な法律は昭和23年7月施行の公衆浴場法である。このほかに入浴料金を統制する物価統制令(昭和21年3月施行)がある。さらに、公衆浴場の確保のための特別
措置に関する法律(昭和56年6月施行)がある。また、都道府県条例に基づく店舗の配置規制もあるなど、公衆浴場に関する法規制は、他の生活衛生関連の業種に比べ多い。
|
☆1「公衆浴場法」で見る公衆浴場業の仕組み |
(1)
|
公衆浴場の定義 |
|
公衆浴場法の適用を受ける公衆浴場の定義は、「温湯、潮湯または温泉を使用して、公衆を入浴させる施設」なっている。転勤族や単身赴任者に人気がある青森市内や鹿児島市内の温泉使用の銭湯も、公衆浴場に含まれる。なお、遊泳プールにふた視する採暖室、採暖槽は公衆浴場に該当しない。 |
(2)
|
公衆浴場法が適用される公衆浴場 |
|
許可対象の公衆浴場業は「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に区分される。 |
ア
|
一般公衆浴場 |
|
一般公衆浴場とは、地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設で、物価統制令によって入浴料金が統制されている通
称銭湯や、老人福祉センター等の浴場がある。 |
イ
|
その他の公衆浴場 |
|
その他の公衆浴場には、次のようなものがある。
保養・休養を目的――ヘルスセンター、健康ランド
スポーツ施設に併設――ゴルフ場、アスレチックジム
福利厚生施設の一貫――工場などに設けられた浴場
健康・美容増進目的――サウナ、エステティックサロン
介護・介助目的――移動入浴車(浴槽固定)、介助浴槽(ディ・サービス用は除く) |
(3)
|
公衆浴場業の許可対象としない浴場 |
ア
|
他法令に基づき設置され、衛生措置の講じられているものは、公衆浴場法の適用外である。 |
@
|
労働安全衛生法により作業場に設けられた浴場 |
A
|
労働基準法による事業付属の寄宿舎の浴場 |
B
|
旅館業法の適用を受ける宿泊施設の浴場 |
イ
|
専ら他法令、条例等に基づき運営され、衛生措置の講じられている施設は公衆浴場法の適用外である。 |
@
|
ディ・ケア施設――老人保健法に基づく措置にかかる事業のみを行う施設に設けられた浴場は、医療行為とみなす |
A
|
介助サービス施設――国や自治体によって寝たきり老人等を対象に入浴介助を伴った入浴サービスに使用される浴場 |
(4)
|
営業の許可 |
ア
|
業として公衆浴場を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市または特別
区にあっては、市長または区長)の許可を受ける必要がある。 |
イ
|
公衆浴場の許可は、都道府県の条例で定める構造設備基準、適正配置基準に従っていなければならない。 |
ウ
|
公衆浴場の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、保温、清潔等の衛生・風紀基準に従っていなければならない。 |
(5)
|
伝染性の疾病にかかっている者に対する入浴拒否 |
|
伝染性の疾病にかかっている者と認められる者に対しては、入浴を拒否しなくてはならない。 |
(6)
|
環境衛生監視委員 |
|
公衆浴場が衛生基準に従って運営されているかどうか、都道府県知事(保健所設置市または特別
区にあっては、市長または区長)は環境衛生監視委員から報告を求め、立ち入り検査をすることができる。この業務は環境衛生監視委員が行う。 |
(7)
|
許可取り消しまたは停止 |
|
都道府県知事(保健所設置市または特別区にあっては、市長または区長)は、都道府県の条例で定める構造設備基準に反するときは、許可の取り消しまたは営業の停止を命ずることができる。この場合、公開の聴聞会を開かなくてはならない。 |
☆2一般公衆浴場の入浴料金は「物価統制令」により統制されている |
公衆浴場の入浴料金は物価統制令により、その上限が規制されている。物価統制令とは昭和21年3月施行された法律で、目的は第2次世界大戦後の物価高騰に対して、物価の安定を図り、混乱していた国民生活の安定を図ることにあった。現在、この法律が適用されているのは、国民大衆にとって日常生活における必需品であるという視点から、一般
公衆浴場のみとなっている。
この法律に基づいて、都道府県知事は入浴料金の上限を「統制額」として指定。上限は、知事が料金改定についてと県の生活適正審議会に諮問し、その答申を受けて改定される。このため、料金の上限、改定時期については都道府県により異なっている。 |
☆3「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」 |
物価統制令の適用を受ける公衆浴場(銭湯)について、その減少傾向に歯止めをかけるため、国や自治体が必要な措置をとることを定めた法律である。施行は昭和56年6月である。
この法律の目的は、公衆浴場が住民の日常生活において欠くことができない施設であるにもかかわらず、近年持ち家住宅の増加で、公衆浴場が著しく減少しつつある状況を重視し、特別
措置を講ずることにより、住民の利用機会の増進を図ることにある。具体的には、国民生活金融公庫など政府系金融機関の特別
融資、国または地方公共団体による助成など、必要な措置を講ずるよう配慮することを盛り込んでいる。 |
「生活衛生関係営業経営実態調査」(構成労働省 平成14年調査)により、公衆浴場業の特性を見ると、次のようになっている。 |
・ |
創業は昭和元年から49年が81.3%で、次いで大正期以前が11.3%に対して、平成になってからの創業は1.9%となっている。 |
・ |
経営者の年齢は60歳代が41.8%で、高齢化が進んでいる。50歳代の経営者で「後継者がいる」との回答は43.7%である。 |
・ |
1日当たりに平均入浴者数は127.4人で、内訳は大人114.4人、中人7.2人、子供5.8人となっている。 |
・ |
福祉入浴援助事業を行っている公衆浴場は13.2%、今後行う予定がある公衆浴場は95%となっている。 |
・ |
高齢者等に配慮した設備がある公衆浴場は45.0%で約過半を占めている。設備内容は、「行動補助設備(手すり、シャワーチェア)等」が39.8%、「転等防止設備(滑り止めマット)」が9.5%となっている。 |
・ |
経営者が今後の方針として考えているのは、「施設・設備の改装」45.6%、「入浴券サービスデーの導入」24.2%、「付帯設備の充実」が21.0%となっている。 |
・ |
経営上の問題点は、「利用者の減少が93.5%と圧倒的に多く、次いで「設備の老朽化」が55.3%となっている。(複数回答) |
・ |
当期純利益の動向の主な原因は「客数の減少」が79.7%で最も多く、「スーパー銭湯の進出」が7.4%である。 |
(1)
|
従業者規模別事業所数等の動向 |
|
平成16年公衆浴場の事業所数〈総務省調べ〉は6,113軒で前回調査の13年に比べ870軒減少している。減少率は12.0%減と、13年対11年の6.9%減に比べ2倍近い減少率となっている。なお、公衆浴場の事業所数は、比較可能な生活衛生関係の15業種の中で14位
である。 |
(2)
|
大型銭湯は、一転減少で変化の兆し |
|
従業者規模別に見ると、1〜4人規模は4,525軒と13年に比べ617件減少(減少率12.0%)となっている。5人以上規模は1,588軒で(減少率13.7%)である。減少数は253軒で、13年が11年に比べ192軒増加(増加率11.6%)したのに対し様変わりしている。これは20人以上の規模が13年対11年で80軒増えたのに対し、16年は13年に比べ46軒減少したためである。大規模公衆浴場業に変化の兆しがうかがわれる。なお、9人以下の事業所数は5,603軒で全体の91.7%を占め、13年に比べ12.5%減している。 |
(3)
|
従業者数も大幅に減少、大規模公衆浴場業の減少を反映 |
|
従業者数は、29,122人で13年34,773人に比べ5,661人減少(減少率16.3%)と大幅に減少している。これは13年が11年に比べ大規模公衆浴場業の増加を反映して6.0%増となった半面
、16年には大規模公衆浴場が減少したことの反映である。1事業所当たりの従業者数は4.8人(13年5.0人)となっており、小零細性が強い。 |
(4)
|
個人企業割合が3分の2、減少が目立つ個人企業 |
|
平成16年の法・個人別事業所数、個人が3,764軒(構成比61.6%)、法人は2,349軒(同38.4%)と、個人が3分の2を占めている。事業所数は、11年に比べ個人が15.5%減、法人は7.0%減と、個人の減少が際立っている。 |
一般公衆浴場業の事業所数の推移 |
|
(参考)ヘルスセンター、サウナ風呂の施設数 |
(単位:軒、%) |
(単位:軒) |
調査年 |
従業者規模別
|
合計 |
ヘルスセンター |
サウナ風呂 |
1〜4人 |
5人以上 |
平成8年 |
(79.2)
6,596 |
(20.8)
1,733 |
(100.0)
8,329 |
(111.7)
1,653 |
(99.1)
2,920 |
11年 |
(78.0)
5,850 |
(22.0)
1,649 |
(100.0)
7,499 |
(121.6)
2,010 |
(88.5)
2,583 |
13年 |
(73.6)
5,142 |
(26.4)
1,841 |
(100.0)
6,983 |
(103.8)
2,086 |
(91.4)
2,362 |
16年 |
(74.0)
4,525 |
(26.0)
1,588 |
(100.0)
6,113 |
(109.6)
2,287 |
(91.8)
2,169 |
注 ( )内は構成比である。 |
|
資料1:総務省「事業所・企業統計調査」
2:ヘルスセンター、サウナ風呂は、厚生省労働省「衛生行政報告例」による。 |
(1)
|
「家計調査年報」(総務省)により、1世帯当たり年間の入浴への支出金額をみると、平成14年は681円で前年に比べ11.4%減となっている。また、利用回数は2.0回で前年の2.4回を若干下回っている。ただし、入浴料金は331円で前年に比べ1.9%上昇している。
入浴料の支出金額は、平成元年には1,712円であったものが、その後傾向的に減少、一方、この間の入浴料金は上下変動があるものの、すう勢として上昇をたどっている。これは、入浴料金が「物価統制令」の対象となっており、各都道府県知事が定めることになっているため、利用客の減少、人件費の上昇などにより毎年のように入浴料金の改定が行われているためである。
入浴料金は、制度上の下支えにより毎年底上げされるものの、問題は入浴回数の減少である。入浴回数を長期にわたり5年ごとにみると、昭和55年27回、60年15回、平成2年7回、7年4回、14年2回と年々減少しており、昭和55年の27回は現状から見ると隔世の感がある。
この変化は、持ち家住宅の増加による自家風呂保有率の上昇、風呂付き賃貸住宅の増加などで自家風呂の普及による需要減退であり、一般
公衆浴場業は住宅分野の構造変化の影響をもろに被っている。したがって、景気が回復から上昇に向かえば利用回数も増加するという性質のものではないだけに、入浴回数の減退は深刻である。 |
(2)
|
同調査により世帯主の年齢階級別の入浴料をみると、最多支出は70歳以上で、年間支出は1,241円であり、次は60〜69歳で1,000円と世帯の年齢階級が若くなるにつれ支出は減少している。最多支出の70歳以上は、全世帯平均の1.8倍であり、60〜69歳は1.5倍であることから、銭湯のフアンは中高年、高齢者層であるといえよう。 |
(3)
|
同じ調査で都市別の支出状況をみると、最多支出は金沢市4,852円、次は大阪市4,044円、青森市2,870円となっている。少ないのは那覇市、静岡市、仙台市で支出は微々たるものである。最多支出の金沢市は、全国平均の7.1倍にも及ぶ。総じて、入浴料支出は都市別
に大きくばらついている。 |
(1)
|
進む業界の構造変化 |
|
公衆浴場への新規参入は、新業態のスーパー銭湯の参入があるものの、既存型の参入はほとんどなく新陳代謝が乏しくなっている。一方、廃業率が高いペースで推移してきており、業界の構造変化が進んでいる。廃業率が高いのは、まず住宅環境の改善による自家風呂の普及が指摘できよう。総務省の調査によると、平成15年(速報値)によると全国の住宅総数に占める「浴室あり」の住宅数割合は95.7%で、5年93.5%に比べ増えている。風呂付きアパートの増加に伴って、利用者が減少したことによる営業不振、あるいは相続税等の税制面
の理由などにより転廃業が進んだためである。また、先の外部条件に加え、長時間労働という過酷な労働条件のため後継者難から経営者の高齢化が進んだことや、施設の老朽化、人手不足などの内部の問題も廃業を加速させる要因となっている。 |
(2)
|
自家風呂の保有者を引き付ける銭湯づくり |
|
自家風呂保有率の増加、風呂付き賃貸住宅が増加しているなかで、自家風呂保有者を積極的に引き付ける経営方針を打ち出した銭湯づくりが注目されている。いままでは「体をきれいにする」、「温まる」などが一般
公衆浴場を利用する主な動機であったが、最近では「疲れをとる」「くつろぐ」といった「リラクゼーション」の観点による動機も大きなウェイトを占めるようになってきている。これらを念頭においた経営が自家風呂保有者を引き付けるうえで重要な要素となっている。
具体的には、泡風呂やハーブ湯、薬湯といった多機能的な浴槽を用意して利用を楽しませたり、個人のプライバシー保護を考慮し、入り口を番台方式からホテルのフロント方式にしたり、BGMを流して明るい雰囲気づくりをするなどの試みで、入浴回数の回復に向け努力している。
また、最近では、都内にユニークさを売り物にした個性的な銭湯が、地域で存在感を示している。ラウンジにパソコンを設けたり、銭湯の3階にある専用のレッスンルームでプロ歌手のカラオケ指導が受けられる銭湯などが登場している。 |
(3)
|
高齢者、障害者への福祉入浴援助 |
|
高齢者世帯、障害者が安全かつ容易に入浴できるよう、段差の解消のためのスロープの設置、浴槽、トイレ等への手すりの設置、滑りにくい床への改良等バリアフリーを推進する銭湯が増えてきている。このような一定条件に伴う改造を加え、さらに入浴介助等を伴う入浴事業は、福祉入浴援助事業と呼ばれる。この事業を行う一般
公衆浴場は、平成10年4月より固定資産税の軽減措置の対象に認定されている。 |
(4)
|
コミュニティ施設としての公衆浴場 |
|
一般公衆浴場は、ただ入浴するだけの施設ではなく、地域住民相互の対話の場であるといわれている。そのため、浴場施設内に集会場、休憩室を設け、開放的なコミュニティの場として提供し、周辺の住民のふれあいの場、情報交換の場として、利用者の増加を図っている一般
公衆浴場もある。 |
平成15年度消費者モニター等事業調査報告書(東京都生活衛生営業指導センター)により消費者の利用状況などを見てみよう。 |
|
ア
|
公衆浴場の利用状況「まったく利用したことがない」56.0%、「週に1回程度」18.5%、「ほぼ毎日」6.5%で、過半数が利用した経験がない。 |
|
イ
|
公衆浴場への交通手段 |
|
|
「徒歩」62.8%、「自転車」18.9%、「自家用車」13.2%で、徒歩が圧倒的に多い。 |
(1)
|
公衆浴場までの所要時間 |
|
「5分未満」40.2%、「5分以上10分未満」23.1%、「10分以上15分未満」19.4%であり、先の「徒歩」62.8%と照らし合わせてみると、半径500〜1,000メートル以内の住民が主力客であることがうかがわれる。 |
(2)
|
公衆浴場の料金が都道府県別に決められている事の認知 |
|
「知っている」44.5%、「知らなかった」50.5%であり、予想外に知っている人が多い。 |
(3)
|
公衆浴場を利用する際の意識 |
|
「リラックスできる」59.3%、「広々としている」58.3%、「疲労回復ができる」56.2%、「清潔感がある」47.9%、「いろいろな浴槽がある」37.0%、「自宅や職場などから近い」32.9%である。公衆浴場に行くのは自宅や職場などから近いという利便性追求よりも、公衆浴場が持っている質的な面
に満足度を求めていることが明らかにされている。 |
(4)
|
公衆浴場に望むサービス |
|
「マッサージ浴槽」35.2%、「健康器具」34.7%、「ジェット風呂」34.0%、「サウナ」33.6%、「露天風呂」29.7%、「打たせ湯」20.1%、「軽食コーナー」13.6%であり、最近は健康に対する関心が高まっている。 |
(1)
|
切実な問題点「顧客数の減少」 |
|
経営上の問題点について国民生活金融公庫の「生活関連企業の景気動向等調査」の調査結果
(複数回答)でみると、1位は「顧客数の減少」が平成16年4〜6月には調査対象15業種の中で1位
に躍り出ている。2位は「仕入れ価格・人件費等の上昇を価格に転嫁」、3位
は「大企業の進出による競争の激化」、3位は「店舗施設の老朽化・狭隘」となっている。
1位の「顧客数の減少」は、「持ち家住宅の増加」、「スーパーへの顧客の流出」などにより利用者が減少しているだけに、問題は深刻である。 |
(2)
|
多い将来の悲観的な見方 |
|
やや古い資料だが、現状から見て大きな変化がないと思われる厚生労働省「公衆浴場業(一般
公衆浴場)の実態と経営改善の方策」(平成11年3月)により、銭湯経営者の将来について、どのように考えているのかを見てみよう。(アンケート記入は1個のみの回答)。1位
は「利用者減少で悲観的」で66.4%、これに「後継者難で悲観的」5.7%を合わせると悲観的な見方が72.1%と大きな割合を占める。一方、現状維持を示す「今と変わらない」は10.8%と全体の1割に過ぎない。これに対して
「今の方法で有望」はわずかに2.0%しかなく、「多様化、多角化すれば有望」10.0%を加えても、有望視は全体の12に%にしか達しない。 |
(3)
|
少ない経営の多角化対策、問題点が「特になし」が多いのはなぜか |
|
では、このような厳しい経営環境下にあって、これまでどのような対策がとられてきたのかを上記の調査(複数回答)でみてみよう。1位
は「入浴券、サービスデー導入」38.6%、2位が「付帯設備の充実」28.7%、3位
が「特になし」が25.1%、4位は「宣伝・広告の強化」17.3%、5位
「美観、清潔感の増強」17.3%、6位「経営の多角化、多様化」は15.3%となっている。
ここで注目すべきは、「特になし」が上位にあることと、逆に本業の収入減少を補う「経営の多角化、多様化」が後順位
にあることである。「特になし」が25.1%と多いことは高齢経営者の増加で問題点が山積していても、その改善に取り組む意欲が後退している回答が多く含まれていることがうかがわれる。また「経営の多角化、多様化」が後順位
にあることは、同調査による設備投資の目的をみても「経営の多角化・多様化」は2.4%と少ない。これに対して、1位
「老朽設備等の補修」61.9%、2位「設備改善等で売上げ増大」11.6%と設備の合理化投資が73.5%と圧倒的に多いことから、目前に差し迫った本業の設備改善に追われ、経営の多角化を行うまでの余裕がないことがうかがわれる。 |
(4)
|
就業規則の整備が少ないのは、個人のみならず法人も多い |
|
就業規則の有無は、従業員を確保する上で大事なことであるが、「就業規則無し」が74.2%と圧倒的多数を占め、「有り」は16.4%に過ぎない。これは就業規則の整備が進んでなく、前近代的な職人方の経営体が圧倒的に多いことを意味している。これを法人・個人別
に見ると、「有り」は個人経営10.4%、有限会社25.6%、株式会社47.0%で、「無し」は個人経営77.7%、有限会社70.0%、株式会社51.8%となっており、株式会社ですら「無し」が過半数を超えており、業界全体にとって組織や労務管理体制の強化が望まれる。 |
(1)
|
銭湯に求めるのは健康やゆとり |
|
最近の一般公衆浴場の利用者の声としては、「浴槽が大きくリラックスできる」「良く温まる」など、大きな浴槽の効果
を評価するものが最も多い。次いで「時間をゆっくりかけて、ゆっくり入れる」や「好きな時間に入れる」など入浴時間に気兼ねなく、自分の思う通
りに使えるという声が多い。また、「薬湯が利用できる」「サウナに安く入れる」など変わり湯の利用を楽しみにしている層や、「親子で一緒に入れる」「近所の人とのふれあいができる」など多種多様である。従来のように単に身体をきれいにすることを目的に銭湯に行くことから、今やニーズは「疲れをとり、気分転換を図り、リフレッシュするため」のものに明らかに変化している。
このようなニーズの変化が意味することは、健康やゆとりを一般公衆浴場に求めているといえよう。このニーズに適応した経営を行うのには、現代の顧客の感性に合う独自のコンセプト(着想)が設備、雰囲気、サービスなどに具体的に表現され、開放的で憩いの雰囲気にひたれる一般
公衆浴場を目指すことが求められている。〔(財)東京都生活衛生営業指導センター「環境衛生営業に係る消費生活調査」平成9年度〕 |
(2)
|
新規顧客誘致には、銭湯の良さの売込みが必要 |
|
住宅の浴室保有率の上昇に伴い、一般公衆浴場について無関心の層が増え、事実、いま入浴料金がいくらなのか、あるいは、いろいろな種類の浴槽や露天風呂が設置されているなどの変化を知らない住民が少なくない。待っているだけでは、新規の顧客は誘致できない。いかに、周知を図るかが重要であり、組合任せでなく自分の創造的な発想で顧客誘致の方法を展開すべきある。銭湯はPRが不要と考えている経営者も少なくないが、昭和55年の年間利用回数27回が望めない現状においては積極的なPR活動の実施は、自家風呂所有者を新規顧客として獲得することと、既存顧客がスーパー銭湯とに流れないための工夫が不可欠である。
それには、一般公衆浴場の良さや変わり湯などいろいろな種類の風呂が増えていたりして、昔に比べていかに銭湯が変化しているかを強調すべきである。また、「清潔さ」をアピールする必要がある。その際、文字だけに比べ施設内部を視覚的に訴える方が効果
的であるので、写真を用いることが望ましい。また、インターネットの時代となっているので、ホームページを作成し、脱衣所、浴槽、サロンなどの施設の特徴を十分に周知することが望ましい。
最近、マイナスイオンが身体に良いとして人気を集めているが、銭湯には、このマイナスイオンが豊富に含まれていることが検証されている。このような科学的な面
からみた一般公衆浴場の優れた点を積極的にPRすべきである。季節ごとのイベントやサービスの具体的な内容なども、より一層タイムリーに地域住民に周知することが必要である。特に未利用者向けは、銭湯の良さを十分なアピールが重要である。 |
(3)
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進まぬ施設、設備の改善 |
|
厚生労働省の「公衆浴場業(一般公衆浴場)の実態と経営改善の方策」(平成11年3月)では、経営上の問題点の2位
は「施設・設備の老朽化」となっているが、経営の維持に支障を来すだけに放置できない大きな問題である。同調査により、新築または改築後の経過年数をみると、30年以上の建物が全体の47.3%と半分近くを占め、木造建築物なら既に耐用年数を経過しており、施設、設備の改善を実行しなければならない状況にある。
しかし、設備投資予定の内容では「施設の改装」は51.0%(複数回答)であり、「施設の改築」も19.8%に過ぎない。事業継続の不透明、後継者の問題などで、設備投資を実施する意思決定に迷っている経営者も少なくない。現実には、独自のコンセプト(着想)を明確にしても、大がかりな設備の改善は容易でなく、いきおい資金を多く必要としないソフト面
での経営改善を定着させるような方向性を、求めざるを得ないと思われる。
今後、高齢化時代の進展に伴って、高齢者に配慮したバリアフリーの施設が社会的に要求されるが、先の調査によるとこれらの設備は、現状では全体の24.1%が保有しているのに過ぎず、一方、保有なしは70.9%となっている。時代の要請による今後の設備改善への対応力にも問題が待っている。
さらに、顧客用の駐車場は、顧客確保のために必要不可欠な営業施設になっている。近くのスーパーへも車を利用する傾向がみられるように、周辺客を確保するのみならず、商圏を広げるためにも重要な施設であり、自家風呂所有者を引き寄せるためには必要視される。敷地の活用にも一工夫が必要である。 |
☆日本初の銭湯を活用したディサービス事業に進出 |
周辺の急速な新興住宅地化で自家風呂所有者が増加、15年前からスーパー銭湯が増え、入浴客数が急減。銭湯の将来を真剣に考え、銭湯の身の丈の範囲内で生き残り策を模索。銭湯の空き時間を活用したディサービスの新事業へ進出のため、専門学校に通
いヘルパー2級などの資格を取得し、平成12年ディサービスセンターを発足。入浴以外に戸外リレクリエーションなど多彩
なメニューが高齢者に人気。「銭湯は地域における社会資本」のポリシーを実践している。 |
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企業概況 |
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・立 地:札幌市、新興住宅地で持ち家住宅、マンション、アパート急増地帯
・開 業:昭和30年(2代目)
・業 種:公衆浴場業
・設 備:昭和57年改築、1階銭湯、2、3階は2世帯住宅
・従業員:5人(パートのみ)
・経営理念:「銭湯は社会資本の一つ。銭湯とディサービスにより、地域のコミュニティ作りを目指す」
・ビジョン:ディサービスにより「人間回復ができる自立心の高揚」 |
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銭湯を活用したディサービス進出の動機 |
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尻すぼみになるだけの銭湯経営をただ惰性だけの営業で何ら対策を打たなければ、そこに待っているのは衰退への道だけ。それなら、銭湯の持つ施設機能と空き時間を生かせるディサービスに今後をかけてみようと意思決定。単なる思い付きではない。銭湯を巡る社会環境の変化を洞察、周到にリスクを計算尽くしての兼業である。 |
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事前準備の徹底による十分な成算と確信 |
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まず手始めに、平成10年、市内8カ所の銭湯で月2回の自立者対応のミニディサービスを行う、札幌市のユニークサービス事業に参加。今後の銭湯が生き残る手段として、十分な成算と確信を得た。 |
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本格的に事業化には資格が必要なため、3カ月間専門学校に通
いヘルパー2級、介護福祉士、社会福祉主事の資格を取得。そのかたわら、配食サービスの仕事を具体的に体験。社会福祉教義界の協力を得て、毎週月曜日営業時間前に、ディサービス待機者対象とした入浴サービスを開始するなど、本格的な事業展開に向け用意周到に準備を行ってきている。 |
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平成12年同業者として初めて「札幌市基準該当通所介護登録事業者」の認定を受け、送迎用のワゴン車を2台購入。同年の介護保険法のスタートと同時にディサービス事業に着手。月曜日の待機者向け入浴サービスに加え、火曜日から金曜日までの営業時間前に、介護保険者を対象にしたディサービスを始める。 |
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銭湯だからできるディサービス体制に |
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ディサービス体制を築くのに既存の銭湯施設を用い、無理な設備投資を行わないことを重視した。また、時間は銭湯の営業開始の午後3時半以前の空き時間帯を有効に活用、本業に支障を来たさないように配慮している。利用時間は3,4時間である。 |
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会場は、男女別の10坪の脱衣所の仕切りを取り払い、20坪のリクレーション・ルームが会場となる。 |
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利用者とスタッフ |
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利用者は、これまでの銭湯の顧客のうち一人暮らしや夫婦2人の高齢者世帯を中心に、自家風呂に入るのにも人手を要する要介護認定を受けた人たちである。1日10人前後を対象とするが、週1,2回の人が多く、なかには毎日通
う人もいる。 |
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スタッフはヘルパー2級以上の資格を持つ介護スタッフ6人、看護士3人でローテーションを組み、1日4人の介護スタッフに看護士1人のチームで対応する。 |
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近所の銭湯で遊び、昼食を食べ、ひと風呂浴びて帰る |
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出迎えは2台のワゴン車を使用、基本はドアー・ツー・ドアー。スタッフのアイデアにより、当銭湯のテーマソング「ズントコ節」で出迎える。 |
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まず、部屋で看護士による体温や血圧測定の体調チェック、全員が揃ったら、1時間ほどスタッフが一緒になり、その日のレクレーションのメニューをこなす。週1回組みと週2回組みもいるため、4日間で2回プログラムを新しくしている。 |
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レクリエーションは多彩である。料理作り、工作、などのほか、週に1度は外出も行う。レクリエーションは利用者の希望を取り入れ、季節感を出した内容で、飽きのこない遊びなどを経営者・スタッフで企画する。特に、戸外レクリエーションは、毎回人気の的になっている。レクレーション後は1時間の休憩、配食サービスから取り寄せた昼食をとる。食事は和気あいあい、家族とは話をしない人までが、積極的におしゃべりの輪に入り、ストレス発散の効果
を生み出している。 |
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その後は、ディサービスとスタッフに介助され、大きな浴槽に肩まで漬かり、体を洗って、髪をシャンプーしてもらい、入浴後はたっぷりと水分を補給する。体がぽかぽかした状態でワゴン車に乗り帰宅。 |
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これまでのディサービスと異なるのは、銭湯ディサービスではレクリエーション後に入浴し、温まった体で帰れるようにしている。入浴が先でレクリエーションが後だと、汗をかいたまま帰宅するので、体が冷えてしまうからだ。 |
まとめ |
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兼業に乗り出すについて、銭湯と地域社会に関しての経営理念(事業の根底にある考え方)とビジョン(企業の中長期的な未来図)は、企業概況に書いたように、しっかりと築かれている。特にビジョンのディサービスにより"人間回復ができる自立心の高揚"の人間回復は「人間は喜怒哀楽を出すような生活を通
じて人間性を取り戻せるが、ディサービスに通うお年寄りを見ていると、それが現実なものになっていくのがよく分かる」という現実の実証に裏打ちされている。
また、経営戦略(企業が外部に対して効果的に適応するための基本的な方策)は、実行可能な行動計画で、「身の丈の範囲内」に収まる策略でもあり、高額な設備投資を行うなど無理をしていない。今後、ますます高齢者層が増大するという変化を視野に取り入れ、長期を見据えた構想であり、目先のその場しのぎではなく、足がしっかりと地に着いている。
介護者への対応は、自分の意思で行動することを介助する自立型サービスを目的とし、あくまでも本人たちの自立した生活を優先している。
銭湯は、いまや経営者の高齢化と後継者不足の問題点を抱えているが、この事例は介護事業の取り込みにより事業範囲に広がりができ、また地域に貢献できるなど、銭湯経営の新たな生きがいを見出している。「銭湯は街になくてはならない施設としての社会資本である」であることを、経営者は強調する。
新たな構想としてディサービスの送迎用に購入したワゴン車を利用して、グループホームや高齢者住宅を回って移送する事業を検討している。さらに、構想は飛躍する。他地域の銭湯が銭湯ディサービスを取り入れることにより、ネッワーク化を推進し、情報交換、利用者の拡大、コスト削減などの構想を描いている。いまや、銭湯の空き時間の利用した事業は、本業の収入を大きく上回るほどに成長している。
(国民生活金融公庫「後継者による生活衛生関係営業の経営革新事例」平成16年度から引用) |
・スーパー銭湯 |
スーパー銭湯とは、規模が大きく、ロビーを持ち、露天風呂、ジェットバス、薬草湯等10種類以上の浴槽、サウナなど健康ランド並みの設備を備えた浴場施設である。大きな特徴は、自家用車での顧客の吸引を狙っているため広い駐車場を確保していることと、料金が健康ランド並みの施設を備えている割に安いことである。まさに、公衆浴場のスーパー式経営である。
愛知県のある施設の場合物価統制令による入浴料金に比べ高めに設定されているが、週末ともなると家族連れ、若い女性のグループで駐車場は満車状態が続く。平成2年に愛知県のボウリング場経営者によってオープンされたものが元祖といわれており、その後、サウナ業からの模様替えをはじめ、パチンコ店や繊維会社といった遊休地を抱える異業種からの新規参入が相次ぎ、愛知県内では早くも過当競争が指摘されるほどである。
公衆浴場として許可を受けているものは、物価統制令の適用を受ける「一般
公衆浴場(銭湯)」と健康ランド、サウナ風呂などの「その他の公衆浴場」に区分されるが、スーパー銭湯は、そのうち「その他の公衆浴場」に属する。国民生活金融公庫の貸付対象者は、物価統制令の適用を受ける「一般
公衆浴場業」と、都道府県の生活衛生営業指導センターから意見書の交付を受けた「サウナ営業」を営む者に限られるため、スーパー銭湯は、現在のところ貸付の対象とはならない。 |
・銭湯の経営者で作る「銭湯ダンナーズ」 |
東京・世田谷区の公衆浴場の経営者7人は、後継者難、持ち家住宅の増加で、入浴者数の減少など経営環境の変化にもめげず、銭湯の活力向上を図る目的で「銭湯ダンナーズ」を結成。洗い場を利用して座席を設け、月1回行うイベントを通
じて銭湯の良さをアピール。揃いの印半纏を着た「銭湯ダンナーズ」7人が、仲間が作詞・作曲した「銭湯音頭」や民謡などを披露、すでに開始して1年間経過しで地域民に好評で、開催ごとに満席になり、しっかりと定着。「ここで歌ってみたい」というご婦人も少なくない。
メンバーのうち、ロビーが広い銭湯では、地域住民の「趣味の発表」の場に提供。また、20年以上にわたり、子供に「正しい銭湯の入り方」を指導しているメンバーもいる。大正時代に建築した古風な建物を、補修しつつ昔の銭湯の雰囲気作りに専念する経営者もいる。「銭湯ダンナーズ」の活躍で、区内の同業者仲間にも「心通
わす人情の復活を銭湯で」の合言葉が通じ、最近では、銭湯が昔並みに地域住民のコミュニケーションの場に返り咲いている。また、「うちの風呂に入らないで、これからは銭湯にこよう」など、新規の入浴者誘客の効果
が現れている。 |
・浴室保有住宅数の割合 |
都道府県別に住宅総数に占める浴室保有住宅数の割合を見ると、1位
は島根県、佐賀県宮崎県の3県が98.6%、2位は山形県98.5%、3位
は山梨県、長崎県が98.1%となっている。逆に低い順で見ると、東京都91.0%、2位
大阪府91.4%、3位は青森県94.1%となっている。(総務省「住宅・土地統計調査報告」平成15年速報値) |
・受動喫煙防止措置とは何か |
健康増進法が平成15年5月1日に施行され、それに伴い集客施設などの管理者は受動喫煙(他人のたばこの煙を吸和させられること)の防止が義務付けられている。健康増進法第25条の対象となる施設は「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他多数の者が利用する施設を管理するものは、これらを利用する者について、受動禁煙を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めている。この法律の施行により、ほとんどの生活衛生関係営業者は、受動喫煙防止措置を講ずる必要性が生じている。 |
・受動喫煙とは何か |
健康増進法によると、受動喫煙とは「室内またはこれに順ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義している。他人のたばこの煙は「副流煙」といわれ、喫煙者が吸う「主流煙」に比べ、有害物質が何倍もの濃度で含まれていることが報告されています。非喫煙者が副流煙を吸わされることは、さまざまな病気を発症させる一つの要因となっています。特に発ガン物質ジメチルニトロソアミンが副流煙には多量
に含まれている。そこで、非喫煙者を副流煙から守るため受動喫煙防止措置を講ずる必要があるわけである。 |
・受動喫煙防止措置の具体的方法 |
受動喫煙防止措置には、大別して@施設内を全面
禁煙にする方法、A施設内を分煙する方法とがある。 |
@
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全面禁煙 |
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受動喫煙防止対策の上では、最も望ましい方法である。灰皿の処理コスト、壁紙・エアコンのフィルターの汚れの清掃など費用が不要でコスト削減になる。また、宴会場の畳や床、テーブルクロスなどの焼け焦げの防止につながる。特に、妊婦や幼児、子供連れの顧客に安心感を与え、安心して飲食が出来るなどのメリットがある。 |
A
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完全な分煙 |
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禁煙エリアにたばこの煙が流れないように、喫煙席(別の部屋)を設置する。特に禁煙エリアや非喫煙者の動線上、例えばトイレに行く通
路、バイキングやフリードリンクコーナー周辺やそこへ行く通路、レジ周辺、禁煙エリアとレジや出入り口との間の通
路などに、たばこの煙が漏れたり、流れたりしないように配慮する必要がある。 |
・不完全な分煙は違法 |
分煙が次のような場合は違法となる。 |
@
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禁煙エリアが指定されていても、禁煙エリアにたばこの煙が流れてくる場合(喫煙席周囲に間仕切りがないなどによる場合) |
A
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非喫煙者の動線上にたばこの煙が流れてくる場合 |
特に注意しなければならないのは空気清浄機や分煙機が設置されていれば、受動喫煙防止対策が実施との誤解である。これらが設置されていても、たばこの煙の中の有害物質は、大半が素通
りしてしまうからである |
・北海道庁の「空気もおいしいお店」の推進事業 |
喫煙率が男女とも全国平均を上回る北海道では、平成14年度から飲食店に対する受動喫煙防止推進事業として「空気もおいしいお店」の推進事業を始めている。対象は政令都市である札幌市の俗北海道内にある飲食店が対象であり、認証店は平成18年6月末現在で421店に増えている。
飲食店に対する同様の認証制度の取り組みは、全国の地方自治体でも行われ出しており、受動喫煙防止策を飲食店の経営者のみに任せるのではなく、行政の仕組みとして整備することで、小規模飲食店への浸透を促進することを狙いとしている。
資料:国民生活金融公庫「生活衛生だより」No.135 2004年10月 |
資料
- 総務省「事業所・企業統計調査」
- 総務省「家計調査年報」
- (財)東京都生活衛生営業指導センター「環衛業に係る消費生活調査報告書」平成7年度
- 金融財政事情「企業審査事典」
- 中央法規「生活衛生関係営業ハンドブック2005」
- 厚生労働省「公衆浴場業(一般公衆浴場)の実態と経営改善の方策」平成11年3月
- 国民生活金融公庫「生活関連企業の景気動向等調査」
- 全国生活衛生営業指導センタ−
- フリー百科辞典「ウィキペディア」
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