理 容 業-2005年
1 概況
2005年
(1) 平成16年度の店舗数13万店台に
  平成16年度の店舗数はさらに減少
 理容業界は、店舗数の推移から見ると、さらに減少幅が拡大する兆候が見られ、節目に直面 している。店舗数は平成12年度以降14万店台で安定推移していたが、16年度は139,548店舗と14万店を割り、前年に比べ582店の減少(減少率0.4%減)となっている。
  理容業の店舗数のピークは、昭和61年末144,994店で、それ以降傾向として減少し、平成15年度末140,130店となり、17年間で4,864店減少(減少率3.4%)している。一年当たり平均286店の減少である。平成16年度末は前年に比べ、平均の約2倍の減少となっている。(店舗数などは、厚生労働省「衛生行政報告例」による。平成8年までは暦年、9年以降は翌年3月末の数字である)
  供給側は経営環境変化が加速、需要側は強まる来店者減速
  16年度は、従来と異なった新たな変化が生じているのではなかろうか。一つは供給側の経営益環境の変化が一段と加速していることが予想される。価格破壊の新業態が大都会のみならず地方都市まで進出し、既存業者の固定客が奪い取られるなどの問題がより深刻化していることが考えられる。
  ちなみに、総務省「事業所・企業統計調査」によると、常用雇用者無しの店舗は平成13年69,951店だったものが、16年度には68,123店と3年間で1,828店も減少(減少率2.6%)しており、競争激化は零細規模店にしわ寄せされている様相がうかがわれる。なお、理容業の事業所数全体に占める常用雇用者なしの事業所数の割合は、16年56.9%は、生活衛生関係営業の各業種の中で最大である。
  半面、需要側で見ると、地方では人口が一段と減少、また高齢化の一層の進捗、来店サイクルのさらなる長期化など顧客を巡る環境も一段と厳しさが増している。来店者数が従来以上に加速して減少している。
  ますます厳しさを増す景気動向調査の判断理由
 国民生活金融公庫の「生活衛生関係営業の景気動向調査」の都道府県の各指導センターから寄せられる景気動向の判断理由を見ると、競争激化の様相が如実に記入されている。判断理由に記入されている競争激化の原因としては、低料金店が大都市圏のみならず、地方都市にまで進出を強め、競争が激化している事例が増えている。対抗策を模索しても浮かんでこない、やむなく料金を下げて競争せざるを得なく、先行きの不安感が拭いきれないなど、切実なものが増えている。また、来店客数の減少、固定客の来店サイクルの延長を訴える声も多くなっている
  このように供給側、需要側とも理容業界を巡る構造(仕組み)自体が変化している。構造変化は、景気上昇とは無縁だ。それだけに対応策は一筋縄では行かない。
(2) 店舗が過剰で出店の余地が乏しく就業理容師数が増加
 理容業の新規開業者は、昭和53年の8,985件をピークに傾向的に減少、平成14年度はピーク時に比べ54%減にまで後退している。15年度は4,496件と前年度に比べ335件増加(増加率8.1%)した。しかし、16年度の新規開業者は4,086件と再び前期に比べ410件と大幅に減少(減少率9.1%)している。新規開業をするについて、過剰店舗のため開業時期をいつにするか、逡巡する傾向が浮き彫りになっている。
  過当競争の兆候が統計面に強く現れ出したのは昭和60年代である。免許取得者が増加しているものの、新規開業件数が伸び悩み、施設数がほぼ横ばいで推移、一方では開業に踏み切れない有資格者の就業理容師数が増加している。この一連の関係には、免許は取得したものの、店舗が過剰で出店の余地が乏しく、就業理容師にならざるを得ないという傾向が表れている。当時の状況は、いま人気抜群の美容業界に当てはまる。免許軒数が平成13年度以降2万7千件台で推移、平成4〜8年に比べ1万4千件も増えているが、新規開業数は10年度以降1万件台で伸び悩み、半面 、有資格の就業美容師数だけが急速に増加しているからだ。
(3) 過小需要の原因は年間利用回数の減少
 1世帯当たりの理髪料の年間支出(家計調査年報 総務省)は、バブル崩壊後の平成5年9,956円をピークに減少に転じ、17年には6,450円と水準が低くなっている。12年間で支出が3分の2の状態に落ち込んでいる。同じ期間の店舗数の減少率が4.5%と比べると、明らかに需要量 の減少幅が店舗の減少幅をはるかに上回り、過小需要の様相を呈している。
  需要量の減少の原因は、1世帯当たり年間利用回数の減少に求められる。理髪料金=単価×利用数量 で表されるが、単価は平成5年2,816円が17年には2,927円に上昇しているが、利用数量 は5年3.5回が17年には2.2回に減少しているからだ。

2 「理容師法」で見る理容業界の仕組み

 生活衛生関係営業の18業種は法律によって業種が指定されている。わが国には、多くの小売業、サービス業など業種的に生活衛生関係の各業種に類似した業態が多いが、大半は公的規制が少ない。本来、生活衛生関係営業の各業種は、国民の生活に密着しており、しかも国民の衛生水準の向上に果 たす役割が課せられている。特に、理容業、美容業は、人々の頭髪を施術するだけに、高度の衛生施設の向上が要求されている。したがって、理容業には、理容師法が制定されている。近年、降って湧いたように法令順守(Compliance)が叫ばれているが、理容業は以下に示すように、昭和22年から公的規制に縛られているのである。
(1) 理容、理容師の定義
 理容業には「理容師法」が定められている。法律施行は、昭和22年12月の太平洋戦争直後であり、昭和32年6月施行の美容師法よりも10年も前である。戦後の混乱期にいかにして、国民大衆の衛生面 の向上を図るかに、国が力を注いでいたかが理解できる。
  まず理容師法により、「理容」の定義を見てみよう。理容とは「頭髪の刈り込み、顔そり等の方法により容姿を整えること」と定められている。この理容の範囲には、コールドパーマネントウェーブや染毛も含まれている。これらは、刈り込みなどの行為に伴う理容行為の一貫として、男性の整髪に対し仕上げを行うことを目的としているので、理容行為に含まれている。
  次に「理容師」の定義を見ると、理容師は「理容を業とする者」をいい、理容師法に基づき厚生労働大臣の免許を受けることを義務付けている。したがって、理容師の免許を持たない者は、理容を業として行うことはできないと定めている。ここでいう「業」とは、反復継続の意思もって理容を行うことで、有料・無料を問わないと決められている。
(2) 理容師免許
 理容師免許は、高等学校を卒業した後、厚生労働大臣の指定した理容師養成施設で、昼間過程2年以上、夜間過程2年以上、通 信過程の場合は3年以上にわたり必要な学科、実習を終了した後、理容師試験に合格した者に交付される。ただし、理容師が、精神機能の障害により、理容師として適正に業務を行うのに当たって必要な知識、判断および意思疎通 が適切に行えないものは免許を交付しなかったり、免許の取り消しを行うことができる。また、伝染性の病気にかかり、就業が適切でないときは、業務停止を命ずることがある、と理容師法は定めている。
(3) 理容所
 理容師は、理容所で理容を行わなくてはならない。ただし、病気などにより理容所に来られない者や、婚礼等の儀式に参列する者のために、その儀式の直前に理容を行う場合や、その他について都道府県知事が認めた場合には、理容師は出張して理容ができるとして、例外を認めている。なお、出張専門で行う理容師も、対象者がこの条件を満たしている限り、出張による理容は可能である、と定めている。
  理容所を開設・廃止するときは、都道府県知事(保健所設置市、または特別 区にあっては、市長または区長)に届けなければならない。また、理容所は、都道府県知事(保健所設置市、または特別 区にあっては、市長または区長)の使用前の検査確認を受けなければ、使用してはならい。
(4) 管理理容師
 管理理容師については、理容師法は次のように定めている。理容師が複数いる理容師の開設者は、理容所の衛生管理の責任者として管理理容師を置かなくてはならない。なお、管理理容師の資格として、理容師歴3年以上のものであって、かつ都道府県知事が指定した講習会を終了した者でなくてはならない。
(5) 環境衛生監視員
 理容師法では、理容師が理容を行う場合には、器具やタオル等を清潔に保たねばならないと定めているが、理容所が衛生基準に従って運営されているかどうか、都道府県知事(保健所設置市、または特別 区にあっては、市長または区長)は環境衛生監視員から報告を求めることができる。報告の内容次第では、環境衛生監視員は理容所の立ち入り検査をすることができる。

3 理容業の特性

(1) 低い労働生産性、典型的な労働集約型業種
 理容業のサービスは人手による施術が中心であり、効率の高い機械を使い、顧客1人当たりの所要時間を短縮することは困難である。したがって、従業者1人当たりの1日の顧客施術数には、限界がある。生活衛生関連営業の18業種のうち、美容業と理容業が最も労働集約的であるといえる。ちなみに、理容業の従業者規模別 事業所数の構成比(平成13年度)を見ると、2人規模が全体の41.3%を占め、生活衛生関係営業18業種の中で最も多く、生業的な色彩 が濃い。巷間に見られるように、理容業は、夫婦による経営が多いため、2人規模への集中度が高い。
(2) 作用しない規模の利益
 理容業は、技術者と補助者との多少の分業は可能だが、補助者の仕事は洗髪などに限られており、各工程の専門化による流れ作業は不可能である。ましてや、高い効率を発揮する機械の導入も困難である。このような制約条件の下では、理容椅子を2倍、従業者を2倍にしても、売上高は2倍止まりで、2倍以上にはならない。つまり、手作業主体であり、規模の利益が働かないのである。したがって長時間労働で収入を増やさざるを得ない。売上高の拡大を図るのなら、支店を増やす以外に方法がない。とはいえ、理容業は、「頭数があってなんぼの商売」だから、今後人口が減少していくことを、十分に配慮しなければならない。
(3) 新規参入が容易
 理容業は美容業と同様に、新規参入のハードルは低い。理容師の免許を取得するのに時間を要するが、免許さえ取れば、労働集約型で高額の設備資金を必要としないので、開業資金は比較的少なくて済む。また、従業者も経営者のみでも営業が可能であり、開業は比較的容易である。
  顧客が理容店に行く行動範囲は、住宅周辺や勤務地近くであれ、徒歩で簡単に行ける店舗を選択しがちである。さらに、通 いなれた理容店から、他の理容店に移動することが少ない。このため、理容店の営業領域は狭くならざるを得ないが、消費者の行動様式から、各理容店とも一部の顧客を独占している。しかし、同一営業領域内には同業店が多いうえに、低料金店の進出や、若年男性の美容業への移転、利用サイクルの長期化などで、固定客把握は従来に比べ、容易でなくなっている。
(4) 圧倒的に多い個人経営、50歳代が半数、しかも長時間労働
 やや古い資料だが、厚生労働省が平成12年に行った「環境衛生関係営業経営実態調査」に基づいて、理容業の実態に触れてみよう。
  ・組織−個人経営91.3%(美容業75.2%)で、個人経営が圧倒的に多い。
  ・経営者の年齢−50歳代48.6%(同43.0%)、常用雇用者の平均年齢は男性30.4歳(同28.2歳)、女性39.9歳(同31.9歳)で、特に女性従業員の高齢化が美容業に比べ目立つ。
  ・営業時間−1日10時間以上84.9%(同9時間以上10時間未満40.6%)で、美容に比べ長時間労働である。
  ・予約制度−予約制度あり35.8%(同59.5%)で美容業の方が予約形式を取る店が多い。
  実態調査の結果から、@個人経営が圧倒的多数、A女性従業員の高齢化進捗、B長時間経営、C予約制の導入が美容業に比べ少ない、などが指摘されよう。

4 従業者規模別でみた事業所数等の状況

(1) 減少が続く事業所数
 表の「理容業の事業所数の推移」で見ると、平成16年の事業所数は119,755店舗で、生営18業種のうち、事業所・企業統計に掲載されている16業種の中で美容業に次ぎ2番目に多い。3年ごとに行われる調査において、16年は13年に比べ2.5%減少、18業種のうち、減少率は4番目に少ない。ただし、調査年ごとに事業所数は、わずかずつ減少している。
(2) 1〜4人規模は全体の95%、11年以降で見て減少率拡大
 1〜4人規模の事業所数は、16年48,357店で、全体に占める割合は95.3%であり、圧倒的に小零細企業が多い。16年の1〜4人規模は、13年に比べ2,723店減少(2.3%減)しており、全体の減少率2.5%より少ない。減少率は11年0.5%、13年0.9%であるから、16年は減少率が拡大している。
  5人以上規模は5,636店で構成は4.7%と少ない。13年に比べ381店減少(6.3%減)であり、13年が11年に比べ13店とわずかに増加したのに比べれば、減少幅は大きい。これは5〜9人が321店減少、10〜19人が74店減少、合わせて395店減少が響いている。ただし20〜49人は13店増加(15.3%増)している。
(3) 従業者数も減少、1事業所当たり従業者数は2.1人
 平成16年の従業者数は251,857人で13年に比べ3.9%減少している。男性従業者数の占める割合は54.5%で、美容業の24.3%の2倍強になる。1事業所当たり従業者数は2.1人で美容業の2.6人に比べわずかに少ない。


理容業の事業所数の推移    (参考)美容業の事業所数と理容師数
(単位:店、%) (単位:店、人)
調査年 従業者規模別 合計 美容業の事業所数 理容師数
1〜4人 5人以上
平成8年 (95.0)
118,586
( 5.0)
6,978
(100.0)
125,564
(102.4)
171,602
(99.9)
252,330
  11年 (95.2)
117,936
( 4.8)
6,978
(100.0)
123,940
(101.4)
173,978
(99.5)
250,987
  13年 (95.1)
116,842
(4.9)
6,017
(100.0)
122,859
(103.5)
180,085
(99.9)
250,764
  16年 (95.3)
114,119
(4.7)
5,636
(100.0)
119,755
(95.9)
172,768
(100.1)
250,764
(注) ( )内は構成比である。 (注)( )内は前回調査比である。
資料:総務省「事業所・企業統計調査」及び厚生労働省「衛生行政業務報告」


5 家計面における理容への支出状況

(1) 減少が続く事業所数
 「家計調査年報」(総務省)による1世帯当たり年間の理髪への支出金額は、平成17年は6,450円前年に比べ139円減少(2.1%減)している。ピークの平成5年9,956円に比べると、3,500円も減少している。
(2) ピークが3.6回が2.2回に
 1世帯当たり1年間の利用回数は、平成17年は2.2回と過去最低になっている。平成元年を底に回数が増え始めたが長続きせず、4年の3.6回をピークに再度減少に転じ、毎年過去最低の記録を塗り替えている。平成5年ピーク時の3.6回に比べ1.4回も減少している。
(3)  1世帯当たり1回当たりの料金は、平成17年は2,927円で前年に比べ15円減少(0.5%減)している。昭和50年代以降、毎年わずかではあるが11年まで上昇してきたものが、12年以降低下に転じている。
(4)  世帯主の年齢階級別の1世帯あたり年間の理髪への支出は、平成17年で見ると、最多は70歳以上世帯で8,976円、2位 60〜69歳6,828円、3位40〜49歳6,780円である。逆に最小支出は29歳以下の世帯で2,742円で、最多の70歳以上8,976円で約約3分の1に過ぎない。


6 経営上のポイント

 近年、若年男性層の理容店離れが進む一方、美容店利用が増えている。これは、若年男性のヘアモードに対するニーズの個性化・ファッション化が進化しているためである。
  理容店では、従来型の一般客対象からからハイグレード・スペシャルショツプなどの高級専門店が増えている。ビジネスマン相手のネイル、毛染め(カラーリング)、リラクゼーションメニューの開発、中高齢者を対象としたヘアカウンセリングのほか、女性のシェービングなど、目標とする対象を明確にした営業で、他店との差別 化を図る理容店が増加している。
  低料金を武器にした新規参入企業との差別化を図ることは極めて重要である。時代の変化や顧客のニーズを取り入れた経営を行っている企業の実例を、以下に経営のポイントとして掲げてみよう。
(1) 新しいニーズに対応した経営
  予約性
 多忙なビジネスマンが多い地域や土、日、祝日など混雑する日のみ予約性を実施。
  専門コーナーの設置
 ゆったりと施術を受けられるよう店内はすべて個室に改造、シニア、ヤング、レディスの各年齢階層別 の専門コーナーを設け、年齢に応じたサービスを提供。
  高度のサービスを提供
 完全無添加のシャンプー、薬剤等による毛髪、頭皮のケアやマッサージ施術、中年以上には育毛の知識の啓発、若い世代には簡単な顔面 エステを導入。
  高齢化社会への対応
 従業員を客層別配置に切り替える。来店困難な高齢者に対して出張サービスを導入。
  ケアー理容師の資格を取り介護が必要な人たちの施術を行う。
(2) 顧客ニーズに沿った技術提供や設備改善など
  ヘアクリニックサロンとして豊富な専門知識を生かし、服装のおしゃれから頭髪までの総合的な相談に応じて店の信頼度を高め、また店独自のヘアスタイルを工夫し来店客に推奨、普及を図る。
  若年層から年配者までの幅広い顧客に技術力の高さで満足感を与えるため、常に新しい技術やヘアスタイルの開発に努力、また理容技術大会に出場し、技術面 での信頼を得る。
  高齢化社会に対応、ゆったりとしたサロン形式の店舗に改造
(3) 顧客に対するサービス面の充実
  ・メンバーズカードを交付、8回の利用で300円割引
  ・顧客ごとに、その人に合ったシャンプーやトリートメントの具合を調節
  ・子供や高齢者に対しては、昼間の時間帯に低料金制の導入を図る
  ・顧客の名前を聞いても、絶対に職業や肩書きを聞かない
  ・待合室が喫茶コーナーになっているので、若者の人気を呼んでいる
  ・店内をくまなく清掃し、さわやかな挨拶の励行徹底。明るいサロンづくりに努力
  ・コンピュータの導入によりカルテを作成し、来店サイクル、ヘアスタイルの変化などを分析し、迅速、的確な顧客管理の徹底を図る。
  ・従業員育成と技術的養成を図る
  ・心で接する従業員教育を徹底し、固定客化の促進、固定客の定着率を高めている。


7 工夫している事例

 ☆若い女性経営者の目線でとらえた心遣いで「ほっと」できる店づくり
 
(1) 企業概況
  ・所在地:札幌市
  ・創 業:平成12年
  ・店舗数:1店
  ・設 備:電動理容椅子 2台
  ・従業者:なし
  ・立地条件−銀行や商社、マンションなどが密集する職住混在地
  ・競合状況−半径500メートル以内に4店舗、低料金店なし
(2) 経営の基本姿勢
  基本姿勢は、お客様にゆったりとくつろいでいただく環境づくり。具体的には、お客さま一人ひとりに対応したサービスに努める
(3) 経営上の特徴
  目立つ看板を掲げ、店の存在をアピール
  白いタイル貼りの店の上部に黄色地に黒字で店名を書き込んだ大きな看板を掲げ、店舗の存在を目立つように工夫。
  お客さんが安心して利用できる店づくり
  ・思い切り窓を大きくとり開放的にして、外からも店舗内の雰囲気が伝わるようにして、未利用の人に安心感のある店の印象づけ行っている。
  ・営業時間、定休日、料金などを店舗の外部に表示し、利用に際しての安心度を高めることに配慮している
  1人経営の特徴を鮮明に打ち出す
  1人経営のため時間的な余裕を持たせ、無理なく営業が継続できる営業時間の設定
平日の営業時間 午前10時から午後7時まで
土曜・日曜・休日 午前9時から午後6時まで 来店客が多く見込まれる曜日・休日には営業開始時間を1時間繰り上げ
  オプションメニューによるサービスの充実
  マッサージ、フェイスパック、頭皮クレンジングなどは500円から1,000円の範囲内で提供、サービスの幅を広げている
  1人の営業につき、新規客以外は待たせないようにするため原則予約制を採用。時間に追われず、お客さんにゆったりした気持ちで過ごしてもらえる効果 を狙う。
(4) 工夫している事柄
  基本的には、大半の顧客が男性だから、女性の持ち味であるきめ細かな接客や心遣いなどに配慮して、男性理容師とは違った雰囲気作りに努力している
  営業時間中の服装はいつもシンプルで明るい色調をベースに、あまり派手にならないよう控えめにしている。ジーンズ姿で店に出ることは止めている。以前、中年の顧客から「店でジーパンはないだろうと」と注意され、自分自身でも納得したからである。
  理容椅子は白革張りのおしゃれな女性らしいセンスにあふれたもので、店内装飾は清潔なイメージにし、女性経営者らしい心遣いをしている
  開店と同時に個人カルテを用意、お客さんの髪型の特徴、要望、来店時に話した会話の内容などを記入し、次回来店時のサービスに役立てている
  初回のお客さんには、メンバーズカードを交付し、8回の利用で300円の割引チットをサービス。ポイントカード採用による割引で、固定客把握の手段にしている
  顧客名簿を日常的に活用、暑中見舞いや年賀状など定期的なダイレクトメール戦術を展開、リピーターの固定化を図っている
(5) 将来の展望
  創業して5年あまりだが、小規模ながら固定客がつき経営は安定、軌道に乗っている。今後も前向きを信条に、新たな営業展開に挑戦を心掛けている。近年、理容、美容の境目がなくっていることに着目し、ユニセックスサロン化の必要性を痛切に感じている。将来は男性主体の理容を軸足にして、美容部門を併設したサロン形式の店舗づくりを視野に入れている。(国民生活金融公庫「笑顔の女性経営者」2006年3月から引用)

【業界展望】

  2006年8月1日、理容業界に激震が走った。ヘアカット専門店QBハウスを全国展開する「キュービーネット」(東京・中央区)をオリックスが買収することを決めたからである。QBハウスは10分1,000円で短時間、低価格の経営で、近年は年間50店出店を目標に店舗網を急速に拡大。2006年7月現在の店舗数は約340店に及び、年間利用客数は950万人に達している。数年前からはタイや香港など海外にも出店している。
  もともと理容業は労働集約的であり、小零細分野の業種で規模の利益が働かないため、大手資本の参入は考えられないというのが定説であった。QBハウスの参入自体でさえ理容業界、特に小規模層は死活問題にさらされた理髪店が少なくなく、ノンバンク業界のオリックスが経営権を手中に入れた以上、既存店は防戦対策に苦戦することは必定である。今後、理容業界に風雲が巻き起こることは間違いないであろう。今後どのような戦略、戦術を展開するのか、理容業界は「キュービーネット」から当分の間目を離せない。

【トピックス】産毛処理専門サロン

  専用のかみそりで顔や背中、首筋のほか、手の届かないヒップ部分まで剃ってくれる「産毛処理専用サロン」が創業。都内や関西で店舗展開中。1時間6,300円(日本経済新聞 2006年6月22日朝刊)

【トピックス】都道府県別の新規開業件数

多い順 東京都334件、大阪府246件、神奈川県232件、北海道218件、千葉県197件
少ない順 高知県19件、島根県20件、福井県23件、山梨県27件、富山県28件

【用語解説】過当競争

  過当競争とは、一般論として過剰供給能力に基づく過度の競争をいう。原因はその業種への需要をはるかに上回る過大な業者の存在である。この場合、利益水準が低く、生活が精一杯の利益しか得られないことが多い。新規参入の企業などが、既存業者から顧客を奪い取るため、競争上、既存業者も販売価格を下げる行動に出る。このため、業界全体の価格が押し下げられ、業界の体質は弱体化してしまう。


資料
  1. 総務省「事業所・企業統計調査」     
  2. 総務省「家計調査年報」     
  3. 厚生労働省「衛生行政報告例」     
  4. 全国生活衛生営業指導センタ−「成功事例調査」     
  5. 中央法規「生活衛生関係営業ハンドブック2005」
  6. 国民生活金融公庫「経営の工夫事例」(理容業、美容業)平成15年3月
  7. 国民生活金融公庫「笑顔の女性経営者」2006年3月
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