(1)
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高い事業所数減少率、中小規模店が減少の半面、大型店が増勢強める |
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(ア) |
変化するネタ |
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平成11年の全国のすし店の事業所数は42,496件で、8年と比べると2,609件減少している。減少率は3年4.4%減以降、6年0.6%減、8年1.0%減と微減で推移していた。しかし、11年には5.8%減と大幅に減少し、一般
飲食店の各業種の中で喫茶店の7.5%減に次いで高くなっている。また、一般
飲食店全体の2.9%減の2倍に及んでいる。
従業者数は222,189人で平成8年に比べ1.1%増(一般飲食店全体0.3%増)となり、事業所数が減少の半面
、従業者数は増えている。1事業所当たりの従業者は5.2人(一般
飲食店全体6.2人)と、8年の4.9人に比べ増えている。 |
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(イ) |
平成8年から11年までの新設事業所数は1,342件で、一方、廃業事業所数は2,151件となり、廃業事業所が新設事業所より809件も多い。開業率は3.0%(一般
飲食店全体5.0%)、廃業率4.8%(同5.9%)となり、廃業率の方が高くなっている。 |
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(ウ) |
平成11年の法・個人別事業所数は、個人が30,701件(構成比72.2%)、法人は11,795件(同27.8%)となり、8年に比べると個人が7.7%減に対し、法人は0.4%減と個人の減少率の高いのが目立っている。 |
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(エ) |
従業者規模別でみると、4人以下の小規模店が全体の70.0%(一般
飲食店全体65.1%)となっており、8年の70.3%とほぼ同じで推移している。従業者規模別
に8年対比の増減率でみると19人以下の規模ではいずれの層も減少している。半面
、20人以上の階層は全部が増えており、20〜29人が33.6%増、30〜49人が61.2%増、50〜99人が76.5%増と、規模が拡大するにつれ増加率が高く大型店が増加する傾向にある。 |
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事業所数の推移 |
(参考) 一般飲食店全体 |
(単位:件、%) |
(単位:件,%) |
調査年 |
従
業 者 規 模 別 |
合
計 |
1〜4人 |
5人以上 |
平成3年 |
(72.3)
33,145 |
(27.7)
12,711 |
(100.0)
45,856 |
平成6年 |
(74.2)
33,786 |
(25.8)
11,777 |
(100.0)
45,563 |
平成8年 |
(70.3)
31,725 |
(29.7)
13,380 |
(100.0)
45,105 |
平成11年 |
(70.0)
29,768 |
(30.0)
12,728 |
(100.0)
42,496 |
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合 計 |
(69.1)
327,643 |
(100.0)
474,389 |
(70.0)
326,819 |
(100.0)
466,835 |
(65.7)
299,963 |
(100.0)
456,420 |
(65.1)
288,426 |
(100.0)
443,216 |
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資料:総務省「事業所・企業統計調査」
(注) ( )内は構成比である。 |
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(2) |
外食の花形から後退、進む構造的な「すし離れ」 |
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(ア) |
総務省「家計調査年報」によると、平成12年の1世帯当たりすし(外食)の年間支出額は16,929円で前年比3.9%減少(一般
外食費全体では2.0%増)となり、支出金額は昭和54年以降、最低水準となっている。 |
(イ) |
かつてはすし食といえば外食の花形であり、高嶺の花的な存在であった。しかし、長期的に見ると衰退の傾向が明らかである。昭和56年の17,499円を底に年間支出金額は平成3年の20,583円まで増勢をたどった。この10年間の伸び率は17.6%増であるが、しかし、すしを除いた日本料理、西洋料理、中華料理、飲酒代等の一般
外食の伸び率は55.0%増であり、すしの支出は他の飲食支出に大きく水を空けられている。
その後、平成3年から12年までの9年間は、前の10年間とは逆に傾向的に前年割れが続き、12年まで支出の減少が続いている。12年を3年と比べてみると17.8%減となり、この間のすしを除いた一般
飲食業の伸び率は3.2%増と対照的な動きを示している。この結果
、一般外食費全体に占めるすし支出の割合は、昭和56年16.2%、平成3年12.8%、12年には10.5%と、年を追うごとに後退している。
バブル全盛時代は着るものでも外食でも、高級ム−ドに浸っていた時代だが、平成2年ですらすしの支出は前年比1.4%増と低い伸び率であり、一般
外食費支出全体の5.1%増を下回っている。すしに対する支出は、このように景気の好不況にかかわらず減少していることからみて、構造的に「すし離れ」が生じていることがうかがわれる。さらに、近年、単価の高い伝統的なすし店から低単価の回転ずしや持ち帰りずしへ需要がシフトしていることも、支出減少に拍車をかけているといえよう。 |
(ウ) |
1世帯当たりの年間支出額を世帯主の年齢階級別
に平成12年についてみると、支出が最も多いのは50〜59歳で20,961円、次いで60〜69歳の20,550円となっており、全世帯平均の約20%増しとなっている。一方、支出が最も少ないのは29歳以下の世帯で8,609円、次いで30〜39歳が11,295円となっており、29歳以下の世帯は全世帯平均の半分に過ぎない。 |
(3)
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急がれる構造的な「すし離れ」への対応 |
消費者のすし離れは、最近の日本人がすしを嫌いになったわけではない。現在でもすし食は日本人の好きな食べ物のベスト5に確実に入る食べ物に違いない。従来型のすし店はさておき、回転ずし、持ち帰りずし店などの混雑している新業態店を多くみかけることでも十分に証明されよう。すし離れ現象は従来型のすし店で主に生じている傾向が強い。最大の原因は、ここ十数年の間に一段と巨大になった外食産業が、消費者の食生活の多様化や嗜好の変化をもたらしたことにある。日本料理の大衆化、新業態の出現、海外からも目新しい外食の進出などで、消費者の選択肢は好むと好まざるにかかわらず拡大している。従来型のすし店で食べるすしは、大衆のあこがれの座から多数の外食とほぼ横並びで選択される存在へと変化しているといえよう。この結果
、消費者のすしの需要が他の外食に流出するという、消費者の食生活の構造変化が生じているといえよう。したがって、不景気を理由に高級感、高料金のすし店を敬遠しているわけではなく、すし離れは景気の好不況とは関係ないところで主に起きている。このように「すし離れ」は業界を巡る構造的な変化であり、生半可な手段ではすし離れ現象は解決されない。本腰を入れた対応策が急務である。 |