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多様化する経営形態、売り物は低価格、種類の豊富さ、手軽さ |
最近では、回転ずし店、持ち帰りずし店、スーパー等の単品ラップずし等との競合が激化してきている。日本人としては、従来のすし店専業店に対するこだわりは捨て切れないものの、一面
では、顧客のニーズが変化し、新業態のすし店が成長していることも見逃せないであろう。
これまで、すし店といえば高級食、高単価、しかも気軽に入れる雰囲気がなく値段も分からないのが当然であったが、新業態の出現が消費者のニーズを変化させ、保守的な経営を固持していたすし業界に新風を吹き込んでいる。
回転ずし店、持ち帰りずし店、スーパー等の単品ラップずしなどの新業態に共通
しているのは、「価格が安い」、「値段が明示されている」など価格面
のほか、「日常的な食事として手軽に買える」、「単品ラップずしでは他の食べ物と同時に買える」など、気軽さや便宜性が評価されているようである。ただし、これらの新業態に対する味へ期待は極めて低く、味が落ちるのを承知の上で、「安い」から利用する傾向が強い。
本来、すしといえば、ネタ、技術が勝負どころであるが、新業態店では、低価格、種類の豊富さ、手軽さを売り物にしている点、伝統的なすし店と一線を画しているといえる。 |
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新業態店の特徴 |
ア |
回転ずしチェーン店 |
一時、同業間の競合激化や食材の高騰、他業態レストランの出現等により、頭打ちとなった「回転ずし」が再び台頭している。この理由としては、@消費者の価格に対する意識がより敏感となったことにより、「回転ずし」の値ごろ感が見直されたこと、Aチェーン店同士の合併等業界内の再編成が進んだことにより、顧客ニーズに合った店造りを可能とするだけの企業の体質強化、体力の向上が促進されたこと、B炊飯・保温機器、握り専用ロボットの周辺機器の普及、冷凍・解凍などの技術革新が進み、質的満足度の高い商品を提供できるようになったこと、Cチェーン店化が促進され、大量
仕入れにより、従来に比べ高品質の材料が低価格で提供できるようになった、などがあげられる。
回転ずしチェーン店が、すし業界で革新的な現象を巻き起こした要因の一つとして、高校生や大学生、若いOL、子供連れなど、これまですし店と無縁だった顧客層を開拓したことが指摘される。
従来型のすし店は、これらの層が入りづらい雰囲気を長年の間に自らが築きあげてしまってきている。いわゆる、伝統商法にあぐらをかいた「殿様商売」、「職人気質の経営気質」こそ、きっぷの良いすし屋だという自意識が根を張っていたといえる。「それが気に食わないのなら、こなくていいよ」という、殿様商売気質が、この業界の常識であった。
回転ずしチェーン店は、このように従来型のすし店が寄せつけなかったすき間層を新規需要客として開拓していった。回転ずし店は営業形態が異なるとはいえ、すし屋ですしを食べる楽しさを、国民大衆に植え付けたことは、日本の食分化改革の一断面
といえよう。 |
イ |
持ち帰りすし店 |
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(ア)
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持ち帰りすし店は、和風ファーストフード産業の一形態であり、すしを店内販売したり、店頭において出来合いすしのテイクアウトを行う専業店をいう。昭和47年に「小僧寿し」が、にぎりすしの全国FC展開をはじめたのがきっかけとなって持ち帰りすし店が脚光を浴び、新規参入のFC店を主体に店舗数が急増していった。現在では、日本の飲食業ランキングの上位
に名を連ねるほどに成長している新興成長企業もある。 |
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(イ)
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商品は、大きく分けて3種類からなる。最も多いのは、にぎりずしであり、次いですし専業店では取り扱いが少ない茶巾ずし、押しずし、地方特有のすしをアレンジした新型ずしなど特殊なすしが多い。さらに、のり巻、いなりずしなどの弁当風すし類が続く。 |
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(ウ)
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業態としては、にぎりずし、鉄火巻、かっぱ巻、いなりずしなど主力にしている店舗が多いが、なかには京樽に代表されるように、持ち帰りすしながら高級感を打ち出すために茶巾ずしなどを主体にした、専門化された業態も現われている。 |
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(エ)
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持ち帰りすし店は、FC形態など多店舗経営を通じて大量
仕入れによるコスト削減、店舗内作業の合理化による効率向上、職人技をパートの主婦が代行するなどで、すし専業店と異なった低価格システムを実現している。低価格に加え、待たずに一人前でも手軽に買え、家庭でゆっくり食べられるなどが評価され、主婦層の需要分野を開拓している。 |
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(オ)
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販売は、1人前からパーティ用の大皿の盛りつけまであり、しかも、容器は返却をせず廃棄できるプラスチック製であるため、企業の懇親会や打ち上げ、グループの会合、花見など野外パーティ用の大口需要に利用される機会が増えている。ただ、今後プラスチック製の容器は、ゴミ処理の問題から、容器改善が課題となるであろう。 |
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(カ)
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特に、主婦のうち30代、40代の年齢層が圧倒的に利用する割合が多い持ち帰りすしは、日常的な食事の一つとして手軽に利用する主婦層を取り込んだことは、いまや外食産業を抜いて成長している中食産業の火付け役ともいえる。 |
ウ |
宅配ずしチェーン店 |
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(ア)
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近年、市場規模は小さいものの徐々に世間の注目を集めている新業態である。「宅配ずし」の特徴点としては、@店造りの簡略化により初期投資が抑えられる、A一般
飲食店と違って、比較的立地を選ばないですむ、B高性能周辺機器(すしロボット等)や冷凍技術の高度化により、経験が浅くても比較的簡単にすしネタが扱えるようになった、C特に都市部のすし店において出前機能が弱体化しており、宅配ずしチェーン店はすき間産業としての成長性が見込める、などである。 |
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(イ)
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店によっては、持ち帰り用の物販スペースを持つ場合もあるが、飲食スペースはなく、店舗の実態も看板と出前用バイク等でようやく分かる程度のものが多い。宅配エリアは宅配ピザとほぼ同様で約1〜2km、一般
家庭における「イベント需要」をターゲットとし、取扱商品もオーソドックスなにぎりずしのパーティ桶が中心(3,000円〜5,000円)となっている。 |
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(ウ)
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具体的な販売促進策としては、チラシ、メニュー表の新聞折り込み、ポスティング等といったところが一般
的な手段である。また、午後6〜8時に注文が集中する傾向が強いことから、チェーン店によっては、全店にコンピユーターを導入し、前年同日の注文内容、注文実績等のデータを蓄積し、作業効率の向上に役立てているところもある。今後は「宅配ずし」同士での競合が激しくなり、撤退する店舗が少なくない。 |
(3)
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主婦は中食にすしを食べるのが好き |
ア |
「主婦がすしを食べる場所」のアンケート調査の回答(複数回答)を見ると、「回転ずし」が59%、「スーパーの総菜すし」48%、「持ち帰り用すし」45%と自宅に持ち帰って食べるすし類が上位
を占めている。一方、すし店内の飲食は35%であり、専業店からの出前31%と大差がない。どうやら主婦は安くて懐を心配せずに、気軽に食べられる回転寿司や持ち帰り用すしをより好む傾向が強いようである。 |
イ |
主婦の好きなネタ |
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(ア)
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主婦がすし屋でよく食べるネタ(複数回答) |
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東京
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− |
1位マグロ(赤身)65.4%、2位トロ61.5%、3位
アナゴ53.8%、4位イカ49.0%、5位卵46.2% |
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大阪
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− |
1位マグロ(赤身)55.0%、2位エビ50.0%、3位
イカ48.8%、4位ハマチ46.3%、5位ウニ43.8% |
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(イ)
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主婦が回転ずし店でよく食べるネタ |
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東京
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− |
1位マグロ(赤身)69.9%、2位トロ62.4%、3位
エビ48.4%、4位イカ44.1%、5位アナゴ39.8% |
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大阪
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− |
1位イカ57.1%、2位マグロ(赤身)54.1%、3位
エビ53.1%、4位巻き物46.9%%、5位ハマチ40.8% |
〔(株)ミツカングループ本社「おすしに関するアンケート調査」ミツカン情報ファイル No.59(平成12年)〕 |