すし店-1998年
1 概況
1998年
(1) 小規模主体だが、急速に進む大型化
(ア)  平成8年の全国のすし店の事業所数は45,105件で、平成3年に比べ1.6%減少しているしかし、一般 飲食店全体の同期間の減少率3.8%より少ない。
(イ)  従業者規模別でみると、従業者数4人以下の事業所が全体の70.3%であり、一般 飲食店全体の65.7%より多く、すし店は飲食店のなかでも小規模事業者の割合が高いのが特徴である。
(ウ)  また、事業所の推移を従業者規模別でみると、平成8年は3年に比べて従業者数4人以下の小規模店は4.3%減で1,420件も減少している。一方、従業者5人以上の事業所は1,748件増加し、4.3%の増加率となっている。近年、規模は大型化の傾向がうかがわれ、20〜29人では31.1%増30〜49人が48.1%と大幅な増加率を示している。
事業所数の推移 (参考) 一般飲食店全体
(単位:件、%) (単位:件,%)
調査年 従 業 者 規 模 別 合 計
1〜4人 5人以上
昭和61年 (76.7)
36,821
(23.3)
11,180
(100.0)
48,001
平成3年 (72.3)
33,145
(27.7)
12,711
(100.0)
45,856
平成6年 (74.2)
33,786
(25.8)
11,777
(100.0)
45,563
平成8年 (70.3)
31,725
(29.7)
13,380
(100.0)
45,105
従業者
1〜4人
合 計
(73.7)
370,515
(100.0)
503,037
(69.1)
327,643
(100.0)
474,389
(70.0)
326,819
(100.0)
466,835
(65.7)
299,963
(100.0)
456,420
資料:総務庁「事業所統計調査」(平成6年は名簿整備調査)
(注) ( )内は構成比である。
(2) 外食の花形から後退、進む構造的な「すし離れ」
(ア)  総務庁「家計調査年報」によると、平成9年におけるすし店に対する1世帯当たりの年間支出額は18,758円で、前年比では+6.0%(一般 外食費全体では+3.1%)と3年以降すう勢的な減少から持ち直しているが、ピーク時の(平成3年20,583円)から比べると、▲8.9%の減少となっている。
(イ)  かつては、すしといえば外食の花形であり、家計調査による外食費に占めるすし支出の割合も昭和51年には19.0%と他の外食費に比べ高かった。
 しかし、その後傾向的に減少し、8年には10.7%まで後退したが、9年には11.0%と挽回している。ただ昭和62年からへ平成9年までの10年間の可処分所得の伸び率1.2833に対し、すしの支出の伸び率は0.9806と伸び悩んでおり、所得が伸びてもすし支出は鈍化している。また、バブル全盛時代の平成2年の高級ム−ドのときですら、前年比の伸び率は1.4%増と低く、景気の好不況と関係く構造的な「すし離れ」傾向が進んでいるといえよう(表参照)。
1世帯当たりの可処分所得と年間のすし支出
(単位:円)

可処分所得 すし支出
昭和51年 233,462 13,965
52年 256,340 14,889
53年 270,307 15,940
54年 286,828 17,531
55年 305,549 18,291
56年 317,279 17,499
57年 335,526 18,205
58年 344,113 18,007
59年 359,353 17,630
60年 373,693 18,013
61年 379,520 18,588

可処分所得 すし支出
昭和62年 387,314 19,129
63年 405,938 19,717
平成元年 421,435 19,453
2年 440,539 19,735
3年 463,862 20,583
4年 473,738 20,501
5年 478,738 20,046
6年 481,178 18,628
7年 482,174 18,980
8年 488,537 17,703
9年 497,036 18,758
資料:総務庁「家計調査年報」


(ウ)  一般に、すし店の客単価は他の業種に比べて高いといわれている。平成4年の資料〔通 産省「商業統計表(一般飲食店)〕でやや古いが、すし店と一般飲食店全体の客単価別 の商店構成割合をみると、すし店では客単価1,000円以上の店が全体の79.5%に対して、一般 飲食店全体では24.7%、客単価2,000円以上の店でみてもすし店24.3%に対して一般 飲食店全体では7.3%となっており差が大きい。
(エ)  一般的に外食する場合に、すし店で1人当たりどの位 の金額を要するかを、(財)東京都環境衛生指導センタ−が東京都内在住の消費者に対して行ったアンケ−トの調査結果 によりみてみよう〔「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度」)。1)昼食、2)家族との団欒(含む飲酒代)、3)社用の接待・友人との親睦等(含む飲酒代)に区分〕。
1)  昼食では、1,001円〜1,500円が36.6%でもっとも多く、次いで1,000円以下が32.1%となっており、全体の7割弱が1,500円以下の支出である。
2)  家族との団欒(含む飲酒代)でもっとも支出が多いのは2,001円〜4,000円で38.1%、2,000円以下では24.7%となっている。
3)  社用の接待・友人との親睦等(含む飲酒代)になると5,001円〜10,000円が40.2%でもっとも多く、家族との団欒の倍以上に膨れ上がる。なお、次いで5,000円以下が43.3%となっている。
(3) 急がれる構造的な「すし離れ」への対応
 「すし」の売上の伸び悩みについて東京都衛生局生活環境部で行った平成5年度の「環境衛生関係営業の実態と今後のあり方〔飲食業(鮨商)〕をみると、その理由としては(a)消費者の食生活の多様化、(b)食生活の嗜好の変化、(c)魚介類の高騰による販売価格の上昇、(d)暗算勘定方式の不明瞭な会計方法などが挙げられている。これらは構造的な要因であり、「すし離れ」を防止するために、本腰を入れた対応策が必要とされる。

2 食品衛生法で見るすし店業界の仕組み
(1) 新業態との競合激化
   長引く景気の低迷や接待の自粛、交際費の予算削減などで、社用族を対象とした高級すし店や単価が比較的高いすし店ではかなりの影響を受けている様子がうかがえる。一般 専業店では、回転ずし店、持ち帰りずし店、ス−パ−等の単品ラップずし等との競合が激化してきている。
(2) 多い回転すし店の利用者
  他業態との競合を先の「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」でみると、回転すし店の利用者は、「利用する」は55.8%で「利用したことがない」の41.2%を上回っている。とくに、50歳代の男性は「利用する」が67.7%と利用率が高いのが目立つ。また持ち帰り店の利用状況は、「利用する」が65.4%で、「利用したことがない」の30.3%を大きく上回っている。単品ラップすしは「利用する」の44.8%に対して「利用したことがない」が50.7%と上回っている。
(3) 顧客ニーズの変化に伴って多様化する経営形態
  すし店といえば高級食、高単価、しかも気軽に入れる雰囲気がなく値段も分からないのが当然であったが、消費者のニ−ズの変化が新業態の出現を容易にし、すし業界に新風を吹き込んでいるようである。先の「平成7年度環衛業に係る消費生活調査報告書」によると、回転ずし店、持ち帰りずし店、ス−パ−等の単品ラップずしなどの新業態を利用する理由をみると、各業態とも「安い」が共通 してもっとも多い。逆に「おいしい」は、回転ずし店0.7%、持ち帰りずし店2.7%、ス−パ−等の単品ラップずし1.0%と味への期待は極めて低い。味は落ちるけど、「安い」から利用するのである。
 「安い」についで多い項目をみると、回転ずし店では「気軽さ」31.3と「値段がはっきりしている」30.3%のニ−ズが、持ち帰りずし店は「日常的な食事として手軽に買える」が28.7%、単品ラップずしでは「他の食べ物と同時に買える」が21.9%となっている。
 日本人としては、従来のすし専業店に対するこだわりは捨て切れないものの、一 面では、顧客のニ−ズが変化し、新業態のすし店が成長していることも見逃せない 。
3 顧客のニ−ズに伴って出現する新業態店
(1) 回転ずしチェーン店
(ア)  一時、同業間の競合激化や食材の高騰、他業態レストランの出現等により、頭打ちとなった「回転ずし」が再び台頭している。この理由としては(a)消費者の価格に対する意識がより敏感となったことにより、「回転ずし」の値ごろ感が見直されたこと、(b)チェーン店同士の合併等業界内の再編成が進んだことにより、顧客ニーズに合った店造りを可能とするだけの企業体力が蓄積されたこと、(c)炊飯・保温機器をはじめとした周辺機器の技術革新が進み、質的満足度の高い商品を提供できるようにな たことなどが挙げられる。
(イ) 「月刊食堂」〔(株)フードビジネス〕の調査によると、大手回転ずしチェーン店の業態について(a)客単価は1,000円前後に集中し(b)諸経費率は、人件費率約2割、原価率約4割が一般 的とされている(「アトムボーイ」チェーンでは人件費率19.5%、原価率38%、「マリンポリス」チェーンでは人件費率20%、原価率は43%)。これは、従来のすし店の人件費率32.8%、原価率44.6%(「小企業の経営指標(国民金融公庫1998年調査)」)と比較しても、収益面 で優れた数値といえる。
(2) 持ち帰りすし店
(ア)  持ち帰りすし店は、和風ファ−ストフ−ド産業の一形態であり、すしを店内販売したり、出前の形をとらず、店頭において出来合いずしのテイクアウトを行う専業店をいう。昭和47年に「小僧すし」がにぎりすしの全国FC展開をはじめたのがきっかけとなって持ち帰りすし店が脚光を浴び、新規参入のFC店を主体に店舗数が急増していった。現在では、日本の飲食業ランキングの上位 に小僧すし本部、京樽、春陽堂(茶月、大名、一番寿司)などが名を連ねるほどに成長している。
(イ)  商品は大きく分けて3種類からなる。もっとも多いのはにぎりずしであり、ついですし専業店では取り扱いの少ない茶巾ずし、押しずし、地方特有のすしをアレンジした新型ずしなど特殊すしが多い。さらに、のり巻、いなりずしなどの弁当風すし類が続く。業態としては、にぎりずし、鉄火巻、かっぱ巻、いなりずしなどを主力にしている店舗が多いが、なかには京樽に代表されるように、持ち帰りすしながら、高級感を打ち出すために茶巾ずしなどを主体にした専門化された業態も現われている。
(ウ)  持ち帰りすし店は、FC形態など多店舗経営を通じて大量仕入れよるコスト削減、店舗内作業の合理化による効率、職人技をパ−トの主婦が代行するなどで、すし専業店と異なった低価格システムを実現している。低価格に加え、待たずに一人前でも手軽に買え、家庭でゆっくり食べられなどが評価され、主婦層の需要分野を開拓している。
 販売は1人前からパ−ティ用の大皿の盛りつけまであり、しかも容器は返却をせず廃棄できるプラスチック製であるため、企業の懇親会や打ち上げ、グル−プの会合、花見など野外パ−ティ用などの大口需要も根強い。
(エ)  持ち帰りすし店を「利用する」は、女性70.9%に対して男性65.4%で女性の方が多い。これは女性側で「利用する」が30代が81.4%、40代が72.4%と30〜40代の年齢層が圧倒的に利用しているためであり、主婦層が日常的な食事の一つとして、手軽に利用していることがうかがわれる。〔「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」(財)東京都環境衛生営業指導センター〕
(3) 宅配ずしチェーン店
(ア)  ここ2〜3年、市場規模は小さいものの、徐々に世間の注目を集めている新業態である。「日経レストラン 96.2.7号)」(日経BP社)によると「宅配ずし」が注目すべき業態として紹介されている理由として(a)店造りの簡略化によ り初期投資を抑えられる、(b)一般飲食店と違って、比較的立地を選ばない、(c)高性能周辺機器(すしロボット等)や冷凍技術の高度化により、経験が浅くても比較的簡単にすしネタが扱えるようになった、(d)特に都市部のすし店においてその出前機能が弱体化しており、隙間産業としての成長性が見込めるなどが挙げられている。
(イ)  店によっては、持ち帰り用の物販スペースを持つ場合もあるが、飲食スペースはなく、店舗の実態も看板と出前用バイク等でようやく分かる程度である。宅配エリアは宅配ピザとほぼ同様に約1〜2km、一般 家庭における「イベント需要」をターゲットとし、取扱商品もオーソドックスなにぎりずしのパーティ桶が中心(3,000円〜5,000円)となっている。
(ウ)  具体的な販売促進としては、チラシ、メニュー表の新聞折り込み、ポスティング等といったところが「宅配ずし」の一般 的な業態といえる。また、午後6〜8時に注文が集中する傾向が強いことから、チェーン店によっては、全店にコンピユーターを導入し、前年同日の注文内容、注文実績等のデータを蓄積し作業効率の向上に役立てているところもある。今後は「宅配ずし」同士での競合も予想されることより、引続き動向が注目されるところである。
4 経営上のポイント
(1) 改善急務な店のイメ−ジ、不明朗価格、店主の態度
(ア)  アンケ−ト結果にみる消費者のすし店のイメ−ジ
 前出の「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」によると、すし店を利用するのは「少々割高でも新鮮で、おいしいすしを食べたい時」が34.6%ともっとも多く、根強い需要層に支えられている。半面 、店舗イメ−ジ、価格、対応、態度別のすし店に対する具体的な意見、要望を同調査のアンケ−ト結果 でみると以下のように、他の飲食店に比べシビア−な意見が際立って多い。
 店舗に関しては「すし店は高級なイメ−ジが強すぎる」、「外から内側が見えないので入りづらい」、「若い家族や学生同士、子供連れで気楽に入れる店がない」など、大衆性に欠けている点が指摘されている。
 価格では「高いというイメ−ジがある」、「なぜあんなに高いのか分からない」「高くてもおいしいすしを」、「高過ぎて落ち着いて食べていられない雰囲気がある」など高価格に対する不満が強い。「すしといえどもたかがご飯なのだから、もっと安くしてほしい」が消費者側の本音か。また、「値段がわからず入りづらい」、「値段がはっきりしないので入ったことのない店には入りにくい」など不明朗な価格に対しての不満も強い。
 店主やすし職人の対応、態度については、「店によっては客の足元をみて態度の悪い店主や職人が多い」、「高飛車やいばっている態度」、「店主や職人の雰囲気でおどおどして食べざるを得ない」など、経営者、板前の態度に対して手厳しい評価となっている。
(イ)  回転ずしとすし専業店との比較
 同調査で回転ずしとすし専業店との比較をみると、「回転ずしができてすしが手ごろな感じになった」「すし店は子供連れはあまりいい顔をされないが、回転ずしは気軽に入れる」「回転ずしは子供も喜ぶので、もっと店舗があった方がよい」「回転ずしの出前を望む」など回転ずしの評価が高まっている。
(ウ)  迫られる旧態依然の経営の改善
 すし専業店は、長年、根強い業界の慣習による経営感覚が通 用してきたし、また、対応や態度は一般の飲食店と異なり職人風を吹かすのが粋という風潮が根強く残っているのが、この業界の特性である。また消費者側もそのようなものとして受け止めてきたが、新業態の出現によりすし専業店への風当たりが強まっていることは、アンケ−トの結果 により否めない事実である。すし業界において、新業態の展開が進捗している以上、消費者がすし専業店に望んでいる事柄を真摯に受け止め、旧態依然の経営を改善せざるを得ない状況にある。
 これらから、店のイメ−ジや雰囲気、不明朗価格、店主、すし職人の態度の改善を図ることが急がれる。
(2) すし店を取り巻く経営上の問題点の改善
 すし店を取り巻く経営上の問題点としては、通常(a)他業種との競合等による売上の伸び悩み、(b)原材料である魚介類等の仕入価格の上昇によるコスト増、(c)人件費の上昇、見習・職人の恒常的な不足などが挙げられる。
 今後、売上を確保し、他業種との競合にも生き抜いていくには、食生活の変化に伴って多様化する消費者ニ−ズを的確に捉え、単なる「満腹感」から「新鮮なもの」「健康的なもの」、さらには「他にないもの」など、幅広い要求に応えていくことが必要である。そのためには(a)商品の品質の維持向上−伝統的な技術を基にした新種・メニューの開発、盛りつけの工夫等、(b)施設・設備の近代化、(c)経営方針の明確化、(d)食材の有効利用、調理技術の開発等による経費の節減、(e)「気軽に入れる店」「値段の分かる明朗会計の店」への改善など、経営の合理化・近代化やイメ−ジチェンジに努めていかなければならない。
5 繁盛店の事例
(1) お客さまに選ばれる店を目指し、「心くばり、気配り」を最重点に
   先のアンケ−トの結果で「店は客が選ぶもの、すし店側が客の格付けをすべきでない」との指摘があるが、東京都内のT区で商店、事務所、住宅の混在地に位 置し3店を経営するあるすし店では、経営方針を「誠心誠意でお客さまに選ばれる店を目指す」を掲げ実践していることが繁盛に結び付いている。具体的には、常連客と一見客とを何事においても平等に扱い、とくに、すし提供の順序を守ることを徹底している。
 客層は事務所の増加により地元の20歳代と35〜40歳のサラリ−マン主体に変化。とくに、近隣の社員食堂のない従業員を主なタ−ゲットにしている。また、住宅地への出張パ−テイや冠婚葬祭などにも力を入れ、顧客の固定化や新規顧客の獲得など多様な展開を図っている。カウンタ−での応対は、「心くばり、気配り」を最重点にし、挨拶の励行、折り目正しい応対を行っている。
 また、箸袋30枚で湯呑み1個、年末には手作りカレンダ−を配布するなどのサ−ビスも実施している。この効果 により顧客の固定化は80%に達している。
 仕入れは、必ず経営者が築地市場に行き、品質、価格の変動を細かくチェックし新鮮なネタを使用、商品の棚卸は10日ごとに行って前年、3年前との比較を行い、粗利益率60%確保の参考にしている。他の飲食店との競合上、周辺のそば・うどん店や食堂のそば、かつ丼などの価格やメニュ−への反応をとらえて価格設定に活かし、おいしいすしをなるべく低価格で提供するよう努力している。これには、人件費の節約が最大のポイントなるが、板場以外はなるべくパ−トの活用で対応している。
(2) 幅広い食材提供と子供の来店意欲を誘うイベントの実施
   名古屋市の住宅地にあるすし店の社訓は、「世界の国から食材供給」を掲げ、この実践のため看板から箸入れ、メニュ−等「地球料理」一色にし、他店との差別 化を図っている。5年前は出前と来店客が半々程度であったが、出前による車の事故多 発のため出前を廃止。代わりに店舗を改装し、宴会場、テイクアウト部門を新設したことによりファミリ−客が増加し、従業者数も改装前の4名から12名(うちパ−ト・アルバイト8名)に増員して対応するほどに繁盛を続けている。
 当店の特徴は、すしのネタの定番化傾向を打破するため、冷凍技術の革新による幅広い食材の提供の可能性に着目し、多種類の食材による新メニュ−の開発を図るとともに、旬の味やヘルシ−食材の絞り込みも行い、食材の仕入れ先などの情報を明記して、「地球料理」としてのメニュ−に対する顧客の関心を引き立たせている。
 多種類の食材の扱いによる商品管理は、POSの導入により売れ筋商品や在庫の管理、仕入れ先のヒット商品情報の収集等に努めている。また、調理場では、すしロボット、皿洗浄機を導入して省力化を行い、味覚減退を防ぐための複数の食材別 冷蔵庫を設置し、ネタの新鮮さの確保、在庫管理の徹底などの合理化を図っている。
 固定客確保の手段としては、店舗の半径5km範囲内の住民の顧客管理名簿を作成し、DM発送を実施、来店客にはその都度シ−ルをわたし、その所有枚数によりテレホンカ−ド、すけ六ずし、すし時計等を進呈している。また、ファミリ−客はファミリ−レストランなどに流れがちなので、当店独自のぬ りえ大会、餅付き大会、年賀状コンク−ル大会を実施し、子供の来店意欲をそそるイベントを実施している。
 
【業界豆知識】
(1) 「11月1日全国すしの日」事業
   昭和36年の全国大会ですし業のPRの一環として提唱され、以後、今日に至るまで続けられている。年1回、日頃の顧客に対する謝恩と新たな需要拡大を目的として各都道府県ごとに様々な企画が立てられ、積極的に取り組まれている。
(2) 「部屋」(すし職人の斡旋所)制度
   すし職人の多くは「部屋」(すし職人の斡旋所)に所属している。このため、 すし職人の採用も「部屋」を通じて行う場合が多い。また、採用するすし店そのものも以前に「部屋」に所属していた職人が独立したところが多く、「部屋」組織を中心として強いつながりがあることがうかがえる。代表的な「部屋」としては、東京の三 長会、大阪の寿司善、宮城の青葉会などがある。
    資料

    1. 総務庁「事業所統計調査」
    2. 総務庁「家計調査年報」
    3. (財)東京都環境衛生営業指導センター「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」
    4. 東京都衛生局生活環境部「環境衛生関係営業の実態と今後のあり方〔飲食業(鮨商)〕
      平成5年度経営診断報告書」
    5. (財)全国環境衛生営業指導センター「成功事例調査」
    6. 金融財政事情「企業審査事典」
    7. 中小企業リサ−チセンタ−「日本の飲食業」
    8. 経営情報出版社「業種別業界情報」’98年版
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