(1)
|
江戸時代から連綿と続く庶民派の業種 |
|
現代のそばのようなそば切りが始まったのは江戸時代とする説がある。またうどんは、室町時代に現在のような細切りのうどんが食べられ出したという説がある。いずれにしても、日常の食べ物として長い歴史をもつものであり、その情景は古典落語に多く登場するが、大昔から庶民の日常生活に密接に結びつき、長い伝統に支えられた商売である。現在では、第2の主食提供店として国民大衆に密接に結びつき、全国津々浦々にそば・うどん店がある。それだけに店舗の概観は定型化され、のれんもほぼ同類型の店が多く、一目でそば・うどん店と分かる店が圧倒的に多い。いわゆる、外食産業の中で、典型的な庶民派の飲食店である。 |
(2)
|
関東では「そば屋」、関西では「うどん屋」、生活衛生組合では「麺類」 |
|
そば・うどん店の呼び名は、東京を中心とした関東圏では「そば屋」と呼ばれ、大阪を中心とした関西地方では「うどん屋」と呼ばれる。これは、古典落語にも現れている。そばの代金16文を、時刻を聞いてごまかし1文を得したのを聞いた男が真似して逆に損をする古典落語の題名は、東京の落語家が演ずるのは「時そば」、大阪の落語家では「時うどん」と、噺の主題が異なる。総務省の日本標準産業分類によると、そば・うどん店は主としてその場所でそば、うどんを飲食させる店と定義している。業者団体では「○○県麺類飲食業生活衛生組合」の名が示すように"麺類"を用いている。 |
(3)
|
増えている「低価格・満腹感」のお手軽セットメニュー |
|
嗜好としては、東京ではそばが多く好まれ、大阪ではうどんが好まれる。従来型の店は、単独店が主流を占め、そば、うどんだけでなく、親子丼、カツ丼、天丼など丼類を扱うそば・うどんとご飯物類の併業する店が圧倒的に多い。また、大阪ではそばと加薬飯(五目飯・混ぜご飯)とのセット品が昼食時間帯では、以前から定番商品として定着している。東京でも、近年、昼食時間帯には、そば・うどんのいずれか一品とミニ親子丼やミニカツ丼、ミニカレーライスなどとのセッメニューが増え、従来のそば・うどん店の枠にとらわれないメニューの開発・多様化が進んでいる。なかには、そば、うどん店というよりも定食屋に変貌している店が少なくない。一方、ビジネスマンの乗降客が多い駅周辺や駅中の立ち食いそば屋は、朝定食屋に様変わりしている。遠距離通
勤の増加やラッシュアワーを避け、自宅を早めにでるため朝食を食べないビジネスマンが、手軽なうどん・そばを朝食代わりにする傾向が強まっているからだ。 |
(4)
|
車社会に対応、郊外に進出の新規参入のチェーン店 |
|
既存店の多くは駅前や中心商店街、住宅街に立地することが多かったが、新規参入の大型チェーン店は、車社会への変化をとらえ幹線道路沿いの郊外への出店が目立つ。大きな駐車場を有することにより、行楽客の団体客、マイカーで食事に来る小グループなどをターゲットにし、ゆっくりとくつろげる座敷をしつらえ、収容能力が大きい。また、創作メニュー開発等で高単価商品主体に新業態を展開している。うどん・そば専門店には違いないが、店構え、収容能力、メニュー、客単価などで、既存のそば・うどん店とは一線を画している。 |
(5)
|
事業所数、従業者数とも微減。根強い常用雇用者なしの店舗 |
|
事業所・企業統計調査(総務省調べ)によると、そば・うどん店の事業所数は、平成16年は34,639店で、13年35,086店に比べ447店減少(1.2%減)と小幅な減少となっている。生活衛生関係営業の比較可能な業種のうち、事業所数は11位
である。
常用雇用者なしの事業所数は6,711店で、13年6,761店に比べ微減(0・7%減)である。そば。うどん店の小零細企業は、地元客に維持され根強さを発揮している。
同調査による平成16年の従業者数は、209,520人で、13年211,452人に比べ1,932人(0.9%減)と微減である。1事業所当たりの従業者数は、6.0人(13年6.1人)である。 |
(1)
|
食品衛生法の目的 |
|
飲食食品関係の業種については、営業施設の衛生水準を維持・向上させるため、食品衛生法が適用される。もちろん、そば・うどん店は、食品衛生法の適用業種である。食品衛生法は、昭和22年12月施行であり、戦後いち早く、食品の安全性確保のための公衆衛生の見地から、清潔で衛生的に営業を行うために、必要な規制、その他の措置を講ずることを目的に策定された。また、飲食に起因する衛生上の衛生上の危害の発生を防止し、それによって国民の健康の保護を図ることも、その目的に含まれている。 |
(2)
|
営業許可 |
|
そば・うどん店を開業するのには、都道府県知事(保健所設置市または特別
区にあっては、市長または区長)に開業の届出をし、許可を得なければならない。その場合、営業施設は、都道府県が定めた施設基準に合致していなければならない。営業許可の有効期限は5年であり、営業を継続する場合は、刑業営業許可の更新をしなければならない。また、都道府県知事が定める基準により、食品衛生責任者を置くことが義務付けられている。 |
(3)
|
提供する商品に対する規制 |
|
食品保健行政の一貫として、食品、添加物、器具および容器包装とについて規制が設けられている。うどん・そば店に関係のある規制については以下のとおりである |
ア
|
規格基準の設定 |
|
添加物、残留農薬、遺伝子組換え食品や器具、容器包装等については、規格基準に違反した食品等の販売などは禁止されている。 |
イ
|
規格基準の設定 |
|
アレルギー食品材料、遺伝子組換え食品など、表示基準に違反した食品等の販売等が禁止されている。 |
ウ
|
添加物の指定 |
|
成分規格、保存基準、製造基準、使用基準に適応していない添加物の使用等の禁止 |
(4)
|
監視指導 |
|
都道府県等の保健所には、食品衛生に関する専門知識を有する食品衛生監視員が配置されており営業施設に対し監視、指導を行っている。 |
(1)
|
国民大衆の日常生活に密着した副主食の提供店でありながら、藪、更科など修行した店の系統を引き継ぎ、各店がそば、たれなど差別
化した特色を打ち出している店が多い。 |
(2)
|
顧客が食事をする利便性を加味した立地が多く、商圏は狭くならざるを得ないが、「あの店のそばでなければ食べない」という一部の固定的愛用者層に指示されている傾向が強い。 |
(3)
|
そば・うどん店は手作業に依存する典型的な労働集約型の業種である。労働力に多くを依存し機械による効率的な営業ができないため、従業者1人当たりの販売額は低くならざるを得ない。ただし、手打ちそば、手打ちうどんなど、人手を多く投入することを看板に、他店との差別
化を図る店が増える傾向にある。 |
(4)
|
一般的に、昼の食事時間滞に来店客が集中し、それ以外の時間帯の顧客の集中度が低い傾向がある。なかには、午後2時から4時くらいまで閉店する店もある。このため、客席回転率は鈍くならざるをえず、売上の拡大には限界があり、生業にとどまらざるを得ない業界構造となっている。 |
(5)
|
そば・うどん類のメニューは通常10〜20種類、丼物は10種類程度であり、提供する種類は多い。しかし、一般
的には顧客の注文は麺類で4〜5種類、丼物では、親子丼、たまご丼、かつ丼の3種類程度で顧客の選択の範囲は狭い。最近は、顧客の嗜好の変化を取り入れカレーライス、ラーメンなどを扱う店が増え、かつての一般
食堂並みの何でも屋的なそば・うどん店が増えている。特に、昼食時間帯は「低価格・満腹感」が顧客に受け、手軽なセットメニューへの注文が集中しがちである。 |
(6)
|
半面、昔懐かしい花巻そば(あぶって揉んだ海苔を振りかけた「かけそば」)やしっぽく(椎茸・蒲鉾・野菜などの種を用いたそばやうどん)など、本来そば・うどん専門店でなければ食べられない独自の商品が、メニューから消えている店が多い。顧客の嗜好の変化もあるのだろうが、そば・うどん専門店のメニューに時代の変り様が映し出されている。 |
(1)
|
続けて中規模層が拡大、規模大層は減少率2桁 |
|
総務省調べによると、平成16年の全国のそば・うどん店の事業所数は34,639店で、13年に比べ1.3%減となった。13年は11年に比べ560店増加(1.6%増)だったが、再び減少に転じている。
これを従業者規模別でみると、4人以下の小規模店は、19,289店であり、13年比で1.2%減とわずかに減少している。一方、5人以上は15,350店で、13年比1.4%減と微減にとどまっている。
ただし、5人以上のうち10〜29人規模は5,082店で,13年の4,860店に比べ222店増(4.6%増)となっている。この規模は13年対11年比でも188店増(4.0%増)だったので、引き続き堅調に推移している。逆に30人以上は477店で13年の530店から53店減少(10%減)となっている。
4人以下の全体に占める割合は11年の65.7%と比べると、13年55.6%、16年55.7%と、構成比は縮小しており、5人以上に割合が高まっている。1事業所当たりの従業者数は、16年6.0人(13年6.1人)である。 |
(2)
|
個人企業減少、法人企業は増加、個人企業が3分の2を占める |
|
平成16年の法・個人別事業所数は、個人が22,147店で、13年22,945店に比べて3.5%減となっている。法人は12,492店で、13年に比べ2.9%増となっている。構成比は個人63.9%(13年66.5%)と、個人の割合が減少している。 |
そば・うどん店の事業所数の推移 |
|
(参考)一般飲食店全体 |
(単位:店、%) |
(単位:店、%) |
調査年 |
従業者規模別
|
合計 |
従業者 |
合計 |
1〜4人 |
5人以上 |
1〜4人 |
平成8年 |
(55.8)
19,516 |
(44.2)
15,480 |
(100.0)
34,996 |
(65.7)
299,963 |
(100.0)
456,420 |
11年 |
(56.3)
19,453 |
(43.7)
15,073 |
(100.0)
34,526 |
(65.1)
288,426 |
(100.0)
443,216 |
13年 |
(55.6)
19,518 |
(44.3)
15,568 |
(100.0)
35,086 |
(62.7)
277,694 |
(100.0)
442,883 |
16年 |
(55.7)
19,289 |
(44.3)
15,350 |
(100.0)
34,639 |
(61.9)
259,706 |
(100.0)
419,663 |
(注) ( )内は構成比である。 |
|
資料:総務省「事業所・企業統計調査」 |
(3)
|
主食的外食の地位が後退 |
ア |
日本そば・うどんへの支出は一進一退 |
|
総務省「家計調査年報」によると、平成17年における「日本そば・うどん」の1世帯当たりの年間支出額は5,413円で、前年に比べ86円増(1.6%増)に過ぎない。平成7年を底に緩やかな増加傾向から、11年以降は一進一退をたどっている。また、一般
外食費に占めるそば・うどんの支出割合は、昭和55年の4.6%をピークに後退、14年には3.6%まで低下し、主食的外食の地位
が後退傾向にある。 |
イ
|
所得の伸びに対する支出反応が鈍化 |
|
同調査による可処分所得の伸びに対して、そば・うどんの支出の伸びは、明らかに鈍化している。そば・うどんの支出がピークだった2年から17年までの12年間の可処分所得の伸び率1.0倍であるが、そば・うどんの支出の伸び率は先に見たように0.93倍と減少しており、所得の伸びに対する支出反応が鈍い。ちなみに、昭和55年から平成2年の10年間の可処分所得の伸びは1.44倍に対して、そば・うどんの支出の伸びは1.19倍と、所得の伸びにそば・うどんの支出が反応し、増加している。
一般論としていえることは、今後、可処分所得が増加しても、そば・うどんへの支出の増加は多くを望めず、消費者の好みの変化などから、成熟状態を迎えているといえよう。 |
ウ |
最多支出は60〜69歳 |
|
同調査で、平成17年について世帯主の年齢階級別
にそば・うどんへの支出をみると、1位は60〜69歳6,562円、2位
は50〜59歳で5,517円、3位は70歳以上5,324円である60〜69歳は全世帯平均に比べ1,100円多い。半面
、支出が少ないのは29歳以下の世帯で3,488円であり、全世帯平均に比べ1,900円も少ない。の5,483円の約半分強と少ない。これらの状況からみて、外食そば・うどん店の客層は、50歳代以上の中高年世帯が主体であり、若年世帯では他の主食的外食への嗜好を強めていることがうかがわれる。 |
エ |
都市別では断トツの高松市 |
|
同調査で都道府県庁所在地等の49都市別に平成17年のそば・うどんへの支出状況をみると、1位
の高松市は13,842円で断トツ、2位の宇都宮市9386円を大きく引き離している。3位
は金沢市で8,925円である。最多の高松市は全国平均に比べ2.6倍、金額にして3,000円も多く、まさに「讃岐うどん」王国である。
支出が少ないのは、那覇市1,116円、和歌山市2,962円、長崎市3,082円である。最少支出の那覇市は全世帯平均に比べ4,300円も少ない。総じて、そば・うどんの支出は都市別
に大きな格差がある。 |
(1)
|
既存店に食い込む新業態店 |
|
そば・うどんの経営形態は、顧客ニーズの変化に伴って多様化している。一般
にそば・うどん店は、伝統的な一般専業店の経営形態が圧倒的な数を占めているが、近年になってからは、民芸調や山間部に残されていた昔の旧屋を移築したりして個性的な店造りに凝った店や、讃岐うどん、きしめん、うどんすきなど地方特有の味わいを売りものにした専門店が出現している。特に、ここ2〜3年は全国的に讃岐うどんブームに沸いており、地元の味は地元で味わうのが最高とばかりに、首都圏から香川県まで讃岐うどんツアーが仕立てられるほどの過熱現象が起きている。
サラリーマンの乗降客の多い首都圏の駅周辺、駅構内などでは、早朝から営業している朝食、昼食客対象の低価格の立ち食い店そば店が多く分布している。一方では、ロードサイドに立地する駐車場完備の郊外店は、車で来店するファミリー客のほか、グループ客、観光客などの流動客に焦点を合わせ、メニューも天ぷらなどを組み合わせたセットメニュー中心に価格も手ごろに設定されている。これらには、在来店に比べ近代的な経営を追及したチェーン店などの新業態店が多いが、大型そば・うどん店として定着してきている。 |
(2)
|
多様化する経営形態 |
|
そば・うどん店の各経営形態別の特徴は、次のとおりである。 |
ア |
専門店 |
|
永年にわたって築いた「味」と落ち着いた店舗イメージを売り物としている。メニューは、本来のそばかうどんのいずれかを専門とし、少種類の天ぷらを天種として扱うなど数は少ない。良質の材料を用いているので、一般
店に比べ高単価となっている。既に地元の「老舗」として評判が定着している店が多い。
しかし、このような店舗は、かつての中心商店街の中にあるものが多く、車社会化に伴う立地条件の変化に直面
している。このため、広い駐車場を備えた郊外のショッピングセンターや集客力の高いデパート内の食堂街や駅ビルなどに、最近のグルメ志向、本物志向の追い風を利用し、「老舗」ののれんを売りものにして新たに出店するなど多店舗展開を進めているものもある。これらの店では、伝統的な純和風や民芸調など日本の伝統をイメージさせるものが多いが、最近では通
行客が気軽に入れるようガラス窓を多く設置したり、なかには若者や女性層の獲得を目的として、モノトーン調や洋風の店造りをしているところもある。 |
イ |
兼業店 |
|
いわゆる大衆めん類店であり、現在、そば・うどん店のなかで最も多いのがこの業態である。メニューは、そば・うどんに加え、伝統的に「つき物」としてかつ丼やたまご丼など丼物を扱かっている店舗が中心だが、最近では、そばかうどんにおにぎり、混ぜごはん(関西では「かやく」という)、いなり寿司、カレーライスなどごはん物をワンセットにした「そば定食」「うどん定食」などのセットメニューを扱う店舗が増えている。
地域密着型の店舗では、かつて、店舗周辺地域の固定客を中心に出前で顧客をつかんでいたが、人手不足から来店客を待つ経営形態に移行してきていた。しかし、最近は競争激化により、一部の店では他店との差別
化の手段として、再び出前が見直されている傾向がある。
また、既存型の大衆めん類店は、かつての好立地といわれた駅前商店街や中心商店街に位
置する店が多く、繁華街自体が駐車場不足のため人通りが少なくなり、地域環境の変化に業績が大きな影響を受けている小規模店が少なくない。 |
ウ |
立ち食い店 |
|
従来、立ち食い店では「早く、安く」をモットーに廉価サービスに徹してきたが、競争激化に伴い「価格」よりは「味」を求める顧客が増える傾向が強まっており、低価格が必ずしも競争条件でなくなっている。これに対応して茹でめんを避け「自家製めん」や「店内での釜上げ」、また、おにぎりも新潟県の農家直送米で作るなど、味の質的向上に工夫する店が多くなっている。立ち食い店の多くはチェーン店であり、清潔な店舗維持の徹底、製法の統一、仕入れのシステム化に努めるなど、ファーストフード店として、機能的な経営に取り組む店が多くなっている。 |
エ |
そば、うどんをメニューに加えた和食ファミリーレストラン |
|
和食ファミリーレストランとして、幅広いメニュー構成にするため、そばやうどんも提供している店舗が多い。フランチャイズ店を中心に、最近、増加している業態であって、最新厨房設備の導入、セントラルキッチンによる味付けの統一など、従来店の職人的な経営とは異なる近代的な経営を行っている。
これらの店舗は、通常ロードサイドに立地しているため、駐車場スペースや店舗面
積が広いところが多い。ファミリー層が客層の中心であるため、店内イメージを明るい色で統一したり、和食とそば・うどんなどのセットメニューを多数取り入れ、しかも手ごろな価格で提供するなどの工夫が多くみられる。洋食系のファミリーレストランと競合しているが、洋食に飽きた客層の吸収に成功している店も少なくない。 |
そば・うどん店に対するニーズを、消費者モニター調査により見てみよう。(「平成16年度消費者モニター等事業調査報告書」東京都生活衛生営業指導センター) |
(1)
|
そば・うどん店に欲しいメニュー |
|
1位 |
「混ぜご飯等がセットされている定食」43.6% |
|
2位 |
「サラダ風のそば・うどん」30.6% |
|
3位 |
「海の幸をたくさんつけたそば・うどん」22.8% |
|
4位 |
「焼きうどん等の炒め物」22.2% |
●各項目で要望が多い年齢層を見てみると、次のようになる。
|
|
・「混ぜご飯等がセットされている定食」は30〜40代が圧倒的に多い |
|
・「サラダ風のそば・うどん」は40代以上の要望が多い |
|
・「海の幸をたくさんつけたそば・うどん」は50代60代の要望が多い |
|
・「焼きうどん等の炒め物」は20代以下の要望が多い |
(2)
|
そば・うどん店を選ぶ情報源 |
|
1位 |
「友人・同僚からの口コミ」64.0% |
|
2位 |
「家族の話」27.9% |
|
3位 |
「週刊誌・料理雑誌の記事を見て」19.7% |
|
4位 |
「出前の案内・チラシを見て」17.1% |
|
5位 |
「テレビの料理番組を見て」13.0% |
●各項目で要望が多い年齢層は、見てみよう。
|
|
・「友人・同僚からの口コミ」は40代から60代までが多い。 |
|
・「家族の話」は70歳以上が多い。 |
|
・「週刊誌・料理雑誌の記事を見て」は30代50代が多い。 |
|
・「出前の案内・チラシを見て」は70歳以上が多い。 |
|
・「テレビの料理番組を見て」は20代以下が多い。 |
(3)
|
そば・うどんの食事場所 |
|
1位 |
「そば・うどん店」81.0% |
|
2位 |
「材料を買ってきて料理する」46.3% |
|
3位 |
「立ち食い店」25.0% |
|
4位 |
「スーパーを利用して」23.0% |
|
5位 |
「そば・うどん店の出前を利用して」22.2% |
|
6位 |
「コンビニを利用して」19.9% |
●各項目の要望が多い年齢層は、次の通リである。
|
|
・「そば・うどん店」は40代以上が多い。 |
|
・「材料を買ってきて料理する」は30代から50代が多い。 |
|
・「立ち食い店」は40代が多い。 |
|
・「スーパーを利用して」は20代以下が多い。 |
|
・「そば・うどん店の出前を利用して」は60代以上が多い。 |
|
・「コンビニを利用して」は20代以下が突出している。 |
(1)
|
経営上の問題点 |
|
平成14年度「生活衛生関係営業経営実態調査」(そば・うどん店)では、経営上の問題点(複数回答)の1位
は「客数の減少」77.3%、次いで「客単価の減少」38.1%、「立地条件の悪化」の順となっている。これを平成16年1〜3月期以降について国民生活金融公庫「生活関連企業の景気動向調査」でみると、1位
は「顧客数の減少」であるが、平成16年1〜3月期には調査対象15業種の中で8位
だったものが、4〜6月期には5位に上昇しており、顧客数の減少に悩んでいる店が増加している傾向がうかがわれる。なお、2位
は「仕入れ価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」で15業種の中で7位
である。3位は「客単価の低下」は、15業種の中11位である。
顧客数の減少」が1位にあることは、従来そば・うどんが外食の中で、副主食的な位
置を占めていたものが、同業者間の競争よりも他飲食業との競争が一段と激しくなっていることを物語っている。もはや、旧態依然の経営手法や、既存の商圏にどっぷりと漬かり、何ら工夫を加えない横並び式の意識による経営では、顧客の確保が困難になっている。顧客数の減少は、景気が上昇すれば再度来店客が戻るという循環的な要因でなく、構造的な変化に直面
していることの警鐘であるといえよう。 |
(2) |
経営上の対応策 |
|
問題店の「顧客数の減少」「客単価の減少」は、あくまでも顧客側の要因である。これに、対応するのには消費者のそば・うどん店の利用状況や、消費者のそば・うどん店に対する意識について知ることが肝要である。そこで、東京都生活衛生営業センターが行った「平成16年度消費者モニター事業調査報告書」により、その実態を見てみよう。 |
|
(1)
|
そば・うどん店の利用頻度が最も多いのは「月1回程度」 |
|
|
構成比の多い順に見ると「月1回程度」18.3%、「2〜3カ月に1回程度」17.1%、「月2〜3回程度」15.7%が上位
3位をしめている。「週1回程度」12.9%、「週2回以上」9.1%である。これは、そば・うどん好きが減少したのではなく、余りにも外食店舗が増え、選択肢が多種多様に変化したことの影響を大きく受けているといえる。 |
|
(2)
|
そば・うどん店の利用目的は"軽食・利便性・迅速" |
|
|
複数回答で見ると「軽い食事にしたい時」44.5%、「あっさりした食事にしたい時」35.8%、「急いで食事をしたい時」30.5%が上位
3位を占める。このように、消費者のそば・うどん店で食事をする目的は、どちらかというと、"軽食・利便性・迅速"である。さらに「ヘルシーな食事をしたい時」「1人で食べる時」はそれぞれ17%で、上位
3位に比べ構成比は少ない。顧客数の満足度を高めるのには、軽食・利便性・迅速"を、いかに高めるかにかかっている。 |
|
(3)
|
顧客が望むりそうてきな名そば・うどん店は |
|
|
そば・うどん店を利用する際に重視する点を、6つの分野に分けてみると。次のようになる。 |
|
・味・量 |
−「めんのコシ」67.3%、「つゆのだし」58.8% |
|
・魅力 |
−「めんが手打ち」43.0%、「出しに化学調味料を使わない」40.0% |
|
・メニュー |
−「季節感を出している」39.6%、「シンプルなメニュー構成」36.4% |
|
・値段 |
−「満足できれば値段にこだわらない」63.1% |
|
・雰囲気 |
−「落ち着くなど雰囲気の良い店」57.6%、「衛生的で清潔な店」39.9% |
|
・サービス
立地等
|
−「対応が良い」67.1%、「待たない」「そば湯・そば茶のサービス」各31.3% |
|
|
以上から消費者が望む最大公約数的なそば・うどん店を描いてみると次のようになる。
「手打ちでコシが強いめんを使い、また季節ごとのメニューが楽しめる。衛生的な店舗で接遇など対応が良く、気分のよい雰囲気の中で、落ち着いて食べられ、満足度を十分に高めてくれるなら値段にはこだわらい」というモデル店舗が浮き上がる。 |
(4)
|
取り残される旧態依然の店舗、求められる消費者の好みの変化への対応 |
|
そば・うどん店は伝統的な商売だけに業界の旧習にどっぷりと漬かり、経営面
で新鮮味を出す工夫をしている店は少なくない。一方、現在、そば・うどん店で人気を集めているのは、個性的な店造り、消費者の思考の変化に合わせたメニュー開発を行っている店が多い。
漫然と惰性で営業している限り、多様化する消費者の嗜好に対応しきれず、また、他業界からの新規参入や消費者のそば・うどんの外食への支出の伸び悩み、競争への対応策に遅れをとらざるをえない。
今後、生き残るためには、消費者の嗜好がいかに変化しているか、車社会における顧客の吸収をどうするのか、消費者のニーズの変化に関心をもち、常に怠りなくメニューなどに工夫を重ねることが必要である。先に掲げた平成14年度「生活衛生関係営業経営実態調査」(そば・うどん店)の今後の経営方針では1位
が「新メニューの開発」、2位が「顧客サービスの改善」であり、目先の戦術が優先されており、中長期的な経営戦略に基づく「施設・設備の改善」は3位
にとどまっている。 |
(5)
|
具体的な経営上の対応策 |
ア |
店独自のお勧めメニューの開発 |
|
オリジナルメニューの提供は、常連客の定着化、口コミによる新規顧客の獲得などに大きな効果
を発揮する。店を選ぶときの基準は、メニューについては「セットメニューが多い」「季節感を出している」「女性向けのメニュー」などであり、なかでも、決め手はセットメニューと季節感である。
顧客把握のためには従来の「もり・ざる」「たぬき・きつね」「丼物」などの単品だけを列挙したメニュー表では、魅力に乏しい。日替りの「当日のおすすめメニュー」を店頭に張り出すなど、店に入りたくなる雰囲気作りが大事である。メニュー表が色あせたままテーブルの上に置いてある店が少なくないが、清潔感に欠けるので、新しいメニュー表に差し替えるなどの配慮も必要である。
消費者の好みの変化が激しくなっているだけに、いかにお客のニーズを汲み取るのか、そのニーズに合わせたセットメニューの考案が重要である。メニューの季節ごとの変更、オリジナルメニューの開発、健康志向に対応したヘルシーメニュー、塩分控え目メニューなど、伝統的なメニューのほかに工夫されたメニューの投入が欠かせなくなっている。専門店であっても、専門店ならではのメニューの変化をもたせることが大事である。
また、総人口に占める65歳以上の人口が、2005年の国勢調査では21%になり、今後ますます高齢者が増加することが確実に予想され、高齢者に好まれる新メニューの開発が差し迫った課題となる。 |
イ |
飲食を楽しむには店内の雰囲気も選択の一つ |
|
外食時にそば・うどん店を利用する理由は、「軽い食事にしたい時」が最も多いといえる。だからといって、店の雰囲気を軽視しているわけではなく、飲食を楽しみたいというニーズがある。雰囲気に関しては「落ち着いて食事ができ、味を楽しめるなど雰囲気のよい店」が好まれる。従来型の店では、小型の椅子の設置で膝を突き付けるほどの詰め込み主義が多いが、いかにゆったりとした空間を創出するか、落ち着いた雰囲気をいかに演出するかなどのほか、ファミリー向けの広いスペースをいかに作り出すかの対応策が要求されている。 |
ウ |
セールスポイントは明確に。家族的な接客方法もその一つ |
|
家族的な接客方法でくつろぎ感を出すことが常連客をつなぎとめる手段となる。要は顧客にとって自分の店のどのような点がセールスポイントなのか配慮すべきである。店の雰囲気次第が、客単価を高めるポイントとなることも忘れてはならない。店舗イメージの改善による他店との差別
化が、客へのアピールにつながり、客層の拡大に結びつくのである。 |
エ |
受動喫煙防止措置への対応 |
|
最近では禁煙席がないと、帰ってしまう顧客も少なくない。受動禁煙(他人の煙草の煙を吸わされること)の副流煙が喫煙者の主流煙により、さまざま病気を発症させる一つの要因になっており、非喫煙者を副流煙から守るための受動喫煙防止措置を講じる必要がある。
平成15年5月1日に施行された「健康増進法」では、集客施設などの管理者は受動禁煙(他人のたばこの煙を吸わされること)防止の必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めた。もちろん、そば・うどん店はこの法律の対象になるので@施設内を全面
禁煙とする、A施設内の喫煙場所と非喫煙場所を分割し、喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れないように分割(分煙)することに努めなければならない。注意しなければならないのは、分煙が不完全な場合は違法となることである。 |
オ |
「笑顔の対応」が再訪客を呼び込む |
|
パートの女性従業員のぶっきらぼうな応対、顧客がいるのに私語を交わしながら顧客に対応するなど、そば・うどん店の従業員の接客マナーに不満を持つ人は少なくない。女子従業員には、笑顔の対応が不可欠である。ファミリーレストランや外食のフランチャイズ店が、マニュアルにしたがって接客マナー水準が向上しているために、それらと比較されやすくなっている点にも注意すべきである。
店舗イメージは、ハード(店舗の外観や内装等)とソフト(接客マナー)の相乗効果
によって構成される。どちらかが欠落してもリピート客の確保はおぼつかない。いやな経験を一度すれば、その客は2度と店の入り口をくぐらない。マニュアルづくりやミーティングにより従業員教育に取り組むとともに、絶えず顧客の立場に立って、接客マナーの向上に努めることが必要である。 |
・受動喫煙防止措置とは何か |
健康増進法が平成15年5月1日に施行され、それに伴い集客施設などの管理者は受動喫煙(他人のたばこの煙を吸和させられること)の防止が義務付けられている。健康増進法第25条の対象となる施設は「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他多数の者が利用する施設を管理するものは、これらを利用する者について、受動禁煙を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めている。この法律の施行により、ほとんどの生活衛生関係営業者は、受動喫煙防止措置を講ずる必要性が生じている。 |
・受動喫煙とは何か |
健康増進法によると、受動喫煙とは「室内またはこれに順ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義している。他人のたばこの煙は「副流煙」といわれ、喫煙者が吸う「主流煙」に比べ、有害物質が何倍もの濃度で含まれていることが報告されており、非喫煙者が副流煙を吸わされることは、さまざまな病気を発症させる一つの要因となっている。特に発ガン物質ジメチルニトロソアミンが副流煙には多量
に含まれている。そこで、非喫煙者を副流煙から守るため受動喫煙防止措置を講ずる必要があるわけである。 |
受動喫煙防止措置の具体的方法 |
受動喫煙防止措置には、大別して@施設内を全面
禁煙にする方法、A施設内を分煙する方法とがある。 |
@
|
全面禁煙 |
|
受動喫煙防止対策の上では、最も望ましい方法である。灰皿の処理コスト、壁紙・エアコンのフィルターの汚れの清掃など費用が不要でコスト削減になる。また、宴会場の畳や床、テーブルクロスなどの焼け焦げの防止につながる。特に、妊婦や幼児、子供連れの顧客に安心感を与え、安心して飲食が出来るなどのメリットがある。 |
A
|
完全な分煙 |
|
禁煙エリアにたばこの煙が流れないように、喫煙席(別の部屋)を設置する。特に禁煙エリアや非喫煙者の動線上、例えばトイレに行く通
路、バイキングやフリードリンクコーナー周辺やそこへ行く通路、レジ周辺、禁煙エリアとレジや出入り口との間の通
路などに、たばこの煙が漏れたり、流れたりしないように配慮する必要がある。 |
・不完全な分煙は違法 |
分煙が次のような場合は違法となる。 |
@
|
禁煙エリアが指定されていても、禁煙エリアにたばこの煙が流れてくる場合(喫煙席周囲に間仕切りがないなどによる場合) |
A
|
非喫煙者の動線上にたばこの煙が流れてくる場合 |
特に注意しなければならないのは空気清浄機や分煙機が設置されていれば、受動喫煙防止対策が実施との誤解である。これらが設置されていても、たばこの煙の中の有害物質は、大半が素通
りしてしまうからである |
・北海道庁の「空気もおいしいお店」の推進事業 |
喫煙率が男女とも全国平均を上回る北海道では、平成14年度から飲食店に対する受動喫煙防止推進事業として「空気もおいしいお店」の推進事業を始めている。対象は政令都市である札幌市の俗北海道内にある飲食店が対象であり、認証店は平成18年6月末現在で421店に増えている。
飲食店に対する同様の認証制度の取り組みは、全国の地方自治体でも行われ出しており、受動喫煙防止策を飲食店の経営者のみに任せるのではなく、行政の仕組みとして整備することで、小規模飲食店への浸透を促進することを狙いとしている。
資料:国民生活金融公庫「生活衛生だより」No.135 2004年10月 |
資料
- 総務省「事業所・企業統計調査」
- 総務省「家計調査年報」
- 金融財政事情研究会「業種別貸出審査事典」
- 中小企業リサ−チセンタ−「日本の飲食業」
- 国民生活金融公庫「生活関連企業の景気動向調査」
- 国民生活金融公庫「経営の工夫事例集」飲食店営業(そば・うどん、すし店)平成14年3月
- 東京都生活衛生営業指導センター「平成16年度消費者モニター等事業調査報告書」
- 「生活衛生関係営業ハンドブック2005」中央法規
|