中華料理店-2005年
1 概況
2005年
(1) 日本人の日常生活に密着の中華料理、多様化している料理品目
 中華料理は、中国料理ともいわれるように中国で発達したものである。中華料理は大きく分けて北京料理、上海料理、四川料理、広東料理の4大料理系統からなるが、日本国内では日本独自の食文化に適応させた中華料理が見られ、長崎のしっぽく料理、中国式の普茶料理はその代表的なものである。特に最近は、ラーメン店にその傾向が強く、地域名を冠したラーメン専門店の展開が増えており、なかにはスープに煮干しを使ったものなども現れている。また、ラーメン店のチェーン店の競合激化で価格競争が激しくなり、200円台のラーメンが現れている。
 中華料理のメニューは、3,900種類もあるといわれ、一般の大衆店ですら最低50品目のメニューの調理が可能である。店によって調理技術が多種多様であり、味付けは調理人に付随しているため、それぞれの店ごとに独自の味を打ち出すことができるという特性をもっている。
(2) 店舗形式は大型・中型・小規模に加え、高級店・大衆店などバラエティに富む
 中華料理店というと、身近にある大衆的な中華料理店が、すぐに思い出される。店舗の内外装に余りこだわらず、売り筋のメニューは定番料理が多い。さらに、より大衆的なのはラーメン・餃子を主体とした店舗である。最近では新業態の進出が多くなり、ますます多種多彩 になってきている。
 一方では、横浜の中華街にあるような本格的なコース料理を提供する店舗がある。これらには、大型中華料理店、中型中華料理店、独自の単品を中心に中華料理を提供する店がある。大型店は大人数の宴会ができ、本格的なコース料理を提供し、結婚式の披露宴や招待の会などに使われる。中型中華料理店は小宴会、歓送迎会などに使い分けられている。独自の単品を中心に中華料理店には、中華粥、シュウマイ、小籠包など独自のメニューを売り物にした専門料理店がある。このように、中華料理店は規模、料理の内容など多種多様の店舗が揃っており、流行・季節性に左右されることがなく、根強い需要に支えられている
(3) 料理の種類は4種類
 料理の種類は、基本的には素材と調理方法に大きく分けて次の4種類からなり、提供される料理の種類、味付けが異なる。
・北京料理 塩味が主体で醤油を余り使わない。味付けは薄味で、豚、アヒル、羊、牛などの肉料理が多い。代表的なのは北京ダック(カオヤーズ)で、丸焼きにしたアヒルの皮を身からそぎとり、ねぎ・甘味噌とともに薄焼きの小麦粉の皮に包んで食べる料理である。
・広東料理 広東一体で発達した料理。味付けは一般に淡白で自然の風味を生かした調理方法が特色。
・上海料理 醤油を多く用いた濃い味が特徴で、こってりとした煮物が多い。
・四川料理 中国の南西部にある四川地方を代表する料理。四川省は気候的に温度が高いので、料理の素材は唐辛子、にんにく、ねぎを使った辛い味の料理が中心である。
(4) 町起こしに活用、独自の商品開発、ネーミングで起爆剤に
 地方都市では、この利点を生かして特定の料理に絞り込んだ独立企業が次第に増加して集積を形成し、街の顔となっている事例が増えている。福島県の喜多方ラーメンの街、宇都宮市のぎょうざの街、佐野市のラーメンの街など、中華料理の専門店の集団を地域活性化の起爆剤にしている地方都市が増えている。また、地方の大都市に大規模の中華レストラン街の展開がみられ、次第に増加しつつある。
(5) 減少に転じた中華料理店の店舗、でも副主食的な立場を確保
 中華料理店の店舗数は長年にわたり増加し続けたが、平成16年の中華料理店60,942店舗は、13年62,989店舗に比べ2,047店舗減少(減少率3.2%)し、これまでの増勢一途から、一転減少に転じている。それでも、店舗数は日本人の日常の食生活でなじみの多いそば・うどん店の1.8倍、また、すし店の1.7倍と多く、外食における主食的な立場の最高位 を維持している。
2 食品衛生法で見る中華料理店の法的規制
(1) 食品衛生法の目的
 飲食食品関係の業種については、営業施設の衛生水準を維持・向上させるため、食品衛生法が適用される。もちろん、中華料理店は食品衛生法の適用業種である。食品衛生法は、昭和22年12月施行であり、戦後いち早く、食品の安全性確保のための公衆衛生の見地から、清潔で衛生的に営業を行うために、必要な規制、その他の措置を講ずることを目的に策定された。また、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、それによって国民の健康の保護を図ることも、その目的に含まれている。
(2) 営業許可
 中華料理店を開業するのには、都道府県知事(保健所設置市または特別 区にあっては、市長または区長)に開業の届出をし、許可を得なければならない。その場合、営業施設は、都道府県が定めた施設基準に合致していなければならない。営業許可の有効期限は5年であり、営業を継続する場合は、刑業営業許可の更新をしなければならない。また、都道府県知事が定める基準により、食品衛生責任者を置くことが義務付けられている。
(3) 提供する商品に対する規制
 食品保健行政の一貫として、食品、添加物、器具および容器包装とについて規制が設けられている。中華料理店に関係のある規制については以下のとおりである。
規格基準の設定
添加物、残留農薬、遺伝子組換え食品や器具、容器包装等については、規格基準に違反した食品等の販売などは禁止されている。
規格基準の設定
アレルギー食品材料、遺伝子組換え食品など、表示基準に違反した食品等の販売等が禁止されている。
添加物の指定
成分規格、保存基準、製造基準、使用基準に適応していない添加物の使用等の禁止
(4) 監視指導
 都道府県等の保健所には、食品衛生に関する専門知識を有する食品衛生監視員が配置されており営業施設に対し監視、指導を行っている。

3 中華料理店の特性

 中華料理店の「経営実態調査」(厚生労働省 平成16年度)により、中華料理店の特性を概観してみよう。
・経営組織 個人経営66.7%、有限会社25.1%、株式会社7.9%
・営業形態 個人経営では「ラーメンが主体」が49.0%、「大衆中華レストラン」29.0%である。株式会社、有限会社は「大衆中華レストラン」がそれぞれ38・9%、46.2%と多く、「ラーメンが主体」はそれぞれ20.4%、27.5%と34.2%と個人経営に比べ少ない。
・立地条件 商業地区は個人経営43.5%に対し、株式会社は63.0%を占めている。住宅地区は個人経営35.2%に対し、株式会社は9.3%と少なく、棲み分け現象が見受けられる。
・経営者の年齢 最も多いのは50歳代で38.7%、次いで60歳代33.4%、40歳代13.5%となっている。30歳未満は0.6%、30歳代は3.7%と極めて少ない。50歳以上は70歳以上9.1%を含めると81.2%にもなり、小若年齢・高齢化現象が進んでいる。
・後継者 50歳代以上の年代別に「後継者有り」を見ると、50歳代は44.7%、60歳代は53.5%、70歳以上75.8%と、年齢が高くなるにつれ多くなっている。特に70歳以上は、後継者路線がしっかりと敷かれている。
・1日の営業時間 最も多いのは10〜12時間で38.7%、8〜10時間が35.0%、8時間未満が13.5%となっている。
・開・閉店時間 開店時間は11〜12時代が86.2%、閉店時間は21時以降が80.6%で最も多い。

4 従業者規模別に見た事業所数など

(1) 減少に転じた事業所数
 表の「中華料理店の事業所数の推移」で見ると、平成16年の事業所数は60,942店で13年調査に比べ2,042店減少(3.2%減)している。13年は11年に比べ1,262店増加(2.0%増)から16年は減少に転じている。
(2) 1〜4人規模は大幅に減少
 事業所数を従業者規模別でみると、表の「中華料理店の事業所数の推移」に見られるように1〜4人規模は37,248店で全体に占める割合は61.1%で、11年65.8%、13年62.7%に比べ減少している。13年に比べると2,229店減少(5.6%減)している。この減少数は、全体の減少数2,042店を超えている。
(3) 10〜49人層の小幅増が寄与、5人以上微増
 5人以上は23,694店で全体に占める割合は38.9%である。13年に比べると182店増加(0.8%増)しているが、13年対11年比2,419店増(11.5%増)に比べ、増加数は極端に減少している。5人以上の中では、10〜49人層9,876店であり、13年に比べ367店増(3.9%増)となっている。
(4) 個人減少に対し法人は大幅増
 平成16年の法・個人別事業所数は、個人が41,198(構成比67.6%)、法人は19,744店(構成比32.4%)となり、個人が圧倒的に多い。13年に比べると個人が4,191店減少(9.2%減)に対し、法人は2,144店増(12.2%増)となっている。
(5) 従業者数は微減止まり
 平成16年の従業者数は366,838店で13人調査に比べ2,829人減少(0.8%減少)している。13年は11年に比べ10.1%増と大幅に増加したが、16年は減少に転じている。1事業所当たりの従業者数は6.0人(13年5.9人)である。
中華料理店の事業所数の推移   (参考)一般飲食店全体
(単位:店、%) (単位:店、%)
調査年 従業者規模別 合計 従業者 合計
1〜4人 5人以上 1〜4人
平成8年 (67.0)
41,386
(33.0)
20,428
(100.0)
61,814
(65.7)
299,963
(100.0)
456,420
  11年 (65.8)
40,624
(34.2)
21,103
(100.0)
61,727
(65.1)
288,426
(100.0)
443,216
  13年 (62.7)
39,477
(37.3)
23,512
(100.0)
62,989
(62.7)
277,694
(100.0)
442,883
  16年 (61.1)
37,248
(38.9)
23,694
(100.0)
60,942
(61.9)
259,706
(100.0)
419,663
注:1 「事業所・企業統計」は平成8年より、
     「中華料理店・焼き肉店・東洋料理店」から「中華料理店」を分離した。
 2 ( )内は構成比である。
資料:総務省「事業所・企業統計調査」

 

5 家計調査にみる中華食、中華そばへの支出
(1) 中華食への年間支出より多い中華そばへの支出、双方とも17年には回復
 総務省の「家計調査年報」によると、1世帯当たりの中華食の年間支出額(平成12年版から新設項目)は17年5,411円で5.8%増と増えている。平成13年以降3年間続けて減少していたが16年には回復している。
 中華そばの支出は、17年5,768円で前年に比べ5.9%増となっている。中華そばの支出は、昭和62年をピークに低下傾向にあったが、平成8年を底に再度増加に転じ、14年から16年まで減少が17年には回復に転じている。中華食への年間支出額が5,411円に対して、中華食に比べ低単価の中華そばが5,768円と上回っているのは、日本人の中華そばへの嗜好の強さと、最近の地域名をつけた高単価中華そばの出現、中華そばブームの再燃を反映しているものとみられる。
(2) 中華食の最多支出は50〜59歳、中華そばは30〜39歳
 中華食の支出を年齢構成別に見ると、最多は50〜59歳6,343円であり、次いで30〜39歳の6,118円、40〜49歳5,933円となっている。一方、最小支出は70歳以上3,711円、29歳以下4,241円となっている。
 中華そばの最多支出は30〜39歳7,505円、次いで40〜49歳7,471円と中間層世帯の支出が多い。最小支出は70歳以上3,472円、次いで60〜69歳4,928円、50〜59歳5,814円となっており、中高年齢層における支出が少ない。
 中華そばの最多支出は30〜39歳7,505円は、中華食の最多50〜59歳6,343円を1,162円も上回っている。
(3) 中華食の支出1位は川崎市、中華そばは1位山形市
 同調査により都市別にみると、中華食の支出1位は川崎市13,470円、2位 は神戸市で13,261円、3位はさいたま市10,491円となっている。年間支出が10,000円を超えている都市は、先の1〜3位 の都市のほか富山市と奈良市の5都市だけである。ちなみに日本一の中華街があり横浜市は8,774円と予想外に少ない。
 一方、支出が少ない順にみると、鹿児島市1,993円、次いで那覇市2,589円、千葉市2,819円の順となっている。総じて、東北6県と九州の調査対象都市とは、全国水準からみて中華料理への支出が低位 にある。
 中華そばの支出は、1位は山形市15,037円、2位仙台市11,560円、3位 福島市11,093円、4位宇都宮市10,101円となっており、上位 3位は東北地方で占めている。年間支出が10,000円以上の都市は上記の4都市に過ぎない。一方、最小支出は神戸市2,477円、ついで和歌山市2,818円、大阪市2,959円の順となっている。10位 内に東北地方が6都市も含まれ、また、隣接の信越地方の新潟市が6位 、長野市が7位にランクされており、気温の低い地方の住民は外食に中華そばを好む傾向があるようだ。

6 最近の動向

(1) 加速する新業態
 一般に消費者ニーズへの対応とは、料理のうまさや価格設定をイメージするが、最近は料理の提供の仕方に工夫を施した店が現われている。従来の中華料理の固定観念にとらわれず、むしろ料理は安定した需要が見込める中華料理に絞り込み、店舗や食器は洋風や和風にしたり、フランス料理にみられるフルコースメニューのように料理を提供して、消費者の支持を受けている店もある。また、「ヌーベルシノワズ」(「現代風中華料理」)と名付け、日本料理やフランス料理などをミックスした創作中華料理店や、居酒屋形式で中華料理を提供する「中華料理居酒屋」も見受けられる。また、中華カフェと称し、例えば3,150円の「食べ放題プラン」なら37品のメニューのうち、好きなものを何品でも食べ放題の新業態も現れている。いわゆる、顧客自身が料理品目を選べるミニ飲茶専門店、小籠包、中華粥などの専門店が増えており、他業種との複合店の新業態として、居酒屋中華料理店、変り種ではシノワーズと称し中華料理を取り入れたフランス料理(chinoiserie)も現れ、デザートにフランス風ケーキを出すなど異色の店舗もある。カフェスタイルといえば料理は洋風だが、それを中華料理にする新業態も現れている。独自の店づくりによる「カフェ中華料理」の新業態である。店内の一部をバー風のカウンターにし、カクテル用洋酒瓶やバーボンウイスキーなど若者好みの洋酒をカウンター内にずらりと並べ、残りの面 積部分に角テーブルをいくつか並べて小宴会用に変形できるようにし、食べ物はメニューの種類が多い中華料理として、1点当たりの単価を抑えている。
(2) ファミリーレストランや居酒屋の進出
 ファミリーレストラン系企業が、郊外のロードサイド立地という形態で中華料理業界に進出している。1,000円〜2,000円程度のリーズナブルな客単価で本格的な中華料理を気軽に利用することができる。店舗は、普通 のファミリーレストランや、喫茶店のような造りにしているものが多く、洋風の店舗のなかで中華料理を食べるという新鮮な感覚がうけている。日経レストラン(日経PB社)による調査でも「利用する理由」として、「中華っぽくない内装に好感がもてる」「開放感があって落ち着ける」「お客が明るく、皆楽しそうに食事をしている」「脂ぎったイメージがなく清潔感がある」「値段が手ごろで利用しやすい」などを挙げる者が多く、多様化する消費者ニーズに適応した経営であることがうかがえる。
 また、過当競争に陥っている居酒屋業界は、大手チェーン店が画一化からの脱出を図るため、他の飲食業界へ進出する傾向がみられる。甘太郎など居酒屋中心の直営店チェーンのコロワイド(東証1部上場)は、同一ビル内への複業態出店で異色経営を行っているが、平成15年10月に初の中華料理店を出店する。居酒屋は、大手の大量 出店で画一的なメニューが行き渡り消費者からは飽きられてきており、経営の見直しを迫られている。今後、他の大手チェーンの中華料理業界への新規参入も予想される。
(3) 激しい内外との競合
 経営上の問題点は、複数回答割合の多い順に、「他の飲食店との競業」38.6%、「諸経費の上昇」37.5%、「人件費の上昇」29.2%、「設備の老朽化」26.0%、「同業者間競争で客数減」23.8%となっており、外部的な要因である「他の飲食店との競業」が最も多く、また、「同業者間競争で客数減」が5位 を占めるなど、中華料理業界は、内外との競争への対応力が問われている。(厚生労働省「飲食店営業(中華料理店)の実態と経営改善の方策」平成10年3月)
 当面の経営方針は、最も多いのが「新メニューの開発」63.0%(複数回答)、次いで、「接客サービスの充実」37.9%、「店舗設備の改善等」35.2%となっている。上位 を占めているのは、同業者への競争力強化や顧客獲得の対応策である。長期的な経営方針としては、経営合理化の基本的な課題である「施設、設備の充実」が38.1%と最も多く、次いで「パソコンなどの導入」が16.8%、「経営の多角化」が13.1%と続いている。長期的な経営方針のメドが立っている業者が少ない。(東京都生活衛生指導センター「平成12年度環境衛生関係営業実態調査報告書」)

7 中華料理に対する消費者の利用状況  

 中華料理店の利用状況について、消費者モニター調査によって見てみよう。(「平成15年度消費者モニター等事業調査報告書」東京都生活衛生関係営業指導センター)
(1) 「よく利用する飲食店」は何(複数回答)
1位 中華料理店(ラーメン店含む)64.8%−70歳以上を除き各年齢層とも多い
2位 うどん・そば店46.3%−年齢層が高くなるにつれ利用増加。最多は70歳以上
3位 すし店(回転ずしを含む)−年齢層が高くなるにつれ利用増加。最多は70歳以上
4位 ファミリーレストラン35.0%−年齢層が低くなるにつれ利用増加。最多は20代以下
5位 ファストフード店24.2%−年齢層が低くなるにつれ利用増加。最多は20代以下
6位 西洋料理店−19.0%−多いのは40、50歳代
7位 その他の食堂・レストラン−最多は20歳代以下
8位 天ぷら、うなぎなどの専門店−50,60,70歳以上と加齢につれ増加
9位 料亭、割烹等の日本料理店−多いのは60,70歳以上
多種多様な外食の中で、大衆好みの中華料理が最も利用度が高く、かつて副主食的な地位 を長い間維持してきたうどん・そば店を、追い抜いてしまっている。
(2) 中華料理店の利用状況(1つだけ回答)
「月1〜3回程度」41.0%−女性41.4%、男性39.0%
「2ヶ月に1回程度」18.7%−女性20.7%、男性12.7%
「3ヶ月〜半年に1回程度」17.5%−女性19.9%、男性10.2%
「週1回以上」16.4%−男性33.9%、女性10.7%
 最多の「月1〜3回程度」41.0%は、同じモニター調査による副主食的な「そば・うどん店」の最多の「月1回程度」18.3%に比べはるかに多く、日本人の中華料理好きが、この調査でもうかがわれる。「週1回以上」を除いては、各利用状況とも男性に比べ、女性の利用割合が高いのが目立つ。
(3) 店舗のタイプ別利用状況(1年以内の利用者比率)
「ラーメン店」73.3%−最多は30〜50歳代
「大衆飯店」70.7%−最多は30〜50歳
「高級飯店」48.8%−最多は30〜50歳代、次いで60歳代がやや多い
大衆的なラーメン店、大衆飯店は、中堅層の利用が多い。
(4) 主に注文する料理
高級飯店−コース料理54.0%、一品料理28.1%、定食9.4%
大衆飯店−定食34.8%、一品料理33.0%、麺類・飯類21.4%
ラーメン店−麺類・飯類80.4%、一品料理11.0%、定食7.0%
各業態別に、注文の内容が明らかに異なっている。
(5) よく利用する時間帯
高級飯店−18時以降56.5%、11時〜14時29.0%、14時〜18時12.9%
大衆飯店−11時〜14時44.6%、18時以降41.8%、14時〜18時11.8%
ラーメン店−11時〜14時53.1%、18時以降34.2%、14時〜18時10.5%
大衆飯店は、昼食時間帯だけでなく、18時以降でも利用割合が多い。これは新業態の中華料理店が多くなり、夕方の開店時間が5時以降が多いためと思われる。
(6) 中華料理店のメニューに望むサービス
@「料理名・価格の提示」64.9%−最多は20歳代以下、各年齢階層とも高い割合
A「お店のお勧め料理」62.6%−最多は60歳代。各年齢階層とも高い割合
B「セットメニュー」51.0%−年齢層が若くなるにつれ増加している。最多は20歳代以下
C「カロリーなどの栄養表示」26.5%−50、60歳代、70歳以上に多い
D「メニュー表の清潔感」20.3%−最多は20歳以下、30、40、50歳代も多い
E「高齢者向けの特別献立」17.4%−40歳代以上順次に増加。70歳以上突出
料理名、価格や本日のお勧め料理の表示を望む声圧倒的に多い。セットメニューは安くてボリューウムがあるため、若年層の希望が多い。
(7) 中華料理店の接客サービスについて望むもの
@「落ちついて食べさせる」 70.5%
A「料理等をタイミングよく提供する」 50.4%
B「服装や身だしなみ」 42.0%
C「挨拶や言葉遣い」 39.4%
D「混雑時でも相席にしない」 28.0%
 1位の「落ちついて食べさせる」と、2位の「料理等をタイミングよく提供する」は連動しているといえよう。何品か注文すると、矢継ぎ早に料理を持参する店について、顧客の食べ具合を見計らって、次の料理をタイミングよく出して欲しいという意味が込められていると思う。中華料理は冷めてしまっては味が落ちてしまう。タイミングよくテーブルに提供された料理を、一品ごとに落ちついて食べたいが@Aの要望に含まれているといえよう。重視すべきは、顧客の満足度(味、雰囲気、サービス)の三位 一体)であり、調理場の都合を優先させてはならないのである。

8 経営上のポイント

(1) ゆとりを持った店づくり
 大衆向け中華料理店は、概して店内が狭い店が多く、「隣席が近すぎて落ち着けない」、「店内があわただしくゆっくりできない」といった意見が多い。最近では洋風、和風の店舗で中華料理を提供し、料理だけではなく、ゆったりとした雰囲気も楽しんでもらおうとする動きもあるので、極力店内の雰囲気も念頭においた店づくりを考えていく必要がある。
(2) 労働力の確保
 大型の中華料理店は別として、街の中華料理店では、人手不足で頭を痛めている店が多い。中華料理には、料理の特徴として大量 の熱と油を利用するため、かなりの重労働で、しかも、一人前になるには経験と熟練を要することから、若者からは敬遠されがちである。労働力確保のためには、個人営業であっても労働時間の短縮、休日の増加、従業員の住宅の確保など労働条件面 の改善で、若者を引きつけていく必要がある。また、何年間か勤めれば、将来独立して店を持たせるというように、働くことに夢を持たせる姿勢も大切である。

9 工夫している事例

(1) 企業概況

  • 所在地:東京都千代田区
  • 立地:人通りの多い交差点近くで、周辺は中小企業が多い
  • 創業:昭和60年、平成5年から2代目として家業を承継
  • 店舗:1店(1階厨房、2階店舗60席)
  • 従業者数:9名(うちアルバイト5名)
(2) バブル崩壊の影響で売り上げががた落ちに
 昭和60年、ビル完成に伴い従来のラーメン店から本格的な中華料理店(四川料理)に転向。先代が後継の息子を修業させるため、四川料理では日本で5本の指に数えられる"料理の鉄人"を料理長に招いた。後継者として、料理長から7年間にわたり厳しい指導を受け、平成8年からは料理長として腕を振るうまでに成長した。
 昭和60年開業早々から一流料理長を招いたことで、店を代表する味が定まり、好立地も幸いし、開業早々から店の味が評判となり、売り上げは順調に推移していった。しかし、バブル崩壊後、売り上げは最盛期の3分1にまで落ち込んだ。開業以来、初めて味わう苦悩の毎日であった。神田生まれで神田育ちの生粋の江戸っ子も、さすがに参った。どうしたら、売り上げが回復できるのか、考えるのはそれだけだった。
(3) 業績回復に向けた戦略
母親の猛反対を押し切りテイクアウトを開始、
 再生化の第1弾は、中華料理のテイクアウトである。出来立ての熱いうちに食べて満足感を味わう中華料理煮のテイクアウトにはリスクを伴う。また「店での食事客が一層減少する」リスクもある。この点、母親は長年の商売の感で猛反対であった。いわゆる、共食い減少で、店内とテイクアウトとも共倒れとなり、店全体の商売に不利益をもたらすからである。しかし、何もやらないでいたらジリ貧をたどるばかりであった。何もやらないより、何かをやらなければならないほど、顧客数が減少し切羽詰まっていた。
決断、4種類の定番メニューでテイクアウトに挑戦
 幸い店舗周辺は中小企業の密集地帯で、昼食に弁当を求める従業員数が多かった。神田や大手町周辺は、昼食時に一度に食堂などに集中するので、ランチ砂漠との異名があり、持ち帰り弁当の需要は根強い地帯である。そこで地域の環境OLたちの需要を見込み、OLを中心ターゲットにテイクアウトを行うことに決断した。
 平成10年、テイクアウト用の定番メニューを試行錯誤の末作り上げた。従業者数の集積した地域だけに、昼食狙いの弁当販売はあちこちにある。独自性を打ち出しだした差別 化戦略ができるかどうかが、成功のカギを握っていた。そこで、次のような策略を考えだした。
@顧客は、近隣に勤務するOLを対象とする
A価格は昼食だから、高い価格では敬遠されてしまうので、極力、買いやすい価格帯にする
Bメニューは、万人好みの焼きそば、中華丼、チャーハン、マーボー丼の4種類に絞り込む
C定食に付加価値をつけるため、スープとデザートを開発した。辛いサンラースープ、コーンースープ、杏仁豆腐の3種理である。いずれも1品100円である。
 テイクアウト開始後、来店客数は増えていった。1階の調理場に設けたテイクアウトの窓口に行列が出来るなど人気が高まり、テレビ局の取材が入るほどになった。
人気は複合的な要因が寄与。テイクアウトが副産物を生む
@もともと味が良い店知られていたこと、
A値段がスープなどを含めても550円から600円の範囲内で買いやすいこと
B味と価格が一致するするリーズナブルな商品であること
C1階の調理場で顧客の目の前で調理したものをテイクアウトするので顧客が調理品に安心感をもつこと
Dテイクアウトながらアツアツの弁当が食べられること
 テイクアウトはテイクアウトだけの効果にとどまらなかった。思わぬ が副産物を生み出したのだ。これまで、夜間の利用がなかったOLやサラリーマンたちが、テイクアウトでランチの味を知り、夜の食事に足を運ぶようになった。経営者の得意とするのは坦々麺、ゴマを多く使いピリ辛スープを使っているので、麺の味わいとゴマのさっぱりしたコクがあるので、OLたちに好評である。また、五目ソバ、フカヒレ姿煮ソバなど高単価メニューが出るようになり、売り上げ回復に寄与しだした。テイクアウトが副産物を生み出したのだ。
(4) 「ぐるなび」加入で売り上げ増に、ネット利用で店を待ち合わせ場所に提供
 インターネットの活用も売り上げ増加に寄与している。平成13年周囲の関係者から話を聞いたりして、インターネットの「ぐるなび」に加入。当初、効果 はあまり期待していなかったが、いざ、スタートしてみると反響が大きく、売り上げは前年同月の1.5倍にも達した。
 反響が大きかった原因は、ホームページからプリントでき、割引などのサービス付きのクーポン券であった。また、ホームページには「待ち合わせメール」を設け、当店で待ち合わせしたい時に、店舗の地図付きメールを同時に5人まで配信できるように工夫している。そこには「お誕生日会、飲み会、歓送迎会のさいにご利用ください」と打ち込みが行われてある。
(5) 中華料理の通信販売にもチャレンジ
 夢はどんどん膨らんでいく。経営者の信念は「本格的なおいしい中華料理の提供」である。その発端の一つが中華料理の通 信販売への挑戦である。「本格的な名中華料理を全戸君も家庭で気軽に食べてもらいたい」との発想から通 信販売に挑戦した。メニューはあわびのオイスターソース煮、フカヒレの姿煮、エビのチリソースなど高級品の冷凍パックをクール便宅配便を使って通 信販売を試みた。好評だったが、準備不足もあり、現在中断している。いずれ、体制を建て直し、再度挑戦する予定である。
資料:国民生活金融公庫「後継者による生活衛生関係営業の経営革新事例」平成17年3月

 

資料

  1. 総務省「事業所・企業統計調査」
  2. 総務省「家計調査年報」
  3. 東京都生活衛生指導センター「平成12年度環境衛生関係営業実態調査報告書」
  4. 全国生活衛生営業指導センタ−「成功事例調査」
  5. 金融財政事情研究会「業種別貸出審査事典」
  6. 中小企業リサ−チセンタ−「日本の飲食業」
  7. 「生活衛生関係ハンドブック2005」中央法規
  8. 国民生活金融公庫「後継者による生活衛生関係営業の経営革新事例」平成17年3月
  9. 「平成15年度消費者モニター等事業調査報告書」東京都生活衛生関係営業指導センター
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