(1) |
開業ブ−ム持続、多い新規参入に成長著しい中規模層 |
ア |
美容とは、パ−マネントウェ−ブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすることをいう。また、カッティング、染毛も美容の範囲に含まれる。
美容師免許は、高等学校を卒業した後に、厚生労働大臣の指定した美容師養成講座で昼間過程2年、夜間過程2年、通
信過程3年以上にわたり、必要な学科、実習を終了し、さらに美容師試験に合格した者に与えられる。
美容院におけるサ−ビスの提供は、1人の美容師が1人の顧客に施術を行うが、大半が手作業であって典型的な労働集約型であり、美容機械等による労働生産性向上には限界がある。
美容師の資格を修得し、営業施設を設けて、使用開設届を提出し営業許可が取得できれば開業できる。開業に必要とされる資金は比較的少なくてすむので新規参入のハ−ドルは低く、過当競争の傾向にある。最近は、女性の職場だったところへ、若手の男性美容師の新規参入が増えており、また、店舗形態も従来型から斬新な店づくりに変化しており、美容院に対するイメ−ジが変わってきている。 |
イ |
平成13年の全国の美容業の事業所数は180,085店で、11年と比べると6,107店増と大幅に増えている。これは、8年対比11年の2,376店増の2.6倍に及び、長引く不況にもかかわらず美容業界は昭和61年以来の開業ブ−ムとなっている。
従業者数は、479,061人で11年に比べ8.6%増と、8年対比11年の1.7%増を大きく上回っている。1事業所当たりの従業者数は、2.7人であり、理容業の2.1人と大差がない。 |
ウ |
平成11年の法・個人別事業所数は、個人が149,693店(構成比86.0%)、法人24,272店(同14.0%)となり、8年に比べると個人が0.7%増と微増なのに対し、法人は5.6%増と高い伸び率を示しており、経営形態について意識の変化がうかがわれる。 |
エ |
従業者規模別でみると、4人以下の小規模店が全体の87.2%(理容業95.2%)となっており、平成8年の87.4%とほぼ同じである。増減率を平成8年と比べると、50〜99人、200〜299人が減少している以外はすべての規模で増えている。5人以下は1%台の微増だが、10〜19人11.5%増、20〜29人15.5%増と中規模層の伸びが著しい。
美容業の事業所数と美容師数の推移 |
理容業の事業所数と美容師数 |
(単位:店,%) |
(単位:店,人) |
調査年 |
従業者規模別
|
事業所数
合計 |
1〜4人 |
5人以上 |
平成 6年 |
(88.7)
148,665 |
(11.3)
18,900 |
( 100.0)
167,565 |
平成 8年 |
(88.6)
149,988 |
(11.4)
21,614 |
( 100.0)
171,602 |
平成11年 |
〈87.2〉
151,662 |
〈12.8〉
22.316 |
〈100.0〉
173,978 |
平成13年 |
〈86.2〉
155,232 |
〈13.8〉
24,853 |
〈100.0〉
180,085 |
|
理容業の
事業所数 |
美容師数
(人) |
126,026 |
324,566 |
125,564 |
329,995 |
123,940 |
345,115 |
122,859 |
368,057 |
|
資料: 総務省「事業所・企業統計調査」、厚生労働省「衛生行政業務報告」
(注) 1 ( )内は構成比である。
2 参考欄の美容師数は年度末現在である。 |
|
|
(2) |
増減の波がある新規参入件数だが、美容師数は過去最高の更新続く |
ア |
営業許可使用確認の新規件数(厚生労働省「衛生行政報告例」)は、平成13年度は10,229件で前年に比べ1.1%減となった。7年に初めて1万件を超えたが9年には9,007件(前年比11.9%減)に落ち込み、再び10年、11年と増え、11年には11,382件(前年比13.3%増)と高い伸び率を示した。しかし、12年度、13年度と続けて減少している。 |
イ |
平成13年度末現在の全国の美容師数は、368,057人となり、前年に比べ3.7%増となっている。美容師数は、平成4年以降、毎年過去最高記録を更新し続けている。増加率は、7年以降1%以下で推移していたが、13年度は昭和56年(暦年調査)以降、最高の伸び率をみせている。 |
ウ |
新規免許の美容師数は、13年度は27,612人(前年比13.5%増)と大幅に増加している。また、新規件数の水準も、平成10年度の16,451人を境に底上げしており、12、13年度と続けて27,000人台を維持している。いまや、美容師は男女共通
の人気業種になっている。 |
(3) |
増加に転じたパ−マネント代とセット代 |
|
「家計調査年報」(総務省)によると、1世帯当たり年間のパ−マネント代の支出金額は、平成14年8,252円で前年に比べ17.0%減と大幅に後退している。パ−マネント代の支出は6年から減少に転じ、減少率は次第に縮小してきたが、14年には再度拡大に転じている。
セット代は、581円で前年に比べ1.3%増であり、昭和63年以降減少していたが、14年ぶりに増加に転じている。しかし、支出額はピ−クの昭和62年の1,722円に比べると、3分の1の水準に過ぎない。
カット代は、5,999円で前年に比べ0.2%減となっている。カット代は12年まで毎年増え続けてきたが、13年から減少に転じている。 |
(4) |
パ−マ代支出が最も多い70歳代 |
|
同調査により世帯主の年齢階級別に14年の世帯当たり年間パ−マネント代支出額をみると、最多支出は70歳以上世帯の13,797円である。支出額は、この70歳以上を頂点に年齢が若くなるにつれ少なくなっている。最少金額は29歳以下世帯の3,438円であり、最多支出の70歳以上に比べ約4分の1に過ぎない。カット代の最多支出は、50〜59歳6,714円、40〜49歳6,582円、70歳以上5,442円である。美容業にとって中高年の女性市場は、まさに「ゴ−ルデンマ−ケット」であるといえよう。 |
(5) |
「パ−マネント代」を追い抜いた「他の理・美容代」の支出 |
「家計調査年報」(総務省)の美容関連の支出項目に「他の理・美容代」がある。この支出の内容は、美顔術料、エステティック、衣装の着付け、化粧代、なでつけ代、毛染め代、洗髪代、サウナ代が含まれているが、大半が美容業に関連する支出である。これらに対する支出は、平成7年以降一進一退で推移していたが、11年以降は支出増に転じており、14年は前年に比べ9.8%増と大幅に増加している。この「他の理・美容代」の支出は、7年を境にパ−マネント代を追い抜き、14年には14,202円で「パ−マネント代」8,252円を5,950円も上回っている。このような事情からみて、今後の美容業界のあり方や変革を示唆するものとして注目されよう。 |