クリーニング業-2001年
1 概況
2001年
(1) 多様な営業形態
  クリ−ニング業の営業形態は多様であり、法律上のクリ−ニング業に該当する業態と非該当業態とに分けられる。法律上のクリ−ニング業に該当する業種としては、普通 クリ−ニング店、リネンサプライ、ホ−ルセ−ルなどの業態がある。また、法律上のクリ−ニング業に該当しない業態として、クリ−ニング業の類似的な営業としてクリ−ニング取次店、コインランドリ−などの業態がある。ただし、これらの業態は営業施設の衛生措置等法的規制を受ける。
 普通クリ−ニング店は、自家処理施設を有し、主として家庭から出される洗濯物を扱うクリ−ニング店を指し、営業の形態は黒物のドライクリ−ニングと白物の水洗いによるランドリ−クリ−ニングとに分かれる。ただし、小規模店では近年になって、白物をホ−ルセ−ルへ外注に出す店が多くなっている。
 リネンサプライは、総務庁の日本標準産業分類の定義によると、「繊維製品を洗濯し、これを使用させるために貸与し、その使用後回収して洗濯し、さらにこれを貸与することを繰り返して行う」事業となっている。リネンサプライの需要分野は、ホテルのシ−ツ、タオル、バスタオル等、病院のふとんのほか毛布、毛布カバ−、シ−ツ等、事業所の作業服、飲食店の貸おしぼり等多岐に及ぶが、主力はホテルリネンと病院リネンである。
 ホ−ルセ−ルは、主に普通クリ−ニング店等から委託を受けた洗濯物を専門に処理する業者で、現在はワイシャツなど量 的処理の白物が受注の主力になっているが、毛皮、皮革などの特殊洗濯物の処理をする業者もある。
 クリ−ニング取次店は、自らはクリ−ニングをしないで、顧客とクリ−ニングを処理するクリ−ニング業者との間に立ち、洗濯物の受取り、引き渡しのみを行う店舗をいう。取次だけの業務だが、洗濯物を扱うため「クリ−ニング所」としての一定水準の衛生措置が義務づけられている。
 コインランドリ−は、硬貨投入式の自動洗濯機および乾燥機を設置して、顧客自身が洗濯機を自由に操作して洗濯を行う、セルフサ−ビス方式の店で無人店が多い。最近ではコインランドリ−内に「コイン・スニ−カ−・ランドリ−」としてスニ−カ−が洗濯できる洗濯機を設置している店もある。都道府県単位 で条例または要綱などにより衛生管理等面で規制、指導の対象となっている。
(2) 取次店・リネンサプライ業は増加
 平成11年における全国のクリーニング業の事業所数(取次店・リネンサプライを含む)は93,735件で、8年に比べ5,375件減少、5.4%減となっている。この内普通 洗濯業は11年89,354で8年に比べ5,293件減少、5.6%減、リネンサプライは11年4,381件で8年に比べ82件減少、1.8%減となっており、昭和56年以降増加の一途をたどっていたが減少に転じている。従業者数は403,587人で8年に比べ4.0%減となっている。内訳でみると、普通 洗濯業は、11年は303,096人で8年に比べ4.8%減、リネンサプライは100,491人で1.5%減となっている。普通 洗濯業、リネンサプライとも、事業所数、従業者数が減少している。1事業所当たりの従業者数は4.3人で、内訳でみると、普通 洗濯業3.4人、リネンサプライ22.9人とリネンサプライは普通 洗濯業の6.7倍となっている。
 なお、厚生労働省の「衛生行政業務報告」でみると、従業クリ−ニング師数は平成5年71,749人をピ−クに減少しているが、平成10年度(9年度から歴年が年度に変更)増加に転じたものの11年度には67,708人と再び前年比2.8%減となっている。
 平成8年から11年までの新設事業所数は8,413件で、一方、廃業事業所数は13,623件と廃業事業所数が新設事業所数を5,210件も上回っている。内訳でみると普通 洗濯業の新設事業所数は7,938件(開業率3.0%)、廃業事業所数は13,032件(廃業率5.1%)となっている。リネンサプライは新設事業所数475件(開業率3.9%)、廃業事業所数591件(廃業率4.8%)となり、いずれも廃業率の方が高くなっている。
 厚生労働省の「衛生行政業務報告」でみると、新規開業の施設使用確認件数は平成6年11,362件をピ−クに減少に転じ、一旦10年度に増加したものの、再度11年度6,938件と前年に比べ12.7%減少している。
 平成11年の法・個人別事業所数は、個人が63,847件(構成比68.1%)、法人は29,845件(同31.9%)となり、8年に比べると個人が7.0%減に対し、法人は0.2%増とわずかに増えている。内訳でみた特徴は、普通 洗濯業では個人割合が70.5%に対してリネンサプライは逆に法人が80.7%と多く、また8年に比べた増減率では、普通 洗濯業は個人7.9%減、法人0.3%増であるのに対して、リネンサプライは個人6.6%減、法人0.6%減と法・個人とも減少している。
 従業者規模別に洗濯業全体をみると、4人以下の小規模店が全体の83.4%(8年83.8%)となっている。これを8年と比べた増減率でみると、1〜29人層の減少に対して30〜199人層が増加しており、中小零細規模の減少、一方では中堅規模の増加と、対照的な推移を示している。1〜29人層の内訳では、1〜4人、5〜9人の小規模が5.8%減と減少しているのが目立つ。一方、30〜199人層では、30〜49人 3.7%増、50〜99人 2.0%増、100〜199人 1.7%増と、規模が拡大するにつれ増加率が低いという特徴がみられる。さらに200〜299人になると3.3%減と減少に転じている。
 厚生労働省の「衛生行政業務報告」でみると、取次店数は昭和50年以降、順調に増加し、平成11年度対昭和50年(平成9年から歴年が年度に変更)でみると3.0倍となり、一般 クリーニング所施設数の1.7倍を凌ぐ勢いで増加してきたが、11年度には減少に転じ、前年に比べ193件減少(前年比0.2%減)し、115,703件となっており、今後の動向が注目される。なお、一般 クリーニング所1施設当たりの取次店数は、11年度0.7店であり、昭和50年の0.4件店に比べ倍近くに増え、取次店数同士の競争が激しくなっていることがうかがわれる。
 参考までに処理施設を有する一クリーニング施設数の推移をみると、長い間増勢をたどってきたが10年度に減少に転じ、前年に比べ226件減少(前年比0.1%減)、11年度には減少件数が972件(前年比0.6減)に拡大し、施設数は163,027件となっている。10年度を境に2年続いての減少は、過去の増勢に比べ一時的な減少なのか、あるいは様相を異にする動きの兆候とみるのか、クリーニング業界はいま微妙な段階にさしかかっている。
クリーニング業の事業所数および従業者数の推移
(単位:件,人,%)
調査年 従 業 者 規 模 別 合 計 従業者数
1〜 4人 5〜 9人 10〜19人 20人以上
平成3年 (84.6)
82,994
(8.7)
8,513
(3.8)
3,39
(2.9)
2,851
(100.0)
98,079

380,953
平成6年 (84.7)
82,581
(8.3)
8,084
(3.8)
3,721
(3.2)
3,104
(100.0)
97,490

391,196
平成8年 (83.7)
83,012
(8.7)
8,640
(4.1)
4,035
(3.5)
3,423
(100.0)
99,110

420,516
平成11年 (83.4)
78,211
(8.7)
8,137
(4.2)
3,959
(3.7)
3,428
(100.0)
93,735

403,587

「事業所・企業統計調査」
(注)1〈 〉内は構成比である。
        2 リネンサプライ、取次ぎ店を含む。

(3) 強まるクリーニング代の節約
 総務省「家計調査年報」によると、平成12年の1世帯当たりクリーニング代支出金額は、12,456円で前年比9.6%減となっている。クリーニング代支出金額は4年19,243円をピ−クに下降し、4年対比で12年は6,787円も減少(35.3%減)となっている。また、消費支出全体に占めるクリーニング代の割合は、平成4年0.48%をピ−クに傾向的に後退しており、12年は0.33%と過去最低の割合となっている。長引く不況下でクリーニング代の節約が次第に強まっている傾向がうかがえる。
(4) 最多支出は50〜59歳世帯
 同調査で世帯主の年齢階級別支出をみると、最多は50〜59歳世帯で15,955円であり、全世帯平均の1.2倍となっている。次いで40〜49歳が13,221円、60〜69歳が12、832円と続く。一方、最少支出は29歳以下の5,251円であり、全世帯平均の42%と少ない。
2 最近の動向
(1) 大手企業の参入、既存企業の規模拡大、取次店は供給過剰
 近年、クリーニング業関連の機械開発が進むにつれ業界の機械化が促進され、労働集約的な業態から機械化による規模の拡大が可能な業態へと変化がみられる。これにより、従業員1人当たりの作業効率のアップが可能となり、このような規模の利益が働くことに着眼した大手企業の参入や、既存企業の規模拡大が相次いでいる。一方、取次店はこれまでの増勢に増勢をたどった勢いに衰えの兆しが見え始めている。家計調査の洗濯代への支出がバブル崩壊後の平成4年をピ−クに年々減少しているのに反し、取次店数は逆に10年度まで増勢を続けた。洗濯代への支出は、4年から11年までの7年間に28.4%減少したのに対して、取次店はこの間に13,562店(13.3%増)も増え、需要面 の後退に比べ明らかに供給過剰である。取次店は11年度になりようやく減少に転じているが、今後の整理淘汰の前兆であるのか微妙な段階に差しかかっている。また、取次店の供給過剰には、料金の値崩れを広げる引き金になる懸念が潜んでいる。
(2) クリーニング店離れ現象
 近年家庭用洗濯機の大型化や、「つけおき洗い」「浮かし洗い」「シャワーすすぎ」等デリケートな素材・衣類に適応した方式など開発機能の高度化のほか、ドライマ−ク対応型の洗剤の開発により、家庭洗濯の領域が拡大傾向にある。また、広い駐車場スペースをもち、店内に仕上台・染み抜機等を備え、日中はインストラクターのアドバイスが付いた24時間営業型セルフランドリー・ドライチェーン店の増加もみられる。  さらに、ここ2〜3年形状記憶・形態安定の衣類が登場(対象の衣料素材もポリエステル混から綿・麻製品さらに絹・毛製品へと拡大してきている)したことから、少なからず一般 家庭のクリーニング店への需要は減少傾向にある。
 (財)東京都生活衛生営業指導センタ−「環衛業に係る消費生活調査」(平成8年度)によると、クリーニング店への「依頼が減った」は18.7%で「依頼が増えた」の15.3%を上回っている。減少した理由としては、「自宅でのクリーニングを増やした」は87.3%に及んでいるためである。また、自宅でのクリーニングを増やした理由としては、「家計費を節約したい」が56.7%(複数回答)で最も多いが、2位 は「全自動洗濯機で十分可能である」が41.4%、3位は「家庭用ドライ洗剤を使っている」が28.0%を占めており、家庭洗濯の領域が拡大傾向にあることを裏付けている。
(3) 圧倒的に多い固定客
 かつてクリーニングは、集配人が各家庭を訪問し集配するのが一般 的であったが、人手不足、人件費高騰に伴い集配は減少し、逆にクリーニング店への持込みがほぼ当たり前になってきている。先の「環衛業に係る消費生活調査報告書」(平成8年度)によると、「クリーニング店に出向く」が80.4%で大半を占め、「自宅へ集配人が訪問してくれる」は15.0%に過ぎない。  クリーニング依頼先は「いつも特定の決まった店を利用している」が85.3%であり、「衣類の品目によって複数の店を使い分けている」はわずかに9.2%しかなく、また「店を決めていない」は3.9%と極めて少なく、固定客が圧倒的に多い。  
  では、クリーニング店を選ぶ理由はというと、「近くて便利」が58.7%で最も多く、毎日の生活に密着した利便性が優先されている。2位 は「汚れがよく取れている」が42.6%、3位は「料金が安い、割引がある」が36.6%、4位 は「仕上がりがていねいで美しい」33.4%、5位の「仕上がりが早い」32.6%と続く。男性・女性別 に特徴を見ると、女性は「汚れがよく取れている」「仕上がりがていねいで美しい」など品質に加えて「料金が安い、割引がある」への関心が強い。男性は「近くて便利」の割合が最も多く、次いで「仕上がりが早い」となっており、男性は品質よりは利便性、迅速を優先させている。  クリーニング店の競争はますます激しくなっているが、競争に生き残るには、価格競争よりも「汚れがよく取れている」「仕上がりがていねいで美しい」「仕上がりが早い」というクリーニング店本来の目的である"品質"向上に取り組むべきであろう。その上で合理化などによりコストダウンを図り、適正な値下げが可能になれば、それに越したことはない。単なる価格競争の展開は、長期的には自滅への道をたどるだけであり決して好ましい経営手法でない。
(4) 洗濯物滞留品問題への対応
 最近、クリーニング店や取次店の店先に、「仕上げ予定日から1週間以内にお引取り下さい」とか、「期限内を超過した場合は1点につき100円いただきます」などの貼り紙が多くなっている。これは共稼ぎ世帯の増加や、単身世帯の増加を反映して受け取りの長期化傾向に悩まされているためである。仕上げから1ヵ月を経過しても引取りのない洗濯物を業界用語で「滞留品」と定義しているが、「平成7年度クリーニングに関する消費者2万人意識調査」でみると「1ヵ月以上洗濯物を取りに行かなかったことがある」との消費者の回答は、3割を超えており、特に、布団・毛布・ジュータン・カーペット、コート類等の重量 洗濯物の滞留が目立っている。
 滞留洗濯物は、店内のスペースをとり作業能率を低下させるだけでなく、洗濯物の日焼け・変色等の品質管理上のトラブルを生じることにもなり、クリーニング業者の経営に問題を投げかけている。このため、顧客管理の徹底(受付用コンピュータの活用)、洗濯物受付時の顧客指導の徹底、滞留品に対する保管料の徴収等、業者の顧客への対応の工夫が、ますます必要となってきている。
(5) 環境保全への対応
 テトラクロロエチレンおよびトリクロロエタンについては、水質汚染防止法等により排水および廃棄物の規制が設けられており、クリーニング所における使用管理および処理の適正化が求められている。また、ドライクリーニングの溶剤として使用されているフロン113、トリクロロエタンについては、オゾン層保護の観点から溶剤の転換(製造は平成7年度末で全廃)を円滑に進めるべく融資・税制等において各種施策が講じられてきている。  さらに、コインランドリー等の多様化に伴い、営業施設の衛生管理においても、有機溶剤を使用するコインドライを中心に、各自治体における条例・要綱の制定による規制強化、特別 管理産業廃棄物管理責任者の設置を義務づけるなどの動きが広がりつつある。

3 経営上の問題点
(1) 最近の経営上の問題点
 国民生活金融公庫生衛企画部「生活関連企業の景気動向等調査」によるクリーニング業における最近の経営上の問題点は、1位 が「客単価の値下げ・値上げ難」である。2位は「利用者の好みの変化」であり、3位 は「大手企業の進出による競争の激化」である。
 調査対象である生活関連業種15業種の中で見ると、「客単価の値下げ・値上げ難」は四半期ごとの調査のたびに常に2位 になっており、過当競争の影響による値崩れが激しい面が現われている。
(2) 営業上の問題点
 先の「環衛業に係る消費生活調査報告書」(平成8年度)の中の「クリーニング店に対する意見、要望、不満など」により、消費者側から見た営業面 の具体的な問題点を取り上げてみよう。
基本的な技術の提供について
(ア)汚れをきれいに落して欲しい
(イ)信頼できる技術を磨いて欲しい
(ウ)仕上げを丁寧にして欲しい
受付、応対、受渡しについて
(ア)接客態度が悪く不愉快な思いをした
(イ)受付時に汚れの落ち具合などについて、十分な説明をして欲しい
(ウ) 受渡し時間の延長、コンビニでの受付、日曜日、夜間の受渡しを行って欲しい
 取次店の従業員は主婦、女子高生など営業に関しては素人が多いだけに、マニュアルを作成して、基本的な動作を十分に指導すべきである。単に受付、受渡しさえすればよいとの傾向が多く見られるなど、経営者自身がもっと、顧客への応対などの従業員管理を徹底する必要がある。また、最近は様々な繊維製品が販売されているので、それらについて見分ける研修を行う必要もある。
トラブルなどへの対応について
(ア)事故の際はスム−ズに補償して欲しい
(イ)保管に責任をもって欲しい
 「トラブルがよくあるので、大手の店に変えた。距離的には少し遠く、値段も少し高いが応対もよく、トラブルの際の補償制度もしっかりしている」との意見の記入があったが、トラブルが多ければ固定客が逃げてしまう。工程面 でのチェック体制の整備を徹底し、常にレベルアップを心がけトラブル防止を重視すべきである。保管については、「在庫が多すぎて見つけられないことがある。在庫管理をしっかりして欲しい」という要望があるが、在庫保管方法や滞留品の管理を普段から徹底しておく必要がある。
料金について
(ア)料金をもっと安くして欲しい
(イ)料金表を外に表示して見やすくして欲しい
 料金については、季節の変わり目などで一度に品数を多く出すときや、ワイシャツなど毎日出すものについては、価格を下げて欲しいという要望が強い。また。「安くてしかも早ければもっと利用する」「店によって料金に差がありすぎる」という意見もあった。「店舗の外部に料金表を掲示して欲しい」という要望もある。また、「最近は様々な素材による繊維製品が出回っているのにシャツという分類だけで料金を均一にするのはおかしい。第一、店員にそれらを見分ける目がないので店員教育を徹底し、適正な料金を取るようにして欲しい」という、手厳しい指摘もあった。
環境問題について
(ア)環境に悪い薬品を使わないようにして欲しい
(イ)ハンガ−の回収方法を徹底して欲しい
 薬品につては「仕上がり品に薬品独特の匂いがし、環境に悪い薬品を使っているのか不安」や「抗菌などやたらに恐ろしい薬品を使用しないで欲しい」など環境や身体に及ぼす品質の悪い薬品の使用を懸念する声があった。また、ハンガ−は回収方法を組合で統一して欲しいとの提言があった。地球環境問題は1業者のみの問題でなく、組合が組織的に対応措置を講じることが望ましいといえよう。
4 経営上のポイント
(1) 「クリーニング」から「衣類の総合サービス業」へ
 最近、クリーニングに対して、「安心を売る商売」「利用者である消費者の生活を支援してくれる商売」という意識が消費者側に生まれてきている。そこで今後の経営の一方向として「洗濯・乾燥・仕上げ」といった領域にとどまらず、消費者のニ−ズに対応するため事業領域の再構築を行うことが必要である。
 つまり、衣料等の保全にかかる総合サービス業として、高付加価値経営へ積極的に取り組むという転換の時代を迎えている。
 具体的な取り組みとしては、衣類の素材に合わせた適切なクリーニングメニューの充実、「店・従業員の質の向上」を通 した「衣料素材による取り扱い方法の習得」「消費者の服の取扱い方法の相談・コンサルティング」によるクリーニング・プラス・アルファの付加価値を店の魅力づくりに取り入れていくことなどが挙げられる。
(2) 脱価格競争、小回りを利かした技術・サービスの提供
 「平成8年度環衛業に係る消費生活調査報告書」〔(財)東京都環境衛生営業指導センター〕によると、クリーニング店の選択理由の上位 3項目は、「近くて便利」(利便性)、「汚れがよく取れている」(技術・品質への信頼感)、「料金が安い、割引がある」(価格)であった。利便性や技術が優先しており、「価格」の要因に対する選好度は二の次となっている。
 さらに、「クリーニング店に特に頼みたいものは」の質問に対して「プリーツ・防水・撥水等の特殊加工」「アイロン掛けだけ」「シ-ズンオフ衣料品保管」「衣類の補修」等の要望が上位 にとなっており、小規模店特有の小回りをきかしたきめの細かいサービスへのニーズの高さがうかがわれる。
 これらは、普通クリーニング店が、積極的な情報伝達による技術PR等を通 した「品質」の提供により、大手業者の価格を中心にした競争戦略と差別 化を図っていける可能性を示唆している。
5 個別企業の事例
☆ 割引率を小さくして固定客増加を狙う。背景に徹底した顧客管理
 
  • 立地:東海地区 本店兼クリーニング所1店ほか直営店1店。本店は市内有数の住宅地を抱える幹線道路沿い
  • 創業:業歴75年以上
  • 企業形態:株式会社(資本金 1,000万円)
  • 従業者:8人(うちパ−ト5人)
  老舗のクリーニング店だが、商圏内で十分なシエアを確保しているとはいえず、顧客管理の杜撰さや、新規開発能力の弱さがあった。また、割引に頼った宣伝・広告は、割引の回数を多くする結果 を招き、利益減少の原因となっていた。以下、これらの問題点に対しての工夫をみてみよう。
(1) 商圏内の顧客の特性を把握
   コンピュ−タ−レジを用いて、徹底したデ−タに基づく顧客管理を行い、利用客の商圏距離を確実に把握することに努めた。その結果 、広告枚数や折り込み地域の見直しができ、販売費削減の効果が現れてきた。
(2) サ−ビス内容をわかりやすく表示
 サ−ビス内容を有料・無料を含めてわかりやすく表示し、他店との差別 化を図ったところ、来店回数が増え固定客に結びついた。サ−ビス内容は午後1時受付までの当日仕上げ、ハンガ−金券による回収、品物の早期引取り時の割引券等である。
(3) 通常割引率を小さくし、リピ−ト客増加を図る
 リピ−ト促進策として利用方法次第で得になるようなシステムに変更。例えば、通 常割引率を小さくし、その代わりに条件に応じて各種の割引券を渡したり、割引対象外の品物を設定するようにした。この結果 、サ−ビス品目当ての顧客は減少したが、全体的な割引率は12%から8%に改善された。また、一点当たりの単価も上昇した。
(4) 年間利用の増進策
 月3,000円以上利用する顧客へのダイレクトメ−ルにより感謝文と金券を送るようにしたところ、割引ダイレクトメ−ルに比べて回収率がアップした。

 老舗として知名度に頼った甘えによる曖昧な経営を抜本的に見直した。新たな発想による顧客管理、割引等サ−ビス内容の見直しを通 じて、固定客の増加に結び付けている。特徴は割引の扱いである。割引率は小さくても、利用態度に見合った特典は、顧客に継続利用を意識させ、リピ−ト客の増加につながることを示唆している。


資料
  1. 総務省「事業所・企業統計調査」
  2. 総務省「家計調査年報」
  3. (財)東京都生活衛生営業指導センター「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」
  4. 全国生活衛生営業指導センタ−「成功事例調査」
  5. 金融財政事情「企業審査事典」
  6. 中小企業リサ−チセンタ−「日本の生活関連サ−ビス業」
  7. 中央法規「生活衛生関係営業ハンドブック2001」(生活衛生関係営業資料)
  8. 国民生活金融公庫生衛企画部「生活関連企業の景気動向等調査」
  9. 国民生活金融公庫「経営の工夫事例集」−クリ−ニング業−(平成12年度生活衛生関係営業活性化委託調査事業」
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