九つのチェックポイント


 独立開業を決意するや否や、開業に向けてすぐに行動を起こす人がいます。
 でもちょっと待ってください。あなたの選択肢は開業しかないのでしょうか。そもそも本当に開業できるのでしょうか。
 まずは冷静に考えましょう。具体的な開業準備はそれからでも遅くはありません。
 具体的な準備に進む前に、次の九つのチェックポイントについて、YESかNOかを考えてください。


▼ 1.開業動機は明確ですか
 
▼ 2.開業する事業について経験や知識はありますか
 
▼ 3.事業を続けていく自信はありますか

▼ 4.家族の理解はありますか
 
▼ 5.従業員は確保できますか  

▼ 6.セールスポイントはありますか

▼ 7.自己資金は準備していますか 

▼ 8.保証人や担保の準備はありますか 

▼ 9.事業計画書を書いてみましたか

 

開業動機は明確ですか

 
 あなたはなぜ開業しようと考えたのでしょうか。
 「今勤めている会社がいやだから」、「給料が安いから」、「自分の能力をもっと発揮できる仕事がしたいから」、「会社勤めではできないことをやりたいから」、「経験や資格を生かしたいから」・・・。さまざまな動機が考えられます。  開業すれば、ときには苦境に陥ることもあります。そんなとき、頑張ることができるかどうかは開業動機にかかっています。事業経営に対するたんなるあこがれや開業以外に選択肢がなかったから、儲かりそうだからといった生半可な動機では、つらくなればすぐにあきらめてしまいがちです。なぜ開業するのか、開業動機をもう一度よく考えてみましょう。
 できるならば、志の高い動機が望ましいでしょう。「消費者やユーザーの不便、悩みを解消したい」、「良質の製品・サービスを低価格で提供したい」といった社会的な動機です。志が高ければ第三者の共感を得られます。あなたが苦境に陥ったときに誰かが支援の手をさしのべてくれるかどうかは、こうした志に大きく左右されます。


開業する事業について経験や知識はありますか

 
  経験や知識なしで開業してうまくいくような商売はありません。そもそも、ビジネスチャンスは、自分の得意分野のなかから見つかることが多いのです。とくに生活衛生業種の場合、理容業、美容業のように資格が必要な場合や、旅館業、クリーニング業などのように独自のノウハウ、技術、技能が必要な場合が多く、その蓄積の多寡が開業後の業績にも大きく影響してきます。さらに、勤務時代に培った人脈、信用等が受注先の確保に結びつくといった側面 もあります。  開業しようとする事業に経験や知識がないのであれば、開業するのは経験や知識を積んでからでも遅くはありません。開業してから勉強する時間はないのですから。  もちろん、経験や知識、ノウハウが乏しくても、フランチャイズチェーンに加盟して開業するという手もあります。でもその場合は、加盟金やロイヤルティーを支払って、知識やノウハウをフランチャイズチェーン本部から買っているということなのです。

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事業を続けていく自信はありますか

 
 開業後3年間は休みなしを覚悟しなければなりません。営業や仕入れ、接客、経理など、何もかも自分一人でやらなくてはなりません。そして、給料はもらうものから払うものになります。それでも事業を続けていけるのかどうか。その自信の裏付けとなるのは、「@ 開業動機は明確ですか」で述べたように、明確な開業動機なのです。


家族の理解はありますか

 
 今までの勤務生活をやめて、新たに事業を始めようとするのですから、家族にとっても一大事です。開業について家族と相談すれば、少なからず反対があるかもしれません。とくにそれまでの生活が安定したものであればあるほど、反対も強くなるでしょう。  だからといって、家族の意見に耳を貸さないのは禁物です。開業後の困難に一緒に耐えてくれるのは家族であり、もっとも信頼できるパートナーとなるのも家族だからです。  また、家族の協力は経営の面でも大きな意味があります。帳簿付けや電話番、接客などと直接事業を手伝ってもらえれば、人件費にも余裕が生じます。あるいは、別 収入で家計を支えるなど、事業を側面からサポートしてもらうことも考えられます。

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従業員は確保できますか

 
 事業には経験や知識、ノウハウなどさまざまな能力が必要になります。こうした能力すべてを経営者が備えていれば問題はありません。しかし、そうでなければ不足する能力を補う必要があります。  従業員として望ましいのは、あなたに不足している能力を持ち、あなたと気が合う人です。


セールスポイントはありますか

 
 新規開業企業は何らかの特徴を打ち出し、同業者との差別化を図らなければ、生き残れません。先発企業は、ある程度市場を確保し、社会的な信用も得ています。経営体力も新規開業企業よりも一回りも二回りも上回っています。そのような企業と競争するのですから、先発企業とは異なるセールスポイントを打ち出す必要があります。  では、あなたのセールスポイントは何ですか。

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自己資金は準備していますか

 
 開業費用のすべてを借入金、とりわけ金融機関からの借り入れに依存するのは危険です。借入金は毎月の返済金が定められています。借入金額が高額であればあるほど、当然返済金額も大きくなります。返済金額が大きくなると、資金繰りに弾力性が乏しくなります。売り上げが計画を少しでも下回ると、返済に支障をきたすおそれが高まります。  借り入れはリスクを大きくします。開業費用はできるだけ自己資金で賄うべきです。


保証人や担保の準備はありますか

 
 「F 自己資金は準備していますか」では、開業費用はできるだけ自己資金で賄うのが望ましいと述べました。とはいっても、実際には自己資金だけではどうしても不足するケースがほとんどです。したがって、金融機関からの借り入れを検討しなければなりません。
 ただ多くの場合、金融機関は担保や保証人の提供を求めてきます。金融機関から借り入れる予定ならば、担保や保証人をどうするのか、心づもりをしておく必要があります。
 なお、日本政策金融公庫には一定の要件を満たせば550万円までを無担保・無保証で利用できる融資制度が設けられています。


事業計画書を書いてみましたか

 
 事業計画は頭のなかだけで思い描くべきではありません。事業計画書を書くことにはさまざまなメリットがあります。簡単な様式でかまいませんから、事業計画書を書いてみましょう。

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1.具体的な準備に入る前に2.事業内容をどう決めるか3.事業計画書をつくる4.事業形態の選択肢5.資金計画6.開業に伴う届出