喫茶店-2003年
1 概況
2003年
(1)
事業所数、従業者数とも一般飲食店全体の中で最大の減少率
 ここでいう喫茶店とは、主としてコ−ヒ−、紅茶、清涼飲料などの飲料および簡単な食事をその場所で飲食させる店をいう。
  喫茶店は、戦前はコ−ヒ−通の常連が通うモダンな場所であったが、戦後は“純喫茶”の名称で、雨後の竹の子のように、東京はおろか地方都市にまで波及していった。サラ−リ−マン、大学生等に“さてん”の愛称で親しまれるほどに大衆化していったが、昭和29年前後には、銀座にジャズ喫茶ができ、売り出す前の“ハナ肇とクレ−ジキャッツ”が出演していたり、また、シャンソン歌手が出演するシャンソン専門の喫茶店のほか、新宿には「うたごえ喫茶」など異色な喫茶店も現れ、喫茶店ブ−ムの様相を呈していった。
 この喫茶ブ−ムも、昭和56年をピ−クに過当競争から下降をたどりだした。さらに、近年は喫茶業務も行うファミリ−レストランなど異業種との競争、さまざまな味のコ−ヒ−を提供するセルフサ−ビス方式のコ−ヒ−ショップの店舗数の増加や、自動販売機の普及など、多種多様の競争相手の出現が、純喫茶の転廃業に拍車をかけていった。また、最近では、既存の純喫茶とはまったく業態が異なったまんが喫茶、インタ−ネットカフェなど社会の動きを反映した喫茶店が増えている。
  平成13年の全国の喫茶店の事業所数は88,924店で、11年と比べると5,327店減少しているが、8年から11年にかけての7,686店減少に比べ減少幅が大幅に縮小している。減少率は5.7%減(一般 飲食店全体0.1%減)となり、一般飲食店のなかでは、すし店に次ぐ高い減少率となっている。昭和61年以降減少に転じた事業所数は、ピ−ク時の昭和56年と平成13年とを比べると、この20年間に65,703店も姿を消したことになる。
 従業者数は329,198人で、11年に比べ0.6%減(一般飲食店全体6.5%増)と、8年と11年対比の9.5%減に比べ減少率が大幅に縮小している。1事業所当たりの従業者数は、3.7人で一般 飲食店全体の6.6人を2.9人も下回っている。
  平成13年の法・個人別事業所数は、個人が73,659店(構成比82.8%)、法人は15,027店(同16.9%)となり、一般 飲食店の各業種の中で個人の構成比が最も高い。事業所数を11年と比べると個人は6.6%減、法人は3.0%減と個人の減少率が極めて高い。

 事業所数を従業者規模別でみると4人以下が全体の79.1%と一般 飲食店全体の62.7%を大幅に上回っている。これを9人以下でみると93.2%と大半が小規模店で占められている。
  事業所数を従業者規模別に11年と比べると、1〜4人は5,149店減少(6.8%減)で全体の減少数5,327店の96.7%に及んでいる。5〜9人も506店減少(3.9%減)し、9人以下が5,655店減少と小規模層の減少が目立っている。一方、10人以上は20〜29人主体にわずかに307店増(5.3%増)に過ぎない。

 

事業所数の推移 (参考) 一般飲食店全体
(単位:店,%) (単位:店,%)
調査年 従業者規模別 合 計
1〜 4人 5人以上
平成6年 (81.1)
93,548
(18.9)
21,869
(100.0)
115,417
平成8年 (79.2)
80,732
(20.8)
21,205
(100.0)
101,937
平成11年 (80.1)
75,512
(19.9)
18,739
(100.0)
94,251
平成13年 (79.1)
70,363
(20.9)
18,561
(100.0)
88,924
従業者 合 計
1〜4人
(70.0)
326,819
(100.0)
466,835
(77.7)
299,963
(100.0)
456,420
(73.8)
288,426
(100.0)
443,216
(62.7)
277,694
(100.0)
442,883
資料:総務省「事業所・企業統計調査」
(注)( )内は構成比である。

 

(2)
喫茶代支出額は2年連続減少、喫茶需要を支えるのは中高年層
 総務省「家計調査年報」によると、平成14年における喫茶店への1世帯当たりの年間支出額は5,164円で、前年に比べ1.3%減となり、平成元年のピーク以降一進一退をたどっていたが、10年以降連続して減少している。
  同調査による世帯主の年齢階級別の支出をみると、支出金額が最も多いのは50〜59歳5,863円、次に60〜69歳で5,459円、さらに70以上が5,167円と続いている。一方、支出が少ないのは29歳以下で3,858円、次いで30〜39歳が4,245円となっている。喫茶需要は、主に中高年、高齢者層に支えられていることがわかる。ちなみに、50〜59歳世帯の支出は、最若年世帯に比べ1.5倍の支出となっている。
  同調査による都市別の支出額では、1位は岐阜市で15,525円で“喫茶店好き”と巷間で話題にされる名古屋市を追い抜きトップに躍り出ている。2位 が名古屋市13,707円、3位は神戸市8,703円で、49都市のうち、10,000円を超えているのは岐阜市、名古屋市のみである。一方、少ない順にみると、最少額は青森市で2,022円、次は秋田市2,222円、鹿児島市2,312円となっている。
 最多支出の岐阜市は全国平均5,164円の3倍、名古屋市は2.7倍で、岐阜、名古屋の両市では、喫茶店の社会的な存在価値が依然として高く、市民が憩いの場としての愛着を感じていることがうかがえる。最少支出の青森市は、全国平均の39%の水準であり、また、岐阜市に比べ13%台の支出に過ぎず、都市ごとの支出格差が著しい。概して、支出が少ないのは東北地方と九州地方の都市である。
2 最近の動向
(1)
従来型純喫茶の存在感低下の一方、他業態との競争激化
  現在は、多種多様のコ−ヒ−を飲む場所が増え、純喫茶と呼ばれる従来からの専門店分野への侵食が激しくなっている。その背景には、次のようなものが指摘できる。@家庭やオフィスで使用できる抽出器具の普及、Aインスタントコ−ヒ−の著しい普及、B缶 コーヒー、自動販売機の普及、C熱湯を注ぐだけで約1分間でコ−ヒ−が抽出できるドリップオン式商品の参入、Dオフィスコーヒー・サーバ−の浸透、Eファーストフード店やファミリーレストラン等が喫茶店の役割を兼ね合わせるようになったこと、F 新業態の大手喫茶店や外資系の喫茶店の台頭が著しいこと。
 このような傾向から、本格的なコーヒーは喫茶店で味わうものという社会通 念が後退した。さらに、車社会化に対応した駐車場の確保が困難なことや、喫茶店愛好家であるサラリ−マンがコ−ヒ−を飲みながらゆっくりとタバコをくゆらせる“休息、憩い、やすらぎ”の時間が取れる余裕がなくなり、従来型の純喫茶店が果 たしてきた役割、存在感が低下していることは否めない。
(2)
従来型純喫茶店に代わり、成長が著しい新業態の大手喫茶店
  外食産業の中で新業態の大手喫茶店の成長が著しい。最大手は、東証1部上場へ昇格し、成長著しいドト−ルコ−ヒ−で、首都圏中心に低価格コ−ヒ−ショップを展開し、ハワイにコ−ヒ−農場まで所有している。次いで珈緋館(マナベ)、ユ−シ−シ−フ−ドサ−ビスシステムズ、シャノア−ル、マイアミ、ア−トコ−ヒ−などが続く。
 異色なのは「アフタ−ヌ−ンティ−」等独自ブランドのバッグや生活雑貨等の卸・小売のサザビ−である。紅茶が売り物の「アフタ−ヌ−ンティ−・ティ−ル−ム」で女性層の人気に支持されているが、コ−ヒ−専門店にも進出し、世界最大のコ−ヒ−チェ−ンの日本法人スタ−バックスコ−ヒ−ジャパンを関連会社として設立し、国内におけるエスプレッソの先駆者として直営店を全国展開中であり、平成15年3月現在で474店に及んでいる。
 また、ファーストフードの草分け的な存在で、最大の外食チェ−ンの日本マクドナルドなど異業種からの参入や、ベ−カリ−レストランの新業態を開発したサンマルクが、レストランで人気の高い“焼きたてのパン”を低価格のコ−ヒ−と同時に提供する、異色のカフェ店の展開に意欲を燃やしている。その他、異業種からネット喫茶への進出のほか、漫画喫茶に紳士服小売業のゴト−(店頭登録)が参入したり、今後は若者を狙って異色を売りものにした喫茶店の展開が増えそうである。
(3)
ひまつぶしに最適と若者に好評の漫画喫茶
  最近の漫画喫茶の施設は充実している。喫茶店というが、飲み物は、ドリンクバ−形式で何種類もの飲み物が飲み放題であり、すべてセルフサ−ビになっている。飲み物からみれば、異色の喫茶店である。従来型の喫茶店と異なる点はほかにもいろいろとある。まず、各部屋は一つ一つ個室形式になっている店が多い。各部屋にはテレビ、ビデオ、CD、ゲ−ム機が置いてある。極め付けは椅子がマッサージチェアになっていることである。漫画喫茶というが、本は漫画だけではない。小説や雑誌も備えてある。希望次第ではパソコンが設置してある部屋が使用でき、インタ−ネットが使い放題になっている。飲み物のほかに多くの種類のサ−ビスを付加して、料金は1時間当たり400円程度であるから格安だ。個室で好きな飲み物を飲み、そして好きな器材を使用し、あるいは本を読んだりで、喫茶店というよりは、まさに“ひまつぶしの場所”の新業態といえる。今や、若者の感覚は、ひまつぶしのためにパチンコに行くような気分で、漫画喫茶を選択している傾向がうかがわれる。
(4) 伸びるか異色の和・中国茶カフェ専門店
   喫茶店といえばコ−ヒ−が主力だが、最近は日本茶専門のカフェが東京、京都、大阪などの大都市で生まれ、中国茶専門カフェも誕生している。これは、「和」ブ−ムや健康志向への高まりの反映と思われるが、まだ数は少ないものの、静かなお茶カフェブ−ムの到来との見方もある。日本茶カフェでは、煎茶、玉 露、抹茶などを提供するが、従来の和風喫茶と異なるのは、新感覚をベ−スにした店づくりをしている店が多いのが特徴である。例えば、日本茶専門のカフェでは、内装は洋風にしてアメリカのカフェ風にしたり、器も日本古来のものを避けて現代美術風のオリジナルの器を用いたり、和風だがモダ−ンなデザインを施したり、日本古来のお茶の提供場所なのに現代風の雰囲気の演出を凝らしたりしている。
3 経営上の問題点
 国民生活金融公庫の「生活関連企業の景気動向等調査」による喫茶店の経営上の問題点を見ると、最近、最も多いのが「利用者の好みの変化」であり、2位 は「値上げ難」、3位は「大企業の進出による競争の激化」、4位は「客単価の低下」である。この調査でみると、最近は顧客の好みを喫茶店主が把握しにくいほど、短期間に変動していることがうかがわれる。また、平成12年以降、「大企業の進出による競争の激化」の割合は、平成11年10〜12月期はわずか7%だったものが、次第に高まり、15年7〜9月期は22%に及んでいる。大企業の進出対策は、従来型の純喫茶にとってはゆるがせにできない大きな問題である。
4 経営上のポイント
  昭和56年までの喫茶店のブ−ム的な人気とは対照的に、近年では、従来型の純喫茶店は新業態の競合店の増加で、各個店の経営はますます厳しい時代を迎えている。今後、従来型の純喫茶店が大手喫茶チェ−ンに対抗するのには、顧客のニーズをきめ細かに吸収し、純喫茶店にしか出せない持ち味、特色を強調した方策を展開する以外に生き残る道はないであろう。以下、参考までに、東京都生活衛生営業指導センターの「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」により経営上のポイントを掲げてみよう。
(1)
多種多様の利用動機と立地条件を組み合せた経営方針の明確化
  喫茶店の利用目的は、男性では多い順に「仕事上の打合せ」、次いで「おいしいコ−ヒ−等を飲みたい」、さらに「休息、憩い、やすらぎ」「待合せ」「時間つぶし」などのほか多岐にわたるが、ビジネスに関連した利用が多くみられる。一方、女性では「おしゃべり、雑談」「おいしいコ−ヒ−等を飲みたい」「待合せ」「休息、憩い、やすらぎ」の順位 だが、利用目的は上位のこの4項目に集中している。男女別で利用目的の違いがあるものの、喫茶店の利用動機は多種多様であり、個人個人の好みの複雑さが現れている。
 また、喫茶店を利用するときの店の選択方法は、男性では1位が「近隣商店街」、2位 は「駅前」、3位が「デパ−トやショッピングセンタ−内」の順となっている。女性は、1位 が「近隣商店街」で男性と同じだが、男性3位の「デパ−トやショッピングセンタ−内」が2位 に上がり、「駅前」が3位に後退している。女性の喫茶店利用は買い物に直結しているようである。
  このように男女によって利用動機が異なり、また、店の選択が異なるので、立地条件や主要顧客層に応じて、店内の雰囲気づくりなどに留意する必要がある。客層が店の立地からみて何を望んでいるのかを把握し、多種多様の利用動機に合わせた経営方針を打ち出し、顧客にアピ−ルすることが大事である。
(2)
コーヒー、紅茶等の味へのこだわり
  先の利用目的でみると、「おいしいコ−ヒ−等を飲みたい」は男女とも2位 にあるが、喫茶店で注文するのはホットコ−ヒ−が71.8%と圧倒的に多く、喫茶店に求められるのはコーヒーたての専門家がいれた味へのこだわりである。喫茶店の専門性を活かした本物の味や香りのコ−ヒ−を追求したり、また、コ−ヒ−の品ぞろえを豊富にし、専門性を打ち出すことが喫茶店の本命である。店主のコーヒー、紅茶に対するうんちくや情熱が感じられるような店がコ−ヒ−愛好家に支持されよう。
(3)
メニューのオリジナリティーを工夫
 マンネリに陥りやすい軽食メニューに独自色を出すことも重要である。しかし、一般 的に喫茶店の厨房設備は、電子レンジ、ガスコンロ、冷蔵庫等がある程度で、通 常の飲食店に比べるとはるかに軽装備であり、また、しっかりとした調理技術を持つ店舗は少ない。確かに喫茶店で軽食を注文すると、加工食品をあまり手を加えることなく加熱する程度で提供しているケ−スが少なくない。メニューを単に広げるのではなく、むしろ特化し、手作りの味を出すなどにより、その店のオリジナリティを工夫することが望ましい。
(4)
顧客の低価格志向、簡便志向への対応
 近年、顧客の低価格志向、簡便志向等のニーズの多様化に伴って、ドトールコーヒー等に代表される150〜200円といった低価格のコーヒー店が、急速にチェーン展開して、店舗数を増やしている。また、ファーストフードの店では、いずれも低価格でコーヒーを提供しており、簡便なコーヒーショップとしての役割を果 たしている。このような新業態の参入が高まるなか、従来の喫茶店のコーヒー価格が相対的な割高感を消費者にもたれており、低価格で気軽にコ−ヒ−が飲める新業態へ喫茶店利用客が移動したり、また、新たな需要層を開拓し吸引しているのも事実である。
  確かに顧客が喫茶店を選択する際に価格や簡便さは重要なポイントである。しかし、顧客は喫茶店に対し、「コーヒー+アルファ」に対し対価を支払うのであり、このプラスアルファの部分を、喫茶店でなければ出せない独特のものとして持続し続ければ、今後とも喫茶店の存在価値はなくならないと思われる。
(5) 「喫茶店という空間で過ごす時間」の快適さ
  顧客が喫茶店を利用する動機や顧客が喫茶店に求めるニーズは多種多様である。しかし、これらに共通 する点は「喫茶店という空間で過ごす時間」の快適さ、満足感にあるといえよう。そのためには顧客がくつろげる雰囲気をいかにして醸し出すかにかかっている。
 そこでまず重要なのは、顧客にとって喫茶店が親切なもてなしを感じられる場所であるかどうかであろう。それには、まず店主自身が最上のもてなしの心構えを発揮することである。次いで、店主の人柄や個性や従業員の接客態度などが大事であり、経営者として顧客の満足度を、いかに高められるかに腐心すべきである。これらは店の雰囲気へ反映されるからである。特に小規模であればあるほど、店主と顧客とのなごやかな会話の有無が店全体のム−ドに与える影響が大きく、経営面 でないがしろにできない要素である。
 さらにいうまでもなく、店舗の清潔感や、食器や調度品はもとより照明、レイアウト等にも気を配ることが大事であり、これらについては定期点検のスケジュ−ルを組んでチェックすることが望ましい。 「環衛業に係る消費生活調査報告」は平成7年度以降行われていない。
5 工夫している事例
(1) 研ぎ澄まされている喫茶店に対する名古屋人の目
 

  名古屋市は、実に喫茶店が多い。これは名古屋人には古典的な「借金は悪」の意識が残っていることと関係がある。家屋敷の資産こそわが命という伝統的・古典的な財産管理思想が未だに支配しているためか、自分の身の丈の範囲の経営に固執する傾向がある。中小企業でも極力借入金は控える。例えばNHKの「現代の県民意識調査」によると、「普段の生活を切り詰めてもお金や財産を残したい」が全国平均を上回り、合理的で堅実な気風が見見受けられると指摘している。このような気風が手伝ってか、名古屋に仕舞屋活用型の喫茶店が圧倒的に多い。つまり、所有している不動産は遊ばせずに、身の丈の範囲内で活用するわけである。

 一方、喫茶代の支出も多い。総務省の家計調査でみると、名古屋市は世帯の喫茶代支出は昨今でこそ、隣の岐阜市に抜かれてしまったが、長年全国一の座を占めていた。喫茶店への支出が多いのは、家計の支出ばかりでなく、企業の費用としての支出も多い。喫茶店を企業の応接室代わりに使うからである。名古屋の喫茶店は、昼間でもコ−ヒ−を頼むと何かしらのサ−ビス品が付いてくる。会社内で女性社員にお茶を入れさせると、光熱費、茶の葉に人件費が加わり経費がかかる。それよりも、来客者を外部の喫茶店に連れ出した方が、サ−ビス品がつきやや豪勢な接待にみえる点、コスト安であるという考え方が支配しているという説がある。

  それだけに、喫茶店を使う消費者、サラ−リマンの喫茶店に対する目は研ぎ澄まされている。以下、紹介する事例企業は、愛知県喫茶業環境衛生同業組合(現在、愛知県喫茶生活衛生同業組合)の理事たちの出資によって作られ、組合員の中から専任された者が経営者となっている。それだけに、名古屋人の喫茶店に対する目を多分に意識した工夫が施されているといえよう。

(2) 企業概況
 
  • 立   地 :名古屋市 官庁街
  • 業   種 :喫茶店
  • 創   業 :昭和53年
  • 従 業 者 :7名(うちパ−ト・アルバイト2名
  • 経営理念 :「サ−ビスに関する徹底教育」)
    創業時は、宮崎市内の飲食店街の小さな借用店舗から出発。昭和59年に現在地に店舗を建設、44歳のときであった。当時は銀行に信用がなく、建設資金の調達に並々ならぬ 苦労をした。当初、夫婦と従業員1名の合計3人の小規模経営は、その後順調に発展し、現時点では従業者15名までに成長している。当店の特徴は、顧客数に占める女性の割合が80%にまで達していることである。特にアイドルタイムは40歳代の女性が圧倒的に多く、女性に非常に人気のある異色の喫茶店である。では、どのような経営戦略の展開によって、女性客を軸に成長してきたのか、その要因を以下にみてみよう。
(3) 態度研修の浸透による風通しの良い店づくり
従業員に対し、顧客の前で絶対に私語をしないことを従業員教育として徹底している。営業中の従業員同士の私語は顧客に不快感を与える。それよりも業務専念義務に欠けるからである。
従業員間のトラブルが多いので、この対応策として、経営責任者は常に従業員に関心をもち、問題点の発掘に努め解決に当たることにしている。これにより従業員とのコミュニケ−ションを図ることができ、相談の窓口を広げることが可能となっている。また、従業員の定着率向上にも寄与している。
従業員に対してより多くの顧客を増やすことと、顧客に親切心をもって接するよう教育している。
メニュ−の多様化を図る一方、極力コ−ヒ−などの価格を現状のままに据え置くため、仕入れ原価などの管理を徹底している。また、いかに合理化してコスト削減を図るかに努力を積み重ねている。このため、食品洗浄機、給水設備などの省力化設備投資を行っている。
官庁街という好立地のうえに、喫茶店好きの名古屋人の目を意識した接遇向上の効果 により、客席回転率は8回転であり、工夫事例に寄せられた喫茶店の2〜4回転と比べ、稼働率は極めて良好である。


資料

  1. 総務省「事業所・企業統計調査」
  2. 総務省「家計調査年報」
  3. (財)東京都生活衛生営業指導センター「環衛業に係る消費生活調査報告書(平成7年度)」
  4. (財)東京都生活衛生営業指導センター「環境衛生関係営業の実態と今後のあり方」(喫茶飲食)平成11年度
  5. 全国生活衛生営業指導センタ−「成功事例調査」
  6. 国民生活金融公庫「生活関連企業の景気動向等調査」
  7. 金融財政事情「企業審査事典」
  8. 中小企業リサ−チセンタ−「日本の飲食業」
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